サイガが落ちていくのを見届けた後、サイドバッシャーに乗ったカイザは人目のつかない所に着地する。
するとカイザの元にデルタがやってきた。
「タクミ、大丈夫か?」
「僕は大丈夫ですよ。あ、でもアイツにファイズのベルトの場所聞かないと」
「今は大丈夫だ。ひとまずは撤退して、今後の作戦を練ってくぞ」
「そうですね」
[Vehicle Mode]
サイドバッシャーをビークルモードに変形させ、出発の準備をする。
そして変身を解除しようカイザフォンを開いたその瞬間。
『雅さん、雅さん! 目を覚まして!!』
『ダメです、リンちゃん! 今の彼女に近付いては!』
「…………」
どこからか声が聞こえてくる。
その声は、彼にとって
「タクミ? おい、どうしたんだ?」
「……乾さん。
「は? どこに──ちょ、おい! 待て!!」
乾の制止を振り切り、カイザはサイドバッシャーのエンジンをかけ、声がする方へと向かって行った。
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「ダメ……雅さん、完全に刀に呑まれちゃってる……!!」
演説会場に現れた雅。彼女の精神は暴走した無尾によって蝕まれてしまっていた。
会場は既に大混乱へと陥ってしまっている。朱鳶達は雅をデッドエンドホロウへと誘導し、なんとか市民への被害は防いだ。
しかし、人斬りと化した彼女を止められる者は居なかった。目に入ったエーテリアスを片っ端から斬っていくその姿は、まさしく修羅そのものだった。
「……っ、リンちゃん、貴方は逃げてください……私が、雅を止めます……!」
「! だ、ダメだよ朱鳶さん! 朱鳶さんだけ置いてけない!」
『斬…………わた……シ……はっ……!!』
雅も乗っ取られるまいと抗っているのか、自身の体を抑え込みながら動きを止める。
雅とて、罪の無い人間を傷付けることは絶対にしたくない。
しかしそんな彼女を嘲るかのように、無尾に纏う狐火の勢いは増していく。
『ぐ……が……ぁっ──!!』
「っ!!」
「朱鳶さん!!」
無尾を構え、朱鳶を睨んだ後──雅は彼女へと襲いかかった。
[Ready]
「────え?」
その時、朱鳶と雅の間に人影が割って入った。
そして彼は──カイザは、手に持ったカイザブレイガンの刀身で、雅の刀を受け止める。
「朱鳶さん!! プロキシ!! 早く逃げろ!!」
「……!? タクミ……!?」
カイザは後ろの二人へ叫ぶ。見慣れない仮面の奥から聞こえるその声は、二人にとって聞き覚えのあるものだった。
無尾の刀を防ぐカイザ。雅とカイザを中心に、狐火が激しく燃え盛っていく。
「…………!!」
「タクミくん!!」
持てる全ての力を発揮し、雅の刀を受け止める。無尾が放つ強大なエネルギー。
カイザは思わず膝をつく。
しかし、決して手の力を抜きはしない。
そして受け止め続けること十数秒。二人を包んでいた狐火が少しずつ小さくなっていく。
『…………』
刀に入っていた力も徐々に弱くなっていく。
「……っ私、は……お前、たち、の……!!」
「……!」
雅は自身の力で無尾の刀身を鞘に収めていく。
その瞬間、先程の光景が嘘かのように、刀から放出されていた狐火はなりを潜めた。
そして雅は糸が切れたかのように、その場はへたり込む。地面へ倒れようとしていた彼女をカイザは受け止めた。
「タクミくん! 雅!」
二人の元に朱鳶とプロキシが駆け付ける。
「雅さん! タクミ!! 怪我は!?」
「俺は大丈夫だ。えっと、この人は──」
「私は、大丈夫……だ」
「雅!」
雅は周りを見渡した後、カイザの方を見る。その後彼女は心底安心したような表情を浮かべた。
「……お前が、止めてくれたのだな。ありがとう……」
「……!」
「お前達がいなかったら……私は、大切な人を……この刀で傷付けてしまうところだった」
「…………」
刀を抱きながら、雅は弱々しくそう言う。カイザは何も答えず、雅の言葉にただ耳を傾けていた。
「タクミ! タクミは大丈夫なの!? さっきの事もそうだけど、攫ったヤツに何もされてないよね!? それに、その格好は……?」
「あー……それは、色々あったんだよ。まあ、見ての通り俺は無事だからさ。安心して欲しい」
「安心なんて出来ませんよ。タクミくんが攫われたって聞いた時、ずっと気が気で無かったんですから」
「……それについてはすいませ────ちょっと待って朱鳶さん今俺の事なんて呼びました?」
「え? 『タクミくん』って……」
「え……?」
カイザは朱鳶とプロキシを交互に見る。仮面越しではあるが、驚愕しているのがその様子から見て分かった。
「……えっと、タクミ。これには色々理由があって──」
『リン!!』
「お兄ちゃん? どうしたの?」
『緊急事態だ! ブリンガーが、会場の混乱の隙に乗じて逃げようとしている!!』
「!!」
まだ戦いは終わっていない。
新たなる危機が、迫り来ようとしていた。