『パリクス』を撃破し、目的であった研究所……そして、そこにあったシルバー小隊に関する全ての物を消し去ったアンビー。
ちなみに後から分かった事だが……アンビーの戦闘中、トリガーの元で安静にしていたはずの11号が彼女と合流し、共に戦ったのだそうだ。
元より、アンビーは11号の事を巻き込むつもりは微塵もなかった。
しかし、面倒を見ていたトリガー曰く、最初は11号を止めたらしいが、彼女の強い意志を尊重し共に行くことに決めたらしい。
その11号は現在、軍の医療施設にて治療を受けている。
こうして、アンビーのシルバー小隊に関する事件は『ひとまず』幕を下ろした。
……が、タクミにはまだやらなければならない事がある。そう、オルフェノクに関する事だ。
あの時、タクミと共にホロウに入ったリンはツイッギーの口から出た『オルフェノク』という単語を聞いても、何の事だが微塵も理解出来なかっただろう。
故に、アキラとリンには詳しく説明しなければならない。
という訳で、知っている事全てを説明した。二人の反応はアンビーに話した時と殆ど同じだった。
当然と言えば当然だ。『エーテリアスとは非なる、ホロウの外でも活動出来る怪物』がいると言われれば、本当にそんなのがいるのかと疑いたくもなるだろう。
そして──『自分がオルフェノクかもしれない』という事も話した。
拒絶されるかもしれないという恐れがなかった訳ではない。それでもこれからの為に、話す必要があるとタクミは考えた。
それを聞いたアキラとリンは──
『例えタクミがオルフェノクとやらであろうと、大事な弟だと言うことには変わりない』
──と、二人してタクミにそう言った。
この時、自分はどんな顔をしていただろうか。驚きで目を丸くしていたのか、嬉しさで顔を綻ばせていたのか。
実のところ、よく覚えていない。
ただ、思えば二人は昔からいつだって自分の味方でいてくれた。拒絶などするはずがないと、分かりきっていたことだった。
アキラとリンだけではない。ファイズとして戦い始めてから、たくさんのかげかえのない仲間、友達が出来た。
タクミは二人にありがとう、と言うと、何故か二人はいつにない勢いでタクミの髪の毛をぐしゃぐしゃと撫で回してきた。
相変わらずむず痒い気分だったが、それ以上に心地が良かった。
そして約二週間後。
「タクミ、一緒にラーメンを食べましょう」
六分街で久しぶりに顔を見せた11号。その様子を見るに、完全に回復したようだった。
「おう嬢ちゃん、久しぶりだな! 最近顔見ねぇからどうしたのかと思ったぜ?」
「ごめんなさいチョップ大将。ここ最近色々と立て込んでいて……この通り体調面に問題は全くないわ」
あくまで心配はかけないよう11号はそう言った。
「そうかい? ま、嬢ちゃんが元気なら何よりだ! そんで、お二人さんは何が食いたい?」
「黒鉢赤辛鳥白湯ラーメン、辛さ二十倍」
「あ、俺も」
「あいよ!」
注文をし、出来上がるのを待っている間、タクミが口を開く。
「……11号、本当に大丈夫なのか?」
「心配無用よ。常に最高のコンディションを保つのは、軍人として当然の事だから」
「それなら、良いけどよ」
「……でも、長い間顔を見せなかったのは確かね。心配してくれてありがとう」
「……」
トリガー曰く、記憶を失っていた間の事は覚えていないらしい。
つまり、トリガーやタクミとルミナスクエアに行った事は覚えていない。アンビーと会ったり話をした事も……当然覚えてはいなかった。
「いただきます」
出来上がったラーメンを念入りに冷ましながら、麺を口の中に入れる。
美味しい。
美味しいのだが……思えばここ最近、昼飯はラーメンかハンバーガーの二択な気がする。
いくらタクミが育ち盛りの年頃とはいえ、ジャンクフード三昧は体に悪いのでそろそろ控えたい。
『育ち盛りだからこそ、完全栄養食であるハンバーガーを食べるべき』と力説する人物もいるが、決してそんな事は無い。
「また一緒に食べましょう」
「ああ」
ラーメン完食後、11号はそう言って任務へと戻って行った。
11号を見送り、その姿が見えなくなった後、タクミはため息を吐く。
「……」
「……」
……そろそろ声をかけるべきか。
「……なあアンビー、そろそろ出てきても良いんじゃねぇか」
タクミがそう言うと、ニューススタンドの裏からアンビーが姿を現した。
「……気配は消してたはずなんだけど」
「後ろから見られてたら嫌でも気づくからな?」
一緒にいた11号が気づかなかった辺り、本当に気配は消していたのだろう。何故かタクミは気づいてしまっていたが。
「……それよりも、本当に良かったのか? 会いに行かなくて」
「ええ。彼女の元気そうな姿が見られれば、それで十分」
彼女はあいも変わらず無表情でそう言う。
しかし、アンビーと会った時の事が11号の記憶から抜け落ちているという事は、11号はアンビーの事を裏切り者だと思っているのかもしれないという事だ。
お節介じみた事は言いたくないが、本当にそれでいいのか? と、そう考えてしまう。
「……私の事は大丈夫よ、タクミ」
「……何も言ってないぞ、俺」
「貴方の表情や考えている事は、ビリーの次に分かりやすい」
「……」
「ハ──11号が私を憎いと思っていても、それで良い。むしろ、彼女の憎しみが他の人間に向けられてしまう事を恐れている。でも──私は、彼女なら大丈夫だと思ってる」
「……そう、か」
アンビーがそう言うなら大丈夫なのだろう。
しかしそれでも、タクミは彼女が心配だった。気持ちを押し殺していないか、と。
ツイッギーの件もあったのだ。今回の件で彼女の心に傷は付かなかった、とは言いきれない。
だが彼女の本心がどうかなど、エスパーでもないタクミには分かりはしない。
そんなタクミが彼女のために出来ることなどたかが知れているが……『友達』として、やらないよりはマシだろう。
「……なあ、アンビー」
「?」
「この後一緒に映画でも観ねぇか? ビリー達も一緒にさ」
「…………」
「……なんだよ、その顔」
「……貴方から誘ってくるのは珍しいと思って」
「そうか? ま、そんな日もあるだろ。んで、何が観たい? お前が観たいやつ観ようぜ」
「ホラー映画──」
「以外で」
「……」
「……」
シーズン1アウトロに行く前に番外編を挟みます!