デッドエンドホロウ、とあるトンネルの中。
猫又たちはトンネルへ入り減速する電車と並走していた。
「マスター。間もなく列車が予定地点を通過します。依頼人共々、行動できるよう準備してください」
「プロキシ、今だ!」
そう言って猫又はボンプを走行する列車の上へと放り投げた。
列車の上へ見事(?)着地するプロキシ。
「よし、後はプロキシが運転室に行って列車を止めることさえできれ──」
その時、ファイズは異変に気づく。
列車の走行音により掻き消されていたが、ファイズには確かに聞こえた。
「ちっ……面倒くせぇな。任務とはいえ、こんな格好をしなきゃならんとは……」
「少しは我慢しろよ。俺だって靴が合わなくて辛いんだ」
「──は?」
人が居るはずの無い列車の中から話し声がする事に。
「猫又、まずいぞ……列車の中に人がいる……!」
「え!?」
「おいプロキシ!戻れ!」
ファイズが必死に叫ぶが、その声は列車の音でかき消される。プロキシはそのままハッチから中へと入っていった。
「っ!猫又、電車に乗り込むぞ!」
「わ、分かったぞ!」
電車の窓をフォンブラスターの銃撃で破壊し、中へ入る。
「ハァッ!」
「せやっ!!」
「!?ぐわぁっ!!」
ファイズはボンプへ銃を構えていた列車の中の人間を蹴り飛ばし、ボンプを救出する。
「プロキシ、大丈夫か?」
「う、うん!ありがとうファイズ……!」
「治安局の武装部隊……?列車に積まれてるのは爆薬だけじゃねぇのか!?」
「ファイズ!ボンプをこっちに!」
「!」
ファイズはボンプを猫又へとパスする。ボンプを受け取った猫又はそのまま列車の外へと放り投げた。
「ここはあたしたちに任せて、先に戻って!キャロットがあるから大丈夫、後でお店に行く!」
「猫又!うわぁっ!」
「リン、聞こえるかい?何が起こったんだ?」
「分からない……とにかくお店に戻るから、それまで待ってて!」
プロキシは急いでデッドエンドホロウの出口へと向かった。
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「オラァッ!」
「ぐおっ!?ぐ……ぐぅ……」
最後の武装兵士に大ぶりのパンチを食らわせ、気絶させる。これで鎮圧は大方完了した。
「ファイズ!今のうちに列車を出るぞ!」
「……ああ」
こうして二人は無事列車から脱出した。
猫又のキャロットでホロウの出口へと向かう途中。
「……」
「……えっと、ファイズ?」
「ちょっと待ってろ……今ちょっと考えを整理してるから」
「う、うん……」
何やら気まずい雰囲気。猫又はスマホを取り出す。
すると何かに気づき、ファイズへスマホを見せた。
「……あ!ファイズ、このニュース見て!地下鉄改修プロジェクトの爆破解体が、明日までに延期するんだって!」
「延期……?」
ファイズはスマホでニュースの詳細を確認する。どうやらヴィジョンは『技術的要因』とやらで解体を延期するらしい。
「……列車が本来のルートを外れていた事に関する報道はなし、か──なあ、猫又」
「ん?どうしたんだ?」
「お前、俺たちにまだ言ってねぇ事あるだろ」
猫又の動きが凍りつく。
「テレビじゃ爆薬を輸送するのは無人列車だって言ってたよな……だけど列車の中には治安局の武装部隊がいた」
治安局がプロジェクトに関わっているという話は聞いたことがない。
それに先程列車の外から聞こえた会話の内容。
おそらく彼らは治安局ではなく、治安局に偽装したヴィジョンの兵士なのだろう。
「そ……そんな事言われても、あたしだって列車の中に人がいるなんて知らなかったぞ!」
「それにしちゃ随分慣れた感じだったじゃねぇか。俺なんか事態を飲み込むのさえ精一杯だったのによ」
「そ、それは……!他の場所で同じ格好の奴らを見た事があっただけで……」
「……他の場所」
兵士を乗せた列車の目的地はカンバス通り。おそらく他の兵士達もそこに居るのだろう。
なぜヴィジョンは兵士達を爆破エリアへ送り込む必要があったのか。
あくまで推測だが、答えは見えてきた。
「猫又」
「……!」
ファイズは猫又の肩に優しく手を置く。そして黄色く光る複眼で猫又の目を真っ直ぐ見つめる。
「あったことを俺達に全部話して欲しい。俺達が助けなきゃいけないのは、本当にニコ達だけか?」
「……話した所で、信じてくれるか?」
「大丈夫だ。詳しく話してくれれば、プロキシも協力してくれる。俺だって勿論、協力するつもりだ」
「……ありがとう。でも、上手く説明できるかな……?」
すると猫又は顔を上げ、ひらめく。
「──そうだ!店にあるニコのボンプ!視覚記録の続きを見れば、全部分かるはずだ!」
「よし、そうと決まればさっさとホロウ出て店に戻ろうぜ、猫又」
「うん!」
二人は急いでホロウの出口へと向かった。
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ビデオ屋、Random Play。
突然、店の扉が勢い良く開かれた。
「ただいま!はぁ……はぁ……ごめん、予想以上に時間がかかっちゃった。あたしが持ってたキャロットだと、遠い方の出口しか分からなくて……!」
「猫又!」
アキラとリンの二人が息切れしている猫又を出迎える。
「大丈夫?怪我はしてない?」
「だ……大丈夫。それよりもあたし、あんた達に謝らなきゃいけない事がある……!」
「!」
「あんた達に黙ってた事があったんだ……!実はあたしと邪兎屋は、とんでもない面倒事に巻き込まれた!でもそれは、人助けのためなんだ!」
「人助け……?つまり、君はニコ達と一緒に、人助けをしていたと?」
「その、色んな事があって、切羽詰まってて……上手く説明できる自信がなかったんだ……だからあんた達に言えないままだった……ホントにごめん!」
そう言って頭を下げる猫又。顔を見合わせるアキラとリン。
「……猫又。顔を上げて」
「……!」
「まずは落ち着いて。慌てなくても、ちゃんと事情を話してくれれば私たちも協力するから。ね?」
「ああ。僕たちは君の話をちゃんと聞く。だから何があったのかを教えて欲しい」
「……それなら、ニコのボンプの視覚記録の続きを見た方が手っ取り早いぞ!」
「視覚記録か……分かった。Fairy、早速出力の準備をしよう」
そう言ってアキラはモニターへと向かった。
「……そういえば猫又」
「どうしたの?」
「タクミは今どこにいるの?一緒にホロウを出たはずじゃ──」
そう言いかけた時、店のドアが開く音がした。
そこにはスタミナ切れで今にも倒れそうなタクミが立っていた。
「ね、猫又……!お前ちょっと速ぇ、速すぎ……!」
「おかえりタクミ……凄い汗だくだね……」
「そ、そういえば店に向かうのに必死で置いてけぼりにしちゃってた……」