ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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目論み

 

 

 

 

 

「オル、フェノク?」

 

 

タクミはかすかに震えた声で聞き返す。

 

 

「俺が、そうだって言いたいのか」

 

「そうよ」

 

 

オルフェノク。

 

その存在を知っているのは『オルフェノクがいた世界』で生きていた乾と、そんな彼から話を聞いたタクミの二人しかいないはずだ。

 

新エリー都にはオルフェノクの存在は確認されていない。だと言うのに、目の前の彼女──ツイッギーはオルフェノクを知っていた。

 

 

 

「あ……言っておくけど、誤魔化しても無駄よ。貴方のことはよく知ってるもの。貴方が新エリー都で、ファイズとして戦ってることも全部ね」

 

「……っ」

 

「私の『知り合い』が言ってたわ。ファイズはオルフェノクって言う存在にしか変身できないんだって」

 

「……何かの勘違いだ。俺はそのオルフェノクとやらなんかじゃねぇ。ただの人間だ」

 

「今はそうかもしれないわね」

 

「……何を、する気だ」

 

 

タクミの問いにツイッギーは何も答えない。しかし行動で答えを示すかのように、彼女はどこからか注射器を取り出した。

 

 

「今がオルフェノクじゃないのなら……オルフェノクにしてしまえばいいの。貴方を……一度『殺して』ね」

 

「!!」

 

「『彼』から聞いたわ。オルフェノクは人類の進化形態なんだって。身体能力、五感、肉体──そのどれもが人間のそれを大きく上回るものだって」

 

 

ツイッギーはうっとりとした笑みを浮かべながら、注射器の針をタクミの腕に近づける。

 

がっちりと抑制帯に縛られているタクミは抵抗が出来ない状態だった。

 

 

「オルフェノクの細胞を採れば……貴方と11号がいれば……シルバー小隊は昔みたいに──ううん、昔よりも強くなれる……!」

 

「…………ぐ……!!」

 

「大丈夫よ、苦しいのは今だけ。協力したら、貴方に見せてあげるわ。シルバー小隊がどれだけのものだったかをね……!」

 

 

11号に何をしたのか。

 

ツイッギーの言う『彼』とは何者なのか。

 

今のタクミに、それを聞けるだけの余裕は残されていなかった。

 

そして注射器の針が、タクミの皮膚に触れようとしたその時。

 

 

 

ドゴォン!!

 

「!!」

 

「っ、え!?」

 

 

部屋の外から大きな音が鳴り響く。

 

ツイッギーが怪訝な面持ちで部屋の外に様子を見に行こうとする。

 

しかし、ドアノブに手をかける前にバン!と扉が開かれる。そこには──

 

 

「タクミ!」

 

「!!」

 

「アンビー、隊長……!」

 

 

扉を開けたのはタクミにとって見慣れた少女、アンビー。アンビーは手術台に縛られたタクミを見るなり、いきなり姿を消す。

 

 

「うぉっ!?」

 

 

……どこに消えたかと考える間もなく、アンビーはタクミのすぐ近くに現れ、目にも止まらぬ速さでタクミを縛っていた抑制帯をきれいに切断。

 

そのままタクミを担いで部屋を飛び出した。

 

建物の外に出ると、そこに待ち構えていたのは数十人の兵士たち。

 

アンビーとタクミに銃を向ける兵士。兵士の一人が引き金を引こうとしたその瞬間。

 

 

「ぐぁっ!!」

 

 

兵士の持っていた銃が空を切る弾丸によって弾き飛ばされる。

 

奇襲を受けたと兵士達が認識する前に、次々と兵士達の武器が撃ち落とされる。

 

アンビーは奇襲の事を知っていたのか、さして驚く様子もなく丸腰となった兵士達に(タクミを担ぎながら)攻撃をしかける。

 

こうしてものの十数秒で、兵士達は全滅してしまった。

 

 

「アンビー!」

 

 

直後、どこからか聞き慣れない女性の声が聞こえる。

 

声と共にこちらへ走ってきたのは、大きなライフル銃を持ち、両目をバイザーで覆った金髪の女性。

 

彼女は負傷した11号を背負っている状態だった。

 

 

「援護感謝するわ、トリガー。11号の方は……」

 

「命には別状はありません……ですが、容体は極めて危険です。すぐにホロウから脱出を──」

 

 

トリガーがそう言いかけたその時、ひとつの人影が話を聞いていたアンビーへと襲いかかる。

 

人影の正体はツイッギー。ボロボロのナタを持って奇襲を仕掛けるが、アンビーはこれに対し冷静に対応。

 

二つの刃がぶつかり合った後、アンビーはツイッギーの攻撃を避けつつ、横蹴りで吹き飛ばす。

 

 

「……っ、流石の身のこなしね、アンビー隊長……あの頃と、同じ……」

 

「……ツイッギー」

 

 

アンビーは後ろの気絶している11号を背負っているトリガーを見る。

 

 

「……トリガー、11号と一緒に先にホロウを出て。彼女の事は、私に任せて」

 

「……っ、分かりました」

 

 

少しだけ不安が残るトリガーだったが、アンビーの強さならば問題は無いだろうと判断し、そのまま場を離脱した。

 

 

「……久しぶりね、ツイッギー。こういう事を言うのは酷だけれど……貴女は、とっくの昔に死んだと思っていた」

 

「……!」

 

 

タクミはアンビーの言葉を聞き、目を見開く。やはりツイッギーとアンビーは同じシルバー小隊の仲間。

 

ツイッギーが口から出任せを吐いていた訳では無かったのだ。

 

 

「ふふ……そう思うのも仕方ないわ。だって私自身、あの時自分が生きているとは思わなかったもの」

 

「……貴女に一つ、聞きたい事がある。貴女が11号を攫った理由は分かってる……けど、タクミの事も攫った理由はなに? 彼は……無関係の人間のはずよ」

 

「……アンビー隊長は、『オルフェノク』について聞いたことはある?」

 

「……? オルフェノク?」

 

「オルフェノクって言うのは、一度死んだ人間が覚醒し蘇る事で生まれる人類の進化形態……でもそのオルフェノクは限られた数の人間にしかなれないわ──貴方が担いでる彼は、オルフェノクになれる可能性を秘めた人間の一人なの」

 

「!!」

 

「私がオルフェノクに興味を持ったのは……人類をはるかに超えた力を持ってるってのもあるけど……一番興味深かったのは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――オルフェノクは、エーテルによる侵蝕を全く受けないって事」

 

「……侵蝕を、受けない……?」

 

「実際に『彼』がそれを見せた時、凄く驚いたわ。侵蝕される心配がないなんて……ホロウに入る人間からしたら夢のようなものじゃない?」

 

「……だからタクミを狙ったの?」

 

「ええ。たっくんをオルフェノクにして研究を進めれば……私が生み出す姉妹達はより強くなれる」

 

 

シルバー小隊の単語を聞いたアンビーは、いつになく表情を険しくさせる。

 

 

「……シルバー小隊は復活させるべきじゃない。あの技術の罪深さは、貴女もよく知ってるはず」

 

「……」

 

「あの技術から生み出された私達は、罪そのもの。けど、貴女はまだ引き返せる。私と一緒に──」

 

「うるさい」

 

 

ツイッギーはアンビーの言葉を遮る。

 

 

「アンビー隊長……貴女の事はとっても尊敬してる。でも、そんな風にいらないお節介を焼かれる筋合いはないわ」

 

 

そう言うとツイッギーは踵を返し、建物の方へと戻っていく。

 

その時、建物の入口から誰かが見ている事に気がつく。

 

 

「……あれは」

 

「……!」

 

 

恐らく『ツイッギーの姉妹』であろうマスクをつけた少女が不安そうな面持ちでこちらを見つめていた。

 

しばらくした後、建物に入るツイッギーの後を追い、ツイッギーと共に入口の奥へと消えた。

 

 

「……行きましょう、タクミ」

 

「あ、ああ……えっと、アンビー」

 

「どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけどそろそろ降ろしてくれないか? ずっと担がれたままってのはちょっと……」

 

「……あ、ごめん」

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