「……さ、プロキシ達が来るまでの間、君の事を教えて貰っていいかな? タクミくん」
「あ、はい」
潮風が心地いい夜のポート・エルピスにて。
蒼角以外、ホロウ六課と初対面であるタクミは簡単な自己紹介をする事にした。
自身がファイズである事。
これまでヴィジョンに関連する様々な事件をパエトーンであるアキラとリンと共に解決してきた事。
そして……自身が行方不明になった時の事。
かいつまんでではあるが、一通り説明した。
「……あ、そういえば蒼角ちゃん。さっきから聞きたい事があるんだけどさ……タクミくんとは知り合いなの?」
「うん、そーだよ! タクミはね、前に焼肉弁当をご馳走してくれたんだ!」
「そうだったんですね……」
「つまり餌付け?」
「餌付けじゃないです」
その時、突然タクミの腹からぐ〜、と音が鳴り響く。
「あれ? タクミ、お腹すいたの?」
「……そうみたいだな。色々ごたついてて、昼飯食ってなかったからなぁ……」
「それじゃあ……はいこれ!」
そう言って蒼角はフライドポテトを差し出してきた。
「……? これは……」
「蒼角もね、お腹空いてたからさっきそこのお店で買ってきたの! 良かったら一緒に食べよ?」
「……でもこれ、蒼角が食べるつもりだったヤツだろ? 貰う訳には────」
再びぐぅぅぅう、とお腹が鳴る。先程より大きな音で。
「…………やっぱ、貰おうかな」
「うんうん! 遠慮しないでいーからね!」
そうして蒼角とフライドポテトを分け合いながら食べ、なんとか空腹はマシになった。
「……そういや姉ちゃん達はいつ来るんだ?」
「今、プロキシさんからもうすぐ着くとの連絡がありました。じきに到着するかと」
「早く顔見せて安心させたげなよ。君のお兄さんもお姉さんも、凄く心配してたからね」
「……分かってますよ」
そんな会話をしていると、見慣れたミニバンがポート・エルピスの駐車場に現れる。
ミニバンは停車し、エンジンの音が止まる。そしてドアがバンと開けられ────
「姉ちゃ──」
「タクミっ!!」
「うぐぉっ!?!?」
こちらに向かって走ってきたリンに、思い切り抱きつかれた。
「タクミ……!」
「兄ちゃん……」
アキラも後からやって来て、タクミのことを抱きしめた。
リンの行動は当然と言えば当然である。半日間とはいえ、行方不明だったのだ。
アキラやリンにとって、その半日間は酷く長く感じた事だろう。
「ホントに……ホントに心配したんだから……!」
「無事で何よりだ、タクミ……」
「……ご……ごめん、心配かけて……」
アキラとリンからの抱擁を、タクミは抵抗せずに受け入れる。
……が、周りから暖かい目を向けられていることに気づき、少し気恥ずかしくなるのだった。
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「……まさかジェーンさんが潜入捜査官だったなんてな」
「あら、それはこっちの台詞よ? アタイだってたっくんがファイズで、店長ちゃんがプロキシだなんて思わなかったもの」
あれから少しした後、青衣とジェーンもポート・エルピスへと到着。
青衣がビデオ屋で言っていた『事情通』とはジェーンの事だった。
タクミ達はビデオ屋の常連客であるジェーンとは顔見知りではあったが、まさか治安官だったとは分からなかった。
青衣曰く、治安局でもジェーンが潜入捜査官である事は直属の上司を除き知られていないらしい。
「それじゃあ、本題に入るわよ? ちょうどさっき大物が一匹、アタイの撒いたエサに食いついた所なの」
ブリンガーは現在、スロヌス区行きの船を探している。高額な報酬を提示しているあたり、よほどヤヌス区から出たいようだ。
そしてホロウには特別なエーテル原料などの貨物を置いているらしく、誰かに運ばせたいのだそうだ。
それを青衣から聞いたジェーンはそれを引き受け、ブリンガーにホロウ内の座標を指定し、そこを待ち合わせ場所とした。
しかし、ブリンガーの追跡は治安局内では公表されていない。
なので青衣はそのホロウに『逃亡犯が逃げた』と嘘をつき、ブリンガーが逃げられないようホロウの入り口を封鎖した。
「──後は待ち合わせ場所にいるブリンガーの所に行くだけよ。彼が今いる場所の座標を、店長ちゃんに送っとくわね」
「ありがとうジェーンさん。イアスも準備万端だし、出発の準備は出来てるよ!」
「それでは突撃を開始します。プロキシさん、ガイドをお願いします」
「うん、任せて──あ……それとタクミ。『これ』、渡しとくね」
「……? え!? これ……」
リンが投げ渡してきたもの。それはてっきり奪われたと思っていたファイズドライバーだった。
「雅さんがバレエツインズで取り返してくれたの。これからホロウに突入するんだから、必要でしょ?」
「……ありがと──」
「あ、でも一つだけ!」
「?」
「ここに来る前も言ったけど、無茶だけはしないように。これだけは約束してね?」
「……!」
タクミは受け取ったファイズドライバーを見つめたあと、リンの方を向き頷く。
そしてベルトを装着し────
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
コードを入力したファイズフォンをバックルにセット。
赤い光と共に、タクミはファイズへと変身した。
「よし……こっちも準備できたぜ」