ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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執事喫茶②

 

 

 

 

 

「……!? なっ……お前、なんでここに──」

 

「し、シーザー」

 

 

何故ここにシーザーがいるのか。

 

何故ここにタクミがいるのか。

 

両者の考えは、奇しくも一致していた。目の前にいる執事がタクミだと気づいたシーザーは分かりやすく顔を真っ赤にする。

 

ここへ来ていた彼女は目立つのを防ぐためか、いつも郊外で見る格好ではなく、カジュアルな服装をしている。

 

お互い軽くパニックに陥る二人。先に冷静さを取り戻したのはタクミだった。

 

 

「……かしこまりました。『ふわふわパンケーキ』ですね? 少々お待ちください、お嬢様」

 

「お嬢様!?」

 

 

ひとまず、タクミは己の責務を全うすることを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

そしてしばらくした後、タクミはトレイに注文の品を乗せシーザーの元に行く。

 

 

「お待たせ致しました。こちら『ふわふわパンケーキ』になります」

 

「お、おう。ありがと、な……」

 

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

 

「ああ──いや、ちょ……ちょっと待て!」

 

「?」

 

 

シーザーは頬を赤らめながら、メニュー表のとある項目を指差す。

 

 

「この……『オプション』ってやつは頼んでも……良いのか?」

 

「……勿論でございます。お嬢様の頼みとあらば、断る道理などございません」

 

 

タクミはこう言っているが、実はオプションの内容などは詳しく把握していない。

 

流石にないと思うが『萌え萌えきゅん』などは勘弁して欲しいと切に願う。

 

 

お嬢様……ほ、本当に何でもいいのか?」

 

「ええ。何なりとお申し付けください」

 

「じゃ……じゃあ、この『チェキ』ってやつを頼んだ!」

 

(チェキ……)

 

 

写真程度ならば問題は無い。それに写真プリントなら他者に広まる危険性も比較的薄い。

 

無難なチョイスと言えるだろう。

 

 

「ポーズは……お、お姫様抱っこで!」

 

 

 

 

────なんだそれは。

 

 

 

 

思わずツッコミが口から出かけるが辛うじて飲み込む。

 

さらにいつの間にか周りの客が全員こちらを向いていることに気が付く。

 

シーザーもタクミに期待の眼差しを向けていた。

 

 

「……承知いたしました」

 

 

執事として、ここで断る選択肢は存在しない。

 

席を立ったシーザーをタクミはひょいと持ち上げる。

 

 

「うおっ……!?」

 

 

当たり前だが軽い。

 

シーザーと目が合う……が、すぐに目を逸らされてしまう。

 

 

「それでは撮りまーす! はい、チーズ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

校門にて。

 

シーザーは一枚の写真を見る。それは先程撮った執事服姿のタクミと自分が写った写真。

 

 

「…………へへ」

 

「ちゃんと撮れてるかそれ?」

 

「おわああああ!?」

 

 

後ろから急に声をかけられ、シーザーは思わず飛び跳ねてしまう。

 

そこには執事の業務を終え、帰ろうとしているタクミの姿があった。

 

 

「び……ビビらすなよタクミ!」

 

「別にビビらしたつもりはねぇんだけどな……あ、そうだ。お前に聞きたかったことあるんだよ」

 

「……多分だけど、オレ様もお前と同じ事考えてると思うぜ」

 

 

二人がお互いに聞きたい事は一つ……『なぜあの学校にいたのか』。

 

タクミは理由を説明したのち、シーザーから学校にいた理由を聞いた。

 

どうやらあの学校にシーザーの知り合いがいたらしく、良かったら来ないかと招かれたのだそうだ。

 

そこで色々な場所を見て回った所、執事喫茶の看板が目に付いたと言う。

 

 

「あ……あとシーザー、もう一つ」

 

「?」

 

「その写真、誰にも見せんなよ」

 

「え……?」

 

 

シーザーはその言葉を聞いた瞬間、(こっそり)読んでいた少女漫画のワンシーンが頭の中に浮かぶ。

 

 

『誰にも見せんなよ……その写真』

 

『写真の思い出を脳裏に刻み込むのは──俺とお前だけで十分だ』

 

 

もちろんタクミがそのような歯の浮くセリフを口にした訳では無い。

 

タクミは執事服姿の自分を他人に見られたくないので『見せるなよ』と言ったに過ぎない。

 

 

「……」

 

「──シーザー、シーザー?? 聞いてるか?」

 

「えっ、あ、おう!! 勿論だ! 誰にも見せたりしねーよ!」

 

「そうか? なら良いけど」

 

「そ……それで、タクミ」

 

「ん?」

 

「気が向いたらで良いからよ……また、執事服見せてくれねぇか? あ、勿論誰にも見せたりしねぇからよ!」

 

「……気が向いたらな」

 

 

シーザーに別れを告げ、タクミも家へ帰ろうとオートバジンに乗り、出発した。

 

そして数十分後、ビデオ屋に帰り着く。執事喫茶……悪くない体験だったが、かなり疲れた。

 

帰ったら寝ようとドアを開ける。

 

 

「ただいまー……」

 

「あ、タクミ! おかえ──」

 

 

ドアを開けると、ちょうどカウンターでアキラとリン、そして邪兎屋の面々が談笑をしていた。

 

……のだが、タクミを見た途端動きが固まった。

 

 

「……? どうしたんだ皆」

 

「…………あ、えっと……その」

 

「…………」

 

「タクミ……その格好、どうしたんだい?」

 

「格好?」

 

 

アキラにそう言われ、タクミは下を向いて自分の服装を見る。

 

そして気がつく。

 

 

 

 

 

まだ自分が執事服を着ていることに。

 

 

「……」

 

 

タクミは天を仰ぐ。直後、皆から質問攻めに合った事は言うまでもない。

 

しかもその後(本人の意思ガン無視で)撮影会が行われたという。

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