それからしばらく不定期更新となります
失踪するつもりはサラサラないのでご安心を!
「タクミくん、もう身体は大丈夫なんですか?」
「もう平気ですよ。あと数日もしない内に退院だって」
タクミはどこかデジャヴを感じながら朱鳶とそんな会話をする。
すると雅がタクミをじっと見つめている事に気付く。
「……えーと、雅さんとは一応初めまして……ですよね」
「そうだ。とは言え、お前の事はよく聞いている」
「俺の事?」
「ああ。電話で話す度に、朱鳶の口からタクミの名前が──」
「雅!!」
大慌てで朱鳶は雅の口を手で塞ぐ。そして雅を引っ張ってタクミから少し離れた場所で会話をする。
「わざわざタクミくんの前で言わないで良いでしょ!?」
「む……しかし、タクミの事を話しているお前はいつになく──」
「言わなくていいの!」
「あ……あの」
「タクミくん、さっき雅が言いかけたことは忘れてください、いいですね?」
「あっはい」
本題に戻る。どうやら雅達は見舞いの他に、ある事を聞きたくここに訪れたらしい。
「前から、バレエツインズのホロウから謎の飛行物体が現れたとの目撃証言が多数ありました。それでタクミくんに聞きたいんですが、もしかしてこれって──」
「はい。俺ですね」
「やはりか……」
タクミは朱鳶と雅に、自身が攫われた事、そしてとあるホロウレイダーの協力の元、その攫った者と戦ったことを話した。
「……タクミ、もう一つ聞いてもいいか」
「なんですか?」
「お前はなぜ戦う」
「…………え?」
突拍子もなくそんな事を聞かれ、タクミは目を見開く。
「お前が病院にいる間、アキラとリンからお前の事を聞いた。お前は二人のために、ファイズとして戦っているそうだな」
「……はい」
「だが、お前はなぜアキラとリンがプロキシとなったのか……その理由を知らない」
「……!」
「知らないのに、お前は二人のために命を懸けて戦っている。何もお前の選択が間違っていると言いたいわけでは無い。ただ、何故なのかが私は知りたい」
「……」
タクミは雅の言葉を聞き、しばらく俯き黙った後──口を開いた。
「……旧都陥落が起きる前、俺は色々あって兄ちゃん達とは別々の場所で暮らしてました。それで再会したのは旧都陥落が起きた直後です」
「あの夜、兄ちゃんと姉ちゃんは『自分達は大丈夫だ』なんて言って、俺の心配ばっかりしてました」
「でも、そこから六分街に住み始めて間も無い頃に……俺、聞いちゃったんです」
「姉ちゃんが一人で泣いてる声が」
「……!」
「確かに俺は何も知りません。でもそれは、俺を巻き込みたくないから、何も言わないだけなんだと思います」
タクミは俯きながら話を続ける。
「でも、あの泣き声を聞いてから……二人がいつも俺に見せる笑顔が、本当の笑顔なのか……分からなくなって」
「……タクミくん」
「だから俺は知らないなりに、二人の力になるにはどうすれば良いのかずっと考えてました。そんな時に……ファイズのベルトを手に入れたんです」
「!」
「ぶっちゃけてしまえば、俺は……俺のために戦ってるんです。二人の本当の笑顔が見たいっていう、自分のエゴの為に。だから二人がいくら俺を遠ざけても、俺は戦うつもりです」
タクミの話を、朱鳶と雅は何も言わずに聞いていた。
そして病室の外で『もう二人』、彼の話を聞いている者がいた。
「……タクミ……」
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そして数日した後。
退院したタクミは、アキラとリンに『着いてきて欲しい場所がある』と言われ、車に乗っていた。
「着いたよ、タクミ」
「……? ここは?」
「旧都の大地溝帯中部、その新エリー都側だよ。ここはまあ……簡単に言えば、零号ホロウの暴走を止める為の爆発で出来た地形だね」
「なんで俺をここに?」
「君に、僕達がプロキシになった理由を話すためだ」
「!!」
「……タクミは、カローレ・アルナって人の事は覚えてるよね?」
「あ、ああ。もちろん」
「僕達は、旧都陥落の謎を突き止めて、先生の無実を証明する為に……プロキシになったんだ」
「……? どういう事だ?」
「解説。マスターが師事されていた『先生』……もといカローレ・アルナ上級研究主任は、旧都陥落を引き起こした元凶だとされています」
「……! それが無実だって証明する為に、プロキシに?」
アキラとリンは頷く。
二人は零号ホロウの深部にある『ヘーリオス研究所』の残骸を調査し、旧都陥落の真相を突き止める為にプロキシとなった。
「旧都陥落には必ず裏がある。タクミは、ポート・エルピスで戦ったブリンガーが呼び出した白くて巨大な腕の事を覚えているかい?」
「ああ、もちろん」
「実は、旧都陥落の夜にそれと瓜二つの巨大な腕に襲撃されて、先生は連れ去られてしまったんだ……僕達の、目の前で」
「……!」
カローレは旧都陥落を引き起こした大罪人とされており、彼女に師事していたアキラ達は『罪人の子』と呼ばれている。
調査員の道を選ばなかったのは、その為である。
調査員の道を選んでも、背負わされたその『罪人の子』の肩書きがそれを阻んでしまう。
故に、非合法でホロウを探索できるプロキシの道を選んだ。
「……なる、ほど。理由はよく分かった。でも、なんで急に話す気になったんだ?」
「……実は前に、病室でタクミと雅さん達の会話を聞いちゃったの」
「え」
アキラ達がタクミに何も話さなかったのは、巻き込みたくない……という理由もあるが、それ以上に弟であるタクミに『罪人の子』という肩書きを背負って欲しくない為でもあった。
「──でも、タクミがずっと悩みながらも私達の力になろうって思ってたのを知って……このままタクミに何も言わないままなのは、タクミの気持ちを裏切るのも同然だって気づいたんだ」
「……姉ちゃん」
「……タクミ、一つ決めて欲しい事があるの」
リンはタクミの手を握り、真っ直ぐ見つめる。
「これから、タクミはどうしたい? 私達と一緒に、旧都陥落の真相を突き止めるか。それとも、ここでの話は無かったことにして、今まで通りの生活を続けるか」
「どちらを選んでも、僕たちは君を責めない。だから、慎重に選んで欲しい」
「……俺は」
前者を選べば、これまでにないレベルの脅威がタクミを待ち構えているかもしれない。
ファイズの力では太刀打ち出来ない程の強敵が現れる事も予想されるだろう。
それに、後者を選んでも二人の力になれない訳では無い。リスクを考えれば、後者を選ぶのが妥当だろう。
しかし。
それでも。
二人の笑顔が見たいタクミに、『迷う』という選択肢はなかった。
「……俺は、二人と一緒に戦う」
「……本当に良いの?」
「ああ。旧都陥落の真相、それに先生を連れ去った奴が誰なのか。突き止めてやろうじゃねーか」
「……ありがとう、タクミ」
「いいよ礼なんか。元々決めてた事だしな」
それに、ファイズとして戦い続ける事は、タクミ自身にとっても大きな意味がある。
自分がファイズである限り、タクミはタクミで居続けられる。
自分は『人を傷つける存在』ではなく、『人を守れる存在』なのだと思える。
自分の中にこびりつく『馬鹿馬鹿しい疑念』に囚われずに済む。
故に、タクミはファイズで