フルメタルラングを展開し、アクセルフォームへと姿を変えたファイズ。
雅とファイズ。二人はしばらく睨み合った末──
[Start up]
「!」
ファイズアクセルのシステム音声を皮切りに、戦いの火蓋が切って落とされた。
「ハァッ!!」
両者はほぼ同時に動き出し、音速に近いスピードで無尾とファイズショットがぶつかり合う。
狐火の青の軌跡とフォトンブラッドの赤の軌跡がとめどなく交差し、あまりの速さに第三者からは二人の姿を捉える事はできない。
「……っ! プロキシさん、解読は!?」
「もうすぐ終わるよ────よし! 解読完了!」
戦いの最中、プロキシはデータベースの解読を完了させる。
「パールマンはこの近くにいるみたい! あとはセキュリティ権限を取得して、防衛機構を停止させないと──」
そしてプロキシはパネルを操作し、数秒したのちに権限を取得する。
その瞬間、近くで大きな爆発音が鳴り響いた。
「!?」
音を聞いて、雅とファイズは動きを止める。その時ファイズは制限時間を迎え、アクセルフォームから通常形態へ戻る。
ファイズが爆発音に気を取られている隙を、雅は見逃さなかった。
「────好機!」
「っ!?」
再び目にも止まらぬ速さで動き出し、ファイズの元へ距離を詰める雅。
そして彼女はファイズのベルトを掴み……そのまま引っぺがした。
「……やはり、幻ではないか」
ファイズドライバーを手に、金属の感触を感じながら雅はそう呟く。
「…………っ」
ベルトを奪われたドッペルゲンガーのタクミはそのままエーテルの渦とともに消えていった。
「雅さん!」
「プロキシ。先程から聞こえるこの音は何だ」
「権限のリクエストで爆弾が起動したみたい! 早く逃げないと、この部屋吹っ飛んじゃう!」
「そうか……ならば急ごう」
プロキシと六課はパールマンがいる場所へと急ぐ。向かう道中、雅はプロキシにファイズのベルトを投げ渡す。
「プロキシ。これを受け取れ」
「え? これって……ファイズのベルト!?」
「先程奪い取った。ドッペルゲンガーが作り出した幻ではない。本物のベルトだ」
「……なんでファイズのベルトをドッペルゲンガーが──」
「助けてくれぇーーーーーっ!!」
プロキシの声を遮るように、中年男性の悲鳴が前方から響き渡った。
「今の声……!」
「パールマンはすぐそこですね……急ぎましょう」
爆発によるタイムリミットが迫る中、プロキシ達はパールマンの元へ向かっていった。
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「見えるか? あれがバレエツインズだ」
バレエツインズ前の広場にて。
ほとんど人が立ち入らなくなったこの場所で、乾は遠くに見えるホロウに呑み込まれたビルを指さす。
「あそこが傭兵どもの拠点だ。今からそこに乗り込む。それでだ──」
乾は一つのアタッシュケースを取り出し、ベンチに置いた。
開くと中にはカイザギア一式が入っている。
「このベルト、ファイズのモノとは違って適合出来なけりゃ灰になって死ぬ」
「…………っ」
「ただファイズに変身できたお前なら、理論上はカイザにも変身しても死なない。だが念には念だ、変身する前にコイツを飲んでおけ」
そう言って乾は一本の小さな茶色の瓶を渡してきた。ラベルには『変身一発』と書かれている。
「……これ、栄養ドリンクですか?」
「違う。それは薬だ。飲めば一回だけ、ベルトに適合できる」
「乾さんが作ったんですか?」
「いや、知り合いに頼んで作ってもらったんだ。つっても、俺がデルタに変身する時は必要無かったけどな」
「そうなんですか……」
タクミはアタッシュケースからカイザのベルトを取り出し、じっと見る。
「……どうした? 何か気になる事でもあんのか? 」
「……この『スマートブレイン』っていうのはなんですか?」
「!」
タクミはカイザフォンに書いてある『スマートブレイン』のロゴを指さし、乾にそう尋ねた。
「……それか。それは説明すると色々ややこしくなるから、事態が落ち着いたら改めて説明してやる」
「は、はい」
「それじゃあ、早く行くぞ。あのベルトが他のやつに渡るような事があっちゃならない」
乾はバイクに乗り、タクミも後ろに乗る。そして、バレエツインズに向けて出発した。
「あ、あの……乾さん」
「なんだ?」
「乾さんは……どうしてホロウレイダーをやってるんですか?」
「……この世界のどこかにある、全てのベルトを集める為だ」
「!」
「ファイズ、カイザ、デルタ……俺はこのベルトの事をよく知ってる。その力を悪用されたら、恐ろしい事になっちまうって事もな」
乾曰く、ファイズとデルタのベルトはホロウで拾ったものらしい。
もしかしたら、乾自身が知らない種類のベルトもまだあるかもしれない。
そう思った彼はそれらが悪辣な人間の手に渡るのを防ぐために、ホロウを中心にベルト探しをしているのだそうだ。
「……? ちょっと待ってください、それなら僕にベルトを渡したのはどうして……?」
記憶喪失のタクミは『ファイズのベルトは乾本人から渡された』のだと聞いた。
しかし、乾はベルトが他の人間の手に渡るのを恐れているようだった。
それならどうして、その時見ず知らずの少年にベルトを渡したのだろうか。
「……さあな。それについては、俺もよく分からない。だが……どんな理由であれ、お前にファイズのベルトを押し付ける様な形になっちまった」
「……」
「……俺自身がしっかりと管理しておくべきだったんだ。そうすれば、今回みたいにお前が危険な事に巻き込まれることは無かったはずなんだからな」
「…………乾さん」
「なんだ」
「記憶がないから確かな事は言えないんですけど……僕は、ファイズになれて良かったと思ってますよ」
「……どういう事だ?」
タクミの言葉に乾は戸惑う。
「今は思い出せないけど、僕には大切な人達がいる。ファイズの力がなきゃ、出来なかった事も沢山あったと思います」
「……」
「それに、押し付けたなんて言いますけど、押し付けられたって感じるぐらいならファイズのベルトなんて受け取ってないですよ。記憶を失う前の僕も、きっと望んでその力を手にしたはずです」
「……そうか」
二人はこれ以上は何も喋らなかった。バレエツインズのホロウに向かって、ただバイクを走らせるのみだった。