ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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炬燵

 

 

 

 

 

パエトーンや仲間と共に、『ファイズ』として様々な脅威を相手にしてきた少年、タクミ。

 

そんな彼に、未だかつてないピンチが訪れようとしていた。

 

そのピンチとは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(寒い…………!!)

 

 

部屋のエアコンが壊れてしまった事である。

 

たかがエアコンで? と思うかもしれない。しかし、寒がりでもあり暑がりでもあるタクミにとって、エアコンという存在は一種の生命線に等しい。

 

その生命線が機能不全に陥った今、業者が来るまでは、この極めて寒い部屋の中で過ごし続けなければならない。

 

一応アキラやリンの部屋は暖房が効いてるが、だからと言って居座る訳にはいかない。

 

しかし、こんな地獄の状況からタクミを守ってくれる救世主が存在する。

 

 

そう、『炬燵』である。

 

暖房があるので、炬燵など要らない──昨日までのタクミはそう考えていたが、それが間違いだったという事に今日気がついた。

 

そしてその炬燵の有り難さを知ると同時に、タクミはその魅力に取り憑かれ、炬燵の中から出られなくなってしまっていた。

 

『まあここで一生を過ごすのも悪くないだろう』

 

炬燵の中でそんな血迷ったことを考えていると──

 

 

「おいす〜タクミ〜」

 

「パイパー?」

 

 

ドアが開かれ、パイパーが部屋へと入ってきた。

 

突然の来客にタクミは……さして驚く事はなかった。

 

まあノックノックで事前に連絡は貰っていたので当然ではあるが。

 

余談だが、タクミの部屋には邪兎屋のメンバーを始め、一部の知り合いがよく遊びに来る。

 

アキラやリンの部屋に来ることはない。何故か毎回皆してタクミの部屋に来るのだ。

 

『タクミの部屋は絶好の溜まり場』という謎の共通認識でもあるのかもしれない。

 

 

「お……炬燵か、いいなぁ〜。あたしも入っていいか?」

 

 

パイパーはそう言うが、あいにくこの炬燵は一人用である。彼女が入るには、タクミが炬燵から出る必要がある。

 

 

「良いよ、分かった。じゃあ俺は湯たんぽでも──」

 

「お邪魔するぜぃ」

 

「ああああああああ冷てぇ!!」

 

 

タクミが出るのを待たずに、パイパーは靴を脱いで炬燵へ入り込んできた。

 

先程まで外にいた彼女の冷えた足が当たり、タクミは悲鳴を上げてしまう。

 

 

「んー二人までならいけるだろ。てゆーか湯たんぽ使うくらいならさ、部屋の暖房付けた方がよくないかぁ?」

 

「エアコンは壊れたんだよ。だから炬燵を出したんだ」

 

「なーんだそうだったのか……んじゃ、しょうがねぇな──っと」

 

「ちょ、パイパー? 炬燵ん中ギッチギチなんだけど? やっぱ俺出ようか?」

 

「だーいじょうぶだって〜。それにむしろギッチギチの方が暖まるってもんだぜぃ」

 

 

そうだろうか。

 

まあ湯たんぽの湯を沸かすのも面倒くさいので、タクミは炬燵で引き続きくつろぐことにした。

 

 

「あ〜やっぱ炬燵はいいなぁ。極楽そのものだぜぃ」

 

「……そういやパイパーは今日何しに来たんだ?」

 

 

一応数十分ほど前に、『遊びに来る』という旨の連絡は受けたが、どう言った用なのかまでは聞いていない。

 

 

「んー? 特に何もないぜぃ。ホントはビデオを借りに来ただけだからなぁ。そのついでに、アンタの顔でも見とこうと思って」

 

 

パイパーはホットカーペットに寝転びながらそんな事を言う。

 

 

「あ……そうだ、折角ビデオ借りたんだし、一緒に見ようぜぃ」

 

「お、良いな。何借りたんだ?」

 

「ホラー映画だぜぃ」

 

「ごめん俺ちょっと急用思い出した」

 

 

そう言ってタクミは炬燵から脱出しようとしたが、炬燵の中にあるパイパーの足ががっしりと彼を捕まえる。

 

 

「んなつれないこと言うなよな〜。ほら、早く見ようぜぃ、炬燵でぬくぬくしながらさ」

 

「ぬくぬく出来ねーよ、むしろ(背筋が)寒くなるわ!!」

 

 

何故皆は部屋に遊びに来る際、必ずホラー映画やホラゲーを持ち込んでくるのだろうか。

 

 

「大丈夫だぜい。これ、プロキシによればB級映画らしいからな〜。言うほど怖くはないだろ?」

 

「…………」

 

 

それを聞いてタクミは渋々、本当に渋々と言った感じで座り直す。

 

パイパーは再生機器にビデオテープを挿入し、再生を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエンドロール。

 

 

「──な? 怖くなかったろ?」

 

「いや、うん……確かに今まで見たやつよりは怖くなかったけどさ……」

 

 

パイパーの言う通り、一緒に見たB級ホラー映画はCGが安っぽく、思ったよりかは怖くなかった。

 

ただ、あくまで『思ったよりかは』である。

 

ビックリシーンはしっかりビビったし、演者の迫真の悲鳴はエンドロールが流れてもなお未だ脳と耳にこびりついて離れない。

 

結論、やっぱり普通に怖かった。

 

 

「ふああ……映画見たらなんか眠たくなってきたぜぃ……炬燵の暖かさも相まって余計に……」

 

「ええ……ホラー映画見て眠くなんのかよ……」

 

「だってB級だったからなぁ……ストーリーも退屈だったし……」

 

 

パイパーは再びカーペットに寝っ転がる。そして数分もしない内にスヤスヤと眠り始めてしまった。

 

 

「寝つきいいなコイツ……」

 

 

タクミはパイパーの寝顔を見る。郊外にいた時も、アイアンタスクの運転席で同じような顔をしながら寝ていたのを思い出す。

 

 

「……」

 

「んむ」

 

 

タクミはパイパーの頬を人差し指でちょん、とつつく。しかし、パイパーは起きる気配がない。

 

 

「……」

 

 

別に魔が差した、と言うほどではないが……なんとなくタクミは寝ているパイパーの髪を優しく撫でる。

 

 

(…………いや何やってんだ俺は)

 

 

いくら親しい間柄とは言え、寝ている異性の髪を勝手に触れば、セクハラと言われても文句は言えない。

 

そんなことを考えていると、パイパーの耳が先程より赤くなっている事に気付く。

 

炬燵の温度が高すぎただろうか。そう思ったタクミは炬燵の温度を少し下げる。

 

 

(……コーヒーでも淹れてくるか)

 

 

タクミは立ち上がり、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、インスタントコーヒーを淹れたタクミは部屋へと戻る。

 

ドアを開けると、先程寝ていたはずのパイパーが起きていた。

 

 

「なんだ、もう起きたのか?」

 

「あー……まあ、あんま寝付けなかったからなぁ……」

 

「そりゃそうだ。ホラー映画で眠れる奴の方が稀だろ」

 

「…………アンタのせいだっての」

 

「やっぱり睡眠導入に最適なビデオっつったら『エリーガイド』しか──あれ、どうしたんだパイパー、寒いのか?」

 

「……かもなぁ。なぁタクミ、コイツにピッタリなサイズの腹巻きとか持ってないか?」

 

「え、腹巻き? 悪いけど俺の部屋には────あ、そういや一つあったな」

 

「お、ホントかぁ?」

 

 

タクミはクローゼットの引き出しからアタッシュケースを出す。

 

そしてそのアタッシュケースの中から──ファイズドライバーを取り出した。

 

 

 

「……ベルト?」

 

「ああ。なんでかは分かんねぇけど、割と暖かいんだよコレ」

 

 

試しに付けてみる。確かに暖かった。

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