ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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雨の日

 

 

 

 

 

「……」

 

 

ほぼ確実に当たると言われている新エリー都の天気予報も、当たらない日がある。

 

今日がその日だった。

 

頼まれたおつかいを済ませ、ルミナスクエアのスーパーを出たタクミの前に待ち受けていたのは、ザアザアと降りしきる豪雨。

 

天気予報では一日中晴れとあったうえ、降水確率も限り無く低かった。

 

故に傘を持ってくる事はしなかったが、それが間違いだったと気付いた。

 

 

「……うー、あー」

 

 

スーパーの入口に立ち尽くし、声にならないうめき声を出すタクミ。

 

最近不運な出来事に見舞われなかったからと言って油断していた。仕方ないので兄に連絡し、車で迎えに来てもらおうとスマホを取り出す。

 

すると。

 

 

「タクミ」

 

「?」

 

 

すぐ横から女性の声が聞こえた。自分に向けて言ったのだろうかとその方向を向いて見ると──

 

 

 

 

 

「久しぶり。郊外の時以来だね」

 

「……!?」

 

 

そこにいたのは、マスクをしたスナネコのシリオンの女性──プルクラだった。

 

プルクラとはかつて、ツール・ド・インフェルノに使用する車両のパーツを巡り、ファイズとして一戦を交えた事がある。

 

そう、『ファイズ』として。タクミとして彼女と顔を合わせた事は今まで一度も無い。しかし目の前の彼女はタクミのことを知っていた。

 

突然旧敵と出くわしたタクミだが、なんとか顔には出さず、シラを切る事にする。

 

 

「……あーその、どっかで会いましたっけ俺ら」

 

「…………ぷっ」

 

 

タクミの質問にプルクラは思わず、と言った感じで吹き出した。

 

 

「……何笑ってんすか」

 

「ふふっ、悪いね。確かにプロキシの言ってた通り、凄く分かりやすい奴だと思ってさ。安心しな、別にアンタを襲おうだなんて思ってないから」

 

 

どうやら完全に正体はバレているようだった。ただ、奇妙な事に彼女から敵意は感じられなかった。

 

 

「……なら何のつもりで」

 

「ま、積もる話は歩きながらでもしようじゃないか。私もちょうど六分街に用があったとこでね」

 

「え? あー……悪いけど、俺傘持ってきてなくて」

 

「それなら大丈夫だよ──ほら」

 

 

そう言ってプルクラは懐から折りたたみ傘を取り出した。

 

 

「雨に降られるのは誰だって嫌いだろうけどさ……私は特段それが嫌でね。だからいつ雨が降っても良いように常に持ち歩いてるんだよ」

 

「……二つ持ち歩いてんのか?」

 

「何言ってんだい? 一つあれば十分だろ?」

 

「貸してくれるんじゃないのか」

 

「別に貸すとは一言も言ってないでしょ──ほら、さっさと入りな」

 

 

プルクラは折りたたみ傘を開き……こちらに手招きをした。

 

 

(……そういう事か)

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクミ、もっと寄りなって。尻尾が濡れちゃうじゃないか」

 

「そうは言ってもよ……」

 

 

六分街への帰り道。先程より弱まったとはいえ、未だ止まない雨の中を二人は歩いていた。

 

──相合傘で。

 

 

当然、道行く人からは好奇の目で見られる事になるのだが……タクミは買った商品を濡らさないよう必死だったためそれどころではなかった。

 

そしてプルクラは歩きながら、最近の自身の境遇についてを話し始めた。

 

 

『トライアンフ』を抜けたプルクラは、カリュドーンの子のメンバーに加入する事にした。ただし、"仮"のメンバーとして。

 

行く宛てが無かった彼女は、たまたまカリュドーン側が情報収集が出来る人材を探していると言うのを耳にする。

 

そこでプルクラは『本当に身を置くに値するか』の判断をする為に、試用期間として仮加入をすることにした。

 

──というのが、前までの話。どうやら今の彼女は、カリュドーンの子にとても馴染んでいるようだった。

 

 

「──不思議なもんだよ。金払いは良いくせに、頼むのはただのおつかい。からかってるのかと思ったらアイツら、私の為にプレゼントを用意してたんだとさ。私は傭兵だってのにね」

 

 

タクミの知らない間に、色々とあったらしい。プルクラの愚痴から嬉しそうな声色が隠せていない。

 

 

「それで、まあ……あそこに身を置くのも悪くないって思ったんだ。それでアンタの事もシーザーから色々聞いたよ。まさか年端も行かない子供がファイズだとは流石に予想外だったけどね」

 

 

ちなみにアキラとリンはこの事を既に聞いているらしい。ビデオ屋にも何回か訪れていたらしいが、神のイタズラか、タクミとプルクラが鉢合わせる事は今の今まで無かった。

 

 

「まあ私から話す事はこのぐらいかな。後はシーザーにでも聞きな──っとタクミ、もっと寄りなって。今度はアンタの肩が濡れてるよ」

 

「結構寄ってるつもりなんだけどな……ここまで詰めてダメならもう仕方ねーよ」

 

 

上着の右肩部分をびっしょりと濡らしながら、ようやく六分街のビデオ屋へと帰り着いた。

 

中には店番をしていたアキラと──もう一人いた。

 

 

「おかえり、タクミ」

 

「ただいま兄ちゃん──って、シーザーもいたのか」

 

「ん? おお、タクミ、と……っ!?」

 

 

シーザーはタクミと一緒に店に入ってきたプルクラを見て驚愕する。

 

 

「お、お前プルクラ……っ、なんでタクミと一緒にいるんだよ!?」

 

「……?」

 

 

なぜかいつになく慌てふためくシーザーを見てタクミは不審に思う。

 

 

「プルクラ、シーザーどうしたんだ?」

 

「……こっちが聞きたいよそんなの。タクミと一緒にいることの何がそんなに────ああ」

 

 

どうやらプルクラは理由が分かったようだ。タクミにはさっぱり分からなかった。

 

そして彼女はマスク越しにニヤニヤしはじめる。

 

 

「いやぁ、ルミナスクエアでたまたま会っちゃってさ。それで折角だから一緒にここに来たのさ──あ、勿論冷やかしに来たわけじゃないよ。ビデオを借りに来たんだ、タクミと一緒に観るビデオをね」

 

「なっ、い……一緒に……!?」

 

「あーここまで大変だったよ。雨に降られたせいで相合傘までする羽目になったんだから」

 

「あいあいっ!?」

 

 

(プルクラ、完全に楽しんでるな……これは)

 

 

二人のやり取りを見てアキラはそう感じた。プルクラはシーザーをからかって反応を楽しんでいる。

 

 

「ちょ、ちょっと待てプルクラ! 映画を観る約束はオレ様が先にしたんだ! そうだよなタクミ──ってあれ? タクミは?」

 

「ああ、タクミなら今二階に行ったよ。なんでも雨に──」

 

「よし来た!」

 

「あ、ちょ──」

 

 

アキラが何か言いかけていた事に気付かず、シーザーは店の階段を駆け上がって行った。

 

 

「……プロキシ、さっきなんて言おうとしてたんだい?」

 

「雨に濡れたらしいから二階に着替えに行った、って言おうとしたんだ……」

 

「……バカだね、アイツは」

 

 

数秒後、二階から『逆ラッキースケベ』に出くわしたシーザーの悲鳴が聞こえた。

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