雅が治安局によって逮捕された後、六課達はブリンガーを振り切り、パールマンを探す為に再びホロウへと入った。
しかし現在H.D.Dシステムはダメージを受けており、柳たちのガイドは出来ない。
パールマンの捜索は六課に任せ、アキラ達はシステムの再点検へと勤しんでいた。
そしてアキラがシステムを修復している途中、通信機が鳴る。
『プロキシさん、聞こえますでしょうか』
「柳さん! パールマンは?」
『シグナルを辿り、無事パールマンを発見しました。彼は現在、白祇重工の元でブリンガーとヴィジョンの結託に関する証拠となる資料を集めさせています。もうじき結果が出るはずです』
「ありがとう柳さん。何から何まで……」
『気にしないでください。それで、プロキシさん──』
柳とアキラの会話を聞いていると、スマホから着信音が鳴る。
相手はニコ。リンは通話開始ボタンをタップし、電話に出る。
「もしもし?」
『もしもし、プロキシ? 今時間あるかしら!?』
「ど、どうしたのニコ?」
『こっちにいる捕虜から新しい情報を引き出したの! タクミの事なんだけど……!』
「え!? 嘘!?」
『その前に、タクミを襲った奴についてなんだけど……アイツの名前、サイガって言うらしいわ』
「サイガ……ソイツがどうかしたの?」
『捕虜によれば、サイガはタクミをバレエツインズに攫う途中で、とある第三者によって妨害されたらしいわ』
「第三者?」
『ええ。アンタはデルタっていうホロウレイダーは知ってるかしら?』
「……! デルタなら知ってるよ!」
タクミがデルタについて調べていたのを見て以来、リンの方でも調査を進めていた。
『それなら話が早いわ。そのデルタって奴がタクミをサイガから奪って連れていったらしいの』
「タクミは……攫われてなかったって事? デルタは今どこに!?」
『落ち着きなさいプロキシ。ソイツの行方は今調べてるとこよ。でも安心なさい! あたしの手にかかれば調べられない事なんてないんだから!』
「ありがとう、ニコ!」
『あたしとアンタの仲でしょ? 礼なんて良いわよ。ツケをチャラにしてくれるってんなら話は別だけど』
「聞こえてるよ?」
『こ、コホン! 新しい情報が入ったらまた連絡するわ! それじゃまた!』
そう言ってニコは電話を切った。
デルタはタクミを助ける為に連れ去ったのか、それとも別の目的の為に連れ去ったのか。
確かな事は分からない。しかし、デルタは主に人命救助をしているとの情報がある。
「リン? どうしたんだい?」
「あ、お兄ちゃん! さっきニコから電話があったんだけど──」
リンはニコからの情報を簡潔に伝えた。
「なるほど……確かに、これは吉報かもしれない。デルタについては僕も知っている。今タクミがデルタの元にいるなら、助かる可能性だって──」
「店長さん! 今大丈夫ですか!?」
「!」
ブリンガーに関する情報を集めていた朱鳶が、店の扉を開けて入って来た。
「朱鳶さん? どうしたの?」
「今、六課と連絡はできますか? 大至急、確認したい事があるんです!」
「朱鳶さん、落ち着いて。今から六課に連絡を繋ぐところだ。少し待っててくれ」
アキラはデバイスを操作し、六課と通話を繋げた後、こちらに起こっている出来事を伝えた。
「──そんなわけでデバイスの修復が出来るまでは、星見さんの行方は追えそうにない。それと、朱鳶さんが君達に確認して欲しいことがあるそうだ」
「……もしもし? こちらは朱鳶です! 聞こえていますか?」
『朱鳶治安官? どうされましたか?』
「パールマンについて、確認して頂きたいことがあります! 彼の耳の後ろの、生え際辺りに小さな傷がありませんか?」
『傷……?』
柳はパールマンのうなじを注意深く見る。すると朱鳶の言う通り、そこには小さな傷があった。
『確かに、2ミリ程の小さな傷が見えます。どうしてこんなものがあると……?』
「治安局では、特殊かつ重大な事件の容疑者を収監する場合、中で危険な事をしないように小型チップを埋め込むことがあるんです」
朱鳶曰く、重大事件の容疑者であるパールマンのうなじに埋め込まれているチップは、GPSタグが付いており、まだ有効となっているのだそうだ。
『──え? つまり、治安局はその気になれば、いつでもパールマンを捕まえられたって事になるじゃないですか……!』
「ブリンガー長官は、なんでわざわざパールマンを野放しにするような真似を……?」
『我々はてっきり、パールマンに真相を暴かれないよう彼を抹消する事が黒幕の目的だと思っていましたが……』
治安局がいつでもパールマンを見つける事が可能だったのなら、なぜブリンガーはわざわざ雅たちを襲うような真似をしたのか。
「ブリンガーが雅さんを連れ去ったのは……何か別の理由があったり?」
『……理由はどうあれ、雅は連れ去られてしまいました……! すぐに部長に連絡をしなければ!』
「柳さん、落ち着いて! まずは雅さんがどこにいるのかをはっきりさせないと!」
「雅を護送している車両は治安局のものですから、追跡のしようはあります。ただ、ブリンガー長官の方は──」
「それならアテはある」
「!」
ビデオ屋の用心棒をしていた青衣が助言を呈する。
「あやつなら、当時ヴィジョンの事件が終結を迎えた広場にいるはずであるぞ」
「先輩、どうして分かるんですか?」
「ニュースで報じられておったではないか。そこには今日、ブリンガーが演説を行う特設会場がある。予定通り執り行われるなら、あやつは今会場にいるはずだ」
『……! それなら二手に分かれて探しましょう! 雅は我々が探します、ガイドを──』
「待って、柳さん!」
『!』
「柳さん達は今、ブリンガーがいる会場の近くにいるんでしょ? 雅さんは私達に任せて、柳さん達はブリンガーを探して!」
『…………っ!』
「……雅は私と店長さんが追跡します。囚人護送車の位置は特定できますし、私も治安局の人間なので容易には疑われないかと」
『……』
「……月城さん。貴方の気持ちはよく分かります。でも大丈夫です、雅は……必ず連れて帰ります」
『……分かりました。それではお二人にお任せします。課長を頼みました!』
「うん! どんと任せてよ!」
リン達は必ず雅を連れて帰ると約束し、通話を切った。
そして駐車場にて。
「現在、護送車の具体的な位置について調査中です。情報が入り次第出発しましょう。お願いしますね、リンちゃん」
「…………」
「……リンちゃん?」
「……あっ、うん! よろしくね!」