ら、ランキング入りしている……!
「──あ、あんたたち、ドアを開けるならちゃんとニャーって声をかけて!ぶつかっちゃったぞ……」
「……」
「……タクミ、そんなに睨まない。──えっと、いらっしゃいませ。ここは六分街で一番のビデオ屋だよ」
「お客さん、どんなビデオをお求めですか?新しく『7710と彼の猫』が入荷しましたよ!」
「そんなことしてる場合じゃないぞ!分かってる……あんた達はパエトーン!プロキシのあんた達に、依頼がしたいんだ!」
三人は顔を見合わせる。
「あーえっと……プロキシってなんだ?どっかの新メニューか?」
「映画の事じゃない?そんなタイトルの映画、ウチにはなかった気がするけど」
「待って!警戒しなくていい!あたしは猫又!ニコに言われて、あんた達を探しに来た。悪い奴じゃないぞ!」
「ニコって?どのニコのこと?その人がここの会員なのかい?」
「邪兎屋のニコだって!何でも屋の邪兎屋の社長!ほら、あの子のボンプだ!これで信じてくれたか!?」
そう言って猫又と名乗る少女は邪兎屋のボンプ──アミリオンを見せた。
「……偽物というわけではないようだな。確かに、ニコが使っているあのボンプだ。本当にニコの友達かい?彼女は今、どこにいるんだい?」
「さっきのニュースで言ってたとこ──ヴィジョンの爆破エリアにいる!あのオッサンは全員を避難させたって言ってたけど、本当はそうじゃないんだ!」
どうやらまたしてもニコ達は厄介事に巻き込まれたようだ。
「……よりにもよってこんな時に、ヴィジョンの工事現場で一体何をしていたんだ?」
「探しものだ!えっと、依頼したのはあたし!それで赤牙組がケチをつけてきて、もみくちゃになって……とにかく人がぎゅうぎゅうで、魚の缶詰みたいだった!」
早口で捲し立てる猫又を、アキラが諌める。
「落ち着いて、ゆっくり話してくれ。ニコ達と魚の缶詰に、何か関係があるのか?」
「えっと……その……うまく説明できないぞ……そうだ!ニコのボンプ!」
猫又はアミリオンを指さす。
「あの中にここ数日の視覚データが保存されてるはずだ!それを見ればきっと分かる!」
「……それは難しいと思うな。所有者のニコにしか視覚データのエクスポートはできない。どうしても取り出すなら、マルセルグループに問い合わせないと──」
「ピ───────」
アキラは音がした方を向く。Fairyの声だ。
「……Fairy、何か思いついたのか?」
「何か言ったか?ふぁーりー?」
「いやいや、こっちの話。──Fairy、ボンプから内部データを強制的に取り出す事はできるかい?」
アキラは小声でFairyにそう伝える。
「確認。指示の内容ですが、『ボンプの視覚記録を出力』する事で間違いありませんか?」
「にゃ?今、誰か喋ったような……他にも誰かいるの?」
「最近インストールしたPCアシスタントの声だよ、気にしないで……それでFairy、データは取り出せそうかい?」
「ボンプ内部で直近数日間の視覚データを検索中。『自分がバカだった、もっと早くFairyを頼るべきだった』と仰ってください」
「……僕が馬鹿だったよ。もっと早くFairyをシャットダウンするべきだった……」
「兄ちゃん?」
───────────────────────
「──それじゃあFairy、後はよろしく」
「ンナナ……」
モニターの前にアミリオンを座らせる。
「ボンプと接続中……視覚データを取得します」
そう言った直後、アミリオンは動かなくなってしまった。
「取得完了──再生します」
視覚データの内容は──。
猫又はホロウ内で赤牙組に追い回されているニコに接近。そしてとある依頼を出した。
依頼の内容は、赤牙組のシルバーヘッドに奪われた家族の形見を取り戻して欲しい、とのこと。
赤牙組と一悶着あったニコはあまり乗り気では無かったが報酬の話を聞いて、即引き受ける事を決断。
猫又曰く、形見があるかもしれないという赤牙組のアジトは三箇所ともホロウ災害に巻き込まれているらしい。
猫又は赤牙組の拠点に関する情報を持っている。ニコはそれが現在調べている金庫の謎を解明する手がかりになるかもしれないと踏んだ。
次の日、早速一行は猫又の案内の下、ホロウを探索することにした。しかし、一箇所目、二箇所目を探しても、中々目的のものは見つからない。
ここで、ニコにとって予想外のことが起きた。
なんと、三箇所目の拠点は『デッドエンドホロウ』の中にあると言うのだ。
『デッドエンドホロウ』は、ヴィジョンが地下鉄改修プロジェクトの爆薬を運ぶルートの一部となっている。
問題はそのデッドエンドホロウにとある要警戒エーテリアスが生息していることだ。
そのエーテリアスの名は──『デッドエンドブッチャー』。
ヴィジョンは最初、デッドエンドブッチャーを殲滅し、爆破エリアへの安全なルートを確保するつもりだった。
しかしデッドエンドブッチャーは予想以上に強く、仕方なくホロウ経由で爆薬を運び込むことになったのだ。
当然、そのまま探索に行きましょうとはならなかったが、まあデッドエンドブッチャーを避けつつ物探しをすればいいだろう、という結論となり、依頼は続行されることになった。
───────────────────────
『なーにがデッドエンドホロウよ!クライアントがご所望なのよ!明日にでも乗り込んでやろうじゃないの!』
『ホント?やった〜!それじゃ、あたしの家族の形見は任せたにゃ〜』
「うぅ……猫を被ってる自分を見るのが、こんなに恥ずかしいなんて……!」
映像の一連のやりとりを見た猫又は、恥ずかしさで顔を赤らめていた。
「え?あの『にゃ』ってわざとだったの?」
「え!?いっ……いやいや、猫のシリオンは皆こんな感じだ……にゃあ〜」
「……まあ、状況は概ね把握したよ。君は昨日、ニコ達と赤牙組の拠点を探しに行ったんだね」
「そう!それからも色々あって……とにかくニコ達は今、爆破エリアにいる!」
「……マスター。ただいまニュースチャンネルにて、今回の依頼に関連しているとみられる情報が放送されています。お見逃しなく」
急いでテレビをつける。
『速報です!生中継でお送りいたします──間もなく、ヴィジョンの最後の輸送列車が出発し、デッドエンドホロウへと入ります!』
報道によれば、爆薬を輸送するのは無人列車で、到着して準備が整い次第、パールマンの指示により爆破解体が行われるとのこと。
テレビを見た猫又は青ざめる。
「視覚記録の続きを見てる時間はないぞ!何とかして爆発を阻止しないと、ニコが埋立地の灰になっちゃう!」
「……どうやって?みんなの前で列車を止めちゃったりしたら、その場で治安局に捕まるのがオチだよ」
「事態を通報するのが一番だけど、ニコ達がホロウレイダーをやっていることもバレる……」
「……いっそホロ──」
「ホロウの中で列車を止めるのはいかがでしょう」
Fairyがそう提案した。
「そっか!外から直接ホロウの中の様子は探知できないんだから、捕まる心配もないぞ!」
「うん……今からデッドエンドホロウに潜入して、列車が必ず通る道を阻むことができれば、確かに理論上は可能だ」
「Fairy、列車の位置をリアルタイムで把握出来る?」
「可能。目標車両までの安全なルートを計算しています」
「……よし、今回は緊急事態だ。デッドエンドホロウの中で列車を止める方法を探してみよう……タクミ、猫又、ホロウへ行く準備を」
「ああ」
「んにゃ!」
「──そういえばタクミ、さっき何か言いかけたか?」
「……なんも言ってねーよ」