「乾さん……アイツがファイズのベルトを?」
「ああ」
カイザとデルタは突然現れたサイガに対し、最大限の警戒態勢をとる。
「……まさかアンタから会いに来てくれるとはな。俺達もちょうどアンタに会いたかったんだ──ファイズのベルト、返してもらおうか」
「…………」
デルタの言葉にサイガは何も返さなかった……が、眉間を抑える仕草をした後に、フライングアタッカーを起動しデルタへと襲いかかった。
「!」
「乾さん!」
そのままサイガとデルタの肉弾戦が繰り広げられていく。両者ともに高い戦闘スキルを持っているが故に、どちらが先に膝を着くかは分からない。
[Ready]
「ハアッ!!」
カイザはカイザショットを装備し、デルタに加勢する。二対一の攻防、さすがにサイガが不利かと思われたが──
[Ready]
サイガは戦いの最中に、ミッションメモリーをフライングアタッカーの操縦桿に装填。
背中のバックパックが取り外され、二本のトンファーエッジが姿を現した。
バックパックが外れ、身軽になった事によりサイガの動きが先程よりも早くなる。
「フッ! ハァッ!!」
「ぐっ……! タァッ! オラァッ!!」
二本のトンファーエッジで二人の攻撃を難なくいなし、倍返しと言わんばかりに青い刀身で斬りつけ反撃をしていく。
そして先程の拮抗ぶりはどこへやら、二人を圧倒していくサイガ。
「ハァッ!!」
「うわぁっ!!」
サイガはトンファーエッジを振りかざし、二人を吹き飛ばした。
息も絶え絶えに起き上がる二人。カイザの方は怪我をしているのもあり、再び体力の限界が近付こうとしていた。
「…………」
サイガは二人を一瞥した後、サイガフォンを開きENTERキーを押す。
[Exceed Charge]
トンファーエッジの青い刀身にフォトンブラッドがチャージされる。サイガはそれを構え、ゆっくりと二人の元へ歩いていく。
デルタはデルタフォンをベルトから取り外し、トリガーを引きながらマイクロフォンに向かって音声入力をする。
「……スリーエイトツーワン」
[Jet Sliger, Come closer]
「!」
デルタが音声入力をした瞬間、サイガの後ろにジェットスライガーが出現。
そのままサイガを後ろから吹っ飛ばし、デルタ達の元で停止した。
「乗れ、タクミ!」
「……っ、はい!」
二人はジェットスライガーに乗り、エンジンの轟音と共にバレエツインズのビルを飛び出して行った。
サイガは飛び去っていくジェットスライガーを忌々しく睨む。フライングアタッカーを再装備し、二人の後を追いかけて行った。
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「──おい」
「……あら? どうしたの?」
雅がいる護送車にて。先程まで全く喋らなかった雅がここに来て口を開く。
同乗していたブリンガーの結託者であるサラは、雅がこれからする質問を察したようだった。
「いつまで芝居を続けるつもりだ? なぜこの護送車はヤヌス区へ向かっている?」
「……やはり気づいていたようね。でも、良いのかしら? 随分と余裕そうだけど」
「お前達の目的が何であれ……私の脅威では無い。それに、お前達の近くに居た方がこちらとしても都合が良い」
雅は体の自由が効かない状態でも、汗ひとつかくことはない。
実際、雅ならばこの程度の拘束は造作もない。その気になれば、護送車を乗っ取ることさえ可能だろう。
サラは鞘に収まった妖刀・無尾を手に持ちながら呟く。
「脅威ではない……ね。まあ確かに、貴女の言う通り。この刀が例えナマクラでも……星見雅、貴女程の天才なら何の問題もなく扱えるでしょうね」
「……貴様、何が狙いだ」
「まだ気づいてないの? そうね……千面相って言えば、分かるかしら」
「!」
雅は目を見開く。かつて、対ホロウ六課は千面相の手により、VRシステムの仮想空間に閉じ込められた事がある。
「彼らはしくじったけど──貴女が同期したモデルデータは入手した」
「……! まさか──」
「そうよ。私達の狙いは、貴女……そしてこの妖刀なの……!」
サラは鞘の電子指紋認証に親指をかざす。
本来サラのような部外者には、鞘から刀を引き抜く事は出来ない。
しかし、先程言っていた雅のモデルデータを使用する事で、それを可能とした。
そして雅が止める間もなく──サラは鞘から刀を引き抜いた。
「……!! やめろ、無尾を放せ────!!」
「確かに、貴女にとっての脅威なんてものは無い……だったら、貴女自身が脅威になるなんてのはどうかしら?」
無尾の刀身から、膨大なエーテルエネルギーが溢れ出す。
妖刀に刻み込まれた血肉、無念、怨念、執念……燃え盛る狐火と共に、雅の精神は蝕まれていく。
「ぐっ…………!!」
『斬れ……斬り裂くのだ』
『斬れ。さすれば、ぬしの身は解放されよう』
『全てを斬れ────!!』
絶え間なくこだまする声。
「……私、は」