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タクミが退院し、早一週間が経った。
先週の熾烈な戦いが嘘だったかのように、再び平和な日常が戻ってきた。
そんなタクミの元に一本の電話がかかってくる。
「もしもし?」
『タクミか?』
「あ、乾さん」
電話を掛けてきたのは、かつて共にサイガと戦った乾だった。
『元気そうじゃねぇか。あれからもう何ともないのか?』
「大丈夫ですよ。もう完治しましたから」
『……そうか。それでタクミ、今日時間は空いてるか?』
「空いてますよ。どうしたんですか?」
『ベルトの事だ。お前には色々と説明しなきゃならない』
「……!」
『ルミナスクエアの喫茶店で待ってるぜ。そこで話をしよう』
「わ、分かりました! すぐ行きます!」
タクミが長い間追い続けていたベルトの謎が、ついに明らかになる。
乾の言葉を聞いたタクミは早速支度をした後、家を飛び出しルミナスクエアへと直行した。
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そしてルミナスクエアの喫茶店にて。
「お待たせいたしました」
「あ、どうも」
コーヒーが二杯、テーブルの上に置かれる。乾はカップを手に持ち、フーフーと息を吹く。
そして数十秒かけて息を吹きかけた後、ようやくコーヒーを飲み始める。
「乾さんも猫舌なんですか?」
「……『も』って事はお前もか?」
「そうなんですよ。俺もラーメン食う時とかしばらく冷まさないとすする事もできなくって」
「……へー」
しばらく他愛の無い会話をした後、乾は本題へと入る。
「今からお前に教えるのは『スマートブレイン』の事、それとベルトを使って変身できる条件。この二つだ」
乾は話を続ける。
「まずはベルトにも書いてある、『スマートブレイン』ってのが何なのかについてだが──これは簡単に言えば、俺達が使ってるベルトを作った会社の事だ」
「このベルトって……やっぱり作られたものなんですね。って事はスマートブレインって旧都時代にあった企業って事ですか?」
「いや……どこの時代にも存在してない」
「え……?」
「スマートブレインは、俺が
「前に、いた世界……?」
乾の口から出たその言葉に、タクミの頭の中は『?』だらけとなってしまう。
乾は表情を変えることなく、タクミに告げる。
「俺は……元々この世界の住人じゃないんだ。タクミ、お前は『転生』って信じるか?」
「転生……?」
「そうだ。俺は元々いた世界で死んだ後、この世界に生まれ落ちたんだ」
転生。
その世界で死んだ後、別の世界に生まれるなんて事はてっきりおとぎ話の類かと思っていたが……
「って事は、ファイズのベルトって──」
「ああ。元々は俺がいた世界──前世に存在してたものだ。俺はその世界で、ファイズとして戦ってたんだ」
「……あれ? でも乾さん、ファイズには変身出来ないんでしたよね?」
「この世界ではな。変身できたのは、俺が『オルフェノク』だったからだ」
「おる、ふぇのく?」
聞き慣れない単語が聞こえる。
「前世には、ホロウやエーテリアスなんてものはなかった。でも代わりに、オルフェノクってのが存在してたんだ」
乾はオルフェノクと呼ばれる存在について話す。
「オルフェノクは……一度死んだ人間が怪物として蘇った姿のことを言う。俺も、その一人だった」
オルフェノク──人類の進化形態とも言われる異形の姿。しかしその進化の代償のせいか、その命は非常に短い。
その問題を解決できるのが『オルフェノクの王』の存在。
オルフェノクは王を見つけ、人間を廃し、世界をオルフェノクだけのものにしようと目論んだ。
乾はオルフェノクの身でありながら、人類の未来を守る為仲間とともにファイズとして戦った。
「オルフェノクには人間を襲うような奴もいれば、人間として生き続けてる奴もいた。大半は、人間を襲うようなやつばっかりだったけどな」
「えっと、じゃあ今の乾さんは……?」
「……安心しろ、今の俺はれっきとした人間だ」
乾はオルフェノクとしての寿命を迎え死去した後、この世界に人間として生まれた。
彼曰く、前世と今世を合わせれば四十年以上は生きている事になるらしい。
二十代前半の見た目をしているのに、やけに落ち着いた感じをしていたのはそのためだったのだ。
そして彼は旧都陥落の際に……ホロウの中でファイズドライバーを拾った。
「……あとはお前も知っての通りだ。俺は人間だから、ファイズにはもう変身できない。前にお前に渡した薬がなけりゃな」
「そうなんです……ね……?」
タクミは話を聞いて違和感に気づく。
乾はオルフェノクだった時はファイズに変身でき、人間である現在は変身できない。
……とすれば、今ファイズに変身できている自分は何者なのか。
「ちょ……ちょっと待ってください乾さん! もしかして俺って──」
「慌てんな。別にお前がオルフェノクだって言いたい訳じゃない。第一、オルフェノクってのは一回死なないと覚醒しないわけだからな。お前は別に死んだ事があるわけじゃねぇだろ?」
「あ……そっか……」
「それに、新エリー都にオルフェノクの存在は影も形も見当たらない。だからファイズに変身できる条件ってのも、別にあんのかもしれねぇ」
「……条件」
ファイズに変身できないのは乾だけではない。
アキラやリン、少なくとも知り合いは皆変身する事が出来なかった。
タクミしか持ち合わせていない『要素』。これが変身の条件なのかもしれない。
「まあそれについてはこれから調べていく。何かあったらすぐ俺に連絡しろ。いいな?」
「はい。あ、それと聞きたい事があるんすけど」
「なんだ?」
「オルフェノクって、どんな見た目なんですか?」
「あー……そうだな。オルフェノクって言っても色んな見た目をしたヤツらがいる。馬だったり、ヘビだったり……ただ、それらに共通した特徴ってのがある」
「特徴?」
「オルフェノクにはな……色がないんだ。全身が灰色なんだ」
「……灰色」
『貴様がやったのだ』
『貴様が殺したのだ』
『これでもなお、己を人間だとほざくつもりか?』
「……………………」
「──タクミ?」
「……」
「……おい、タクミ!」
「あいてっ」
乾に軽く頭をひっぱたかれ、タクミは我に返る。
「急にぼーっとしてどうしたんだよ」
「あ……すいません」
「眠いならコーヒーでも飲んどけ。そろそろ飲みやすい温度になってるだろ」
「そう、ですね」
タクミは気持ちを落ち着かせるために、コーヒーを飲む。
寒空の下、コーヒーの暖かさが身体にしみ渡る。
「そういえば、もう一つ聞いていいですか?」
「?」
「俺達が前に戦ったサイガ……アイツは、オルフェノクなんですかね」
「……さあな。断定はできねぇが、頭ごなしに否定する事もできねぇな」
乾はコーヒーを飲み干し、席を立つ。
「俺から伝えたい事はこれで全部だ。それじゃあな、タクミ。風邪引くなよ」
そう言って乾はどこかへ行ってしまった。タクミは乾を見送りながらコーヒーを飲む。
すると、ポケットのスマホが振動する。ビリーからの電話だ。
「……もしもし?」
『タクミか? お前今どこにいんだよ〜。お前の部屋でゲームしようって約束してたろ?』
「あ……やっべ忘れてた……! 悪いビリー、すぐ戻る!」
タクミは残っていたコーヒーを一気に飲み干し、急いでビデオ屋へと帰って行った。
その日の夜、タクミは久しぶりに悪夢を見た。