十四分街付近にて。
夕方の道路を一台のパトカーが走っていく。中には一匹のボンプと一人の治安官が乗っている。
『──調べたところ、ヤヌス区で稼働中の護送車八台のうち一台が、班長が仰った特徴と一致しました。今、位置を共有します』
「ありがとうございます!」
どうやら目標の護送車は総局ではなく、ブリンガーのいる演説会場へと向かっているらしい。
それから少しの会話の後、朱鳶は部下との通信を切った。
「まずいですね……この時間帯の道路はもう、会場へ向かう車で混雑しているはずです……!」
「会場がデッドエンドホロウの近くなら、ショートカットしてホロウを突っ切れるはず! 急ごう!」
「ホロウの中を運転するんですか……? 危険ですよ!」
「大丈夫、方法はもう一つあるよ! 車よりもずっと早くて、安全な移動手段が!」
───────────────────────
一方その頃。
デルタとカイザは、バレエツインズのホロウの中を探索していた。
「……なんか、瓦礫が多いですね……ここ」
「ああ、おまけに煙くさい。誰か屋内で爆弾を使ったヤツがいたみたいだな。それに──」
デルタは辺りを見回す。バレエツインズには、見張りの兵士などが誰一人としていない。
屋内は薄暗く、しんと静まり返っていた。
「……辺りには人ひとりいない。俺達が入る前に、ここらで一悶着あったのかもな」
「白いヤツはホントにここにいるんですか?」
「アイツにくっつけた発信機が狂ってなけりゃ、ここにいるはずだ」
そうしてキャロットを頼りに進み、二人はバレエツインズのロビーへと辿り着いた。
「ホントに何も無いですね……」
「……確かに、エーテリアス一匹いないのは──」
デルタがそう言いかけたその時だった。辺りにくぐもった音質のクラシック音楽が流れ始める。
「……!」
「……? なんだろ、このおんが──」
「伏せろっ!!」
「ぶっ!?」
デルタはとっさにカイザの頭を押さえつける。カイザは受け身を取る事も出来ずに顔面を地面にぶつけてしまった。
しかしその直後、カイザ達の頭上を高速で何かが通り抜けていった。
頭をさすりながら起き上がったカイザはその『何か』を見て驚愕する。
「……!? なんですかアレ!?」
「バレエツインズの主だ。やっぱり出てきやがったな」
バレエツインズを彷徨う双子のエーテリアス、マリオネット・ツインズ。
寸分狂わぬ動きで、恐ろしくも美しい舞踊を披露する。
しかしカイザはツインズの見た目に違和感を抱く。
「……? なんかあの怪物、ボロボロじゃないですか? 傷だらけって言うか」
「前に誰かがボコボコにしたんだろ。どの道俺達にとっては好都合だ。いくぞ、タクミ!」
「はい!」
デルタは手首をスナップさせ、戦闘態勢に入る。
カイザはベルトの右側にあるカイザブレイガンを取り出し、ソケットにミッションメモリーを装填。
ブレードモードを起動し、刀身が現れたブレイガンを順手で持つ。
[Ready]
「……よ、よし!」
そうして二対二の死闘が幕を開けた。グレイベールはデルタに、ブラックベールはカイザに襲いかかる。
「フッ! タァッ!!」
デルタは武器は使わず、徒手空拳のみでグレイベールと戦っている。
素早い連撃も難なくかわし、攻撃を腕で弾き飛ばしながらパンチやキックで反撃をしていく。
「うぉぉおお……っ!?」
一方カイザはと言うと、カイザブレイガンを使って攻撃を防ぎ、一進一退の攻防を繰り広げていた。
勢いはあまりないが、それでも攻撃は受けずにいられている。
ギリギリ優勢、と言った感じだった。
さらにブラックベールとグレイベールは時折、双子ならではの連携も見せていく。
決して楽な戦いではなかったが……
乱闘の末、デルタはグレイベールを思い切り蹴り飛ばす。
[Burst Mode]
「ハァッ!!」
そしてカイザはブラックベールをブレイガンで連続射撃をかまして吹っ飛ばした。
今が好機と悟った二人は、必殺技の準備に入る。
「チェック」
[Exceed Charge]
「えっと……これを──こうか!」
[Exceed Charge]
デルタはデルタムーバーからポインティングマーカーを射出し、グレイベールを封じ込める。
カイザはコッキングレバーを引き、ブレイガンから黄色いエネルギー波を射出。ブラックベールの動きを封じ込める。
そして────
「「ハァァァァアッ!!」」
デルタの『ルシファーズハンマー』と、カイザの『カイザスラッシュ』の一撃がツインズへと襲いかかる。
グレイベールは『Δ』のマークを、ブラックベールは『Χ』のマークを浮かべ、ついに消滅した。
「……! 倒せた……!」
「よし……不安材料も無くなったことだ、後は奴からファイズのベルトを──」
その時。
ロビーの奥から、拍手の音が聞こえてくる。カイザとデルタはその方向を見る。
「……え?」
「お前は……!」
かつてタクミが郊外にて戦ったサイガが、暗がりの中からゆっくりと拍手をしながら現れた。