ZZZ × 555   作:びぎなぁ

140 / 302
1-アウトロ:涙と過去を埋めて
収集家ヒューゴ


 

 

 

 

 

とある日の事。タクミの元に一通のDMが届く。

 

メッセージの送り主はジェーン。話しておきたい事があるためルミナスクエアの川沿いの公園にデルタのベルトを持って来て欲しい、との事だった。

 

なぜルミナスクエアなのか、なぜベルトを持っていく必要があるのかが気になるところだが、とりあえず行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして人気の少ない公園へと来たタクミ。そこにはジェーンともう一人、意外な人物がいた。

 

 

「やっほー。待ってたわよたっくん」

 

「よう」

 

「乾さん?」

 

 

なんとジェーンと一緒にいたのは乾だった。手にはファイズギアが入ったアタッシュケースを持っている。

 

上辺だけとはいえホロウレイダーの肩書きを持っている乾が、なぜ治安官であるジェーンといるのか。

 

 

「……なんで俺がここにいるのかって顔してんな」

 

「ま、まあ……そうっすね」

 

「それについてはアタイから説明するわね」

 

 

ホロウでの無断出入りを除き、基本的に違法な行為には一切関わってこなかった乾。

 

そこで治安局は乾にファイズやカイザに関する情報を提供する代わりに、乾の行動には特別目を瞑るという条件を提示した。

 

……ちなみに半月ほど前に、パエトーンが同じような処分を下されている。

 

 

「え……? 治安局に乾さんが自首したって事ですか?」

 

「そうじゃないわ。けど、それについては今からする話が深く関わってくるの。たっくんをここに呼んだのはそのため」

 

「タクミ。前に俺にファイズのベルトを預けた事は覚えてるか?」

 

 

ファイズドライバーの位置が割れた原因について調べるために、少し前にタクミはベルトを乾に預けていた。

 

 

「実は昨日、サイガや傭兵どもに位置がバレた理由が分かった。原因は……」

 

「コレね」

 

 

ジェーンは小さい袋に入ったチップをタクミに見せた。

 

 

「……? なんすかコレ」

 

「これは治安局で取り扱っている専用のGPS小型チップよ。前にパールマンの身体に埋め込まれていたのと、同じ種類なの」

 

「!」

 

 

元次期総監であるブリンガーはかつて、逃走したパールマンの位置を把握するため、予め彼のうなじにGPSタグが付いた小型チップを埋め込んだ事がある。

 

それと同じものが、ファイズドライバーに入っていたのだ。

 

 

「最初これが見つかった時、どこで作られたものかが分からなくてな。それでツテに頼んで調べて貰ったんだが……そのツテってのが──」

 

「…………ふふ♪」

 

「……」

 

 

……なんとなくジェーンと乾が一緒にいる訳が分かった気がする。

 

 

「……って事はやっぱり、ブリンガーとサイガは繋がってたって事ですか?」

 

「そう考えるのが妥当だろうな。ただ、不審な点もある。ベルトにチップが埋め込まれたのは多分、俺がホロウでベルトを拾う前のことだ」

 

 

もしチップを埋め込んだのがブリンガー、もしくはブリンガーの協力者なのだとしたら、埋め込んだ後そのままホロウにベルトを放置していた事になる。

 

 

「──サイガ達はベルトを狙っていた。もしソイツらが俺より先にベルトを見つけていたのなら、わざわざチップを埋め込むなんて真似をするはずがねぇ」

 

「……つまり、誰かが拾うのを待ってたって事ですか?」

 

「その可能性が高い。アイツらの狙いがベルトじゃなく、ベルトを着けて変身した人間──つまりお前の事だったとしたら、チップを埋める行動も辻褄が合うからな」

 

「……!」

 

 

確かにあの時サイガは、ベルトを奪うだけでなくタクミの事も攫おうとしていた。

 

乾の横槍のおかげでなんとか助かりはしたが……それが無かったら、何をされていたか分からない。

 

乾はタクミにファイズギアのアタッシュケースを渡す。代わりに、タクミが持っていたアタッシュケースを手に取った。

 

タクミはそれをリュックに入れる。

 

 

「カイザやデルタのベルトにも、多分チップが埋め込まれてるはずだ。もし何か分かったら、こっちから連絡をよこす」

 

「それにベルトからチップを取り除いたって言っても、たっくん自身が安全になったわけじゃないわ。くれぐれも気をつけてちょうだいね」

 

「あ、はい」

 

「それじゃアタイはこれで。店長ちゃんにもよろしくね〜」

 

 

タクミはジェーン達と別れた後、少し考え込む。

 

 

(……サイガの目的、か)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用事も済ませ、ビデオ屋に帰ろうと歩を進めた時、HIAセンターの前で何やら行列が出来ていることに気付く。

 

その中に、よく見知った顔がいた。その見知った顔はタクミを見るなり大きく手を振る。

 

ただ彼女の隣にいた男は、見覚えがなかった。

 

 

「タクミ!」

 

「ここで会うなんて奇遇だな──えっと……そっちの人は姉ちゃんの知り合いか?」

 

 

リンの隣にいたのは、濃紺のシャツを着た長身の男性。金髪のロングヘアーで、両目がそれぞれ異なる色をしていた。所謂オッドアイだ。

 

 

「……失礼だが、君が店長くんのご兄弟かね?」

 

「? そうですけど、あなたは……」

 

「俺の名はヒューゴ。しがない収集家の一人だ……実は今、偶然にも店長くんと君の事について話していた所でね。噂をすればなんとやら、と言うやつだ」

 

「はあ……」

 

 

あくまで第一印象ではあるが、なんとなく底が見えない人だとタクミは感じた。

 

 

「……この行列は?」

 

「ヒューゴさんが言うには、近いうちにオークションが開催されるんだって。今やってるのはそれの宣伝兼抽選会なの」

 

「……? オークション? もしかして参加するのか?」

 

「いやいや、出るつもりは無いよ? ただヒューゴさんの話を聞いて、抽選会で運試しするぐらいは良いかなって思っただけ」

 

 

どうやらリンとヒューゴは、抽選券を引くために列に並んでいるらしい。

 

 

「ヒューゴさんはオークションに参加するんすか?」

 

「そうしたい……と、思っている。なんでもそのオークションには、収集家垂涎の品々が並ぶ予定なのだそうだ」

 

「へえ……」

 

 

新エリー都の中でも上澄み中の上澄みの上流階級による催し。庶民であるタクミ達には縁のない世界である。

 

 

「それでどうする? タクミも抽選会やる?」

 

「あー……いや、遠慮しとくよ。多分絶対当たんねぇから」

 

「……ま、そりゃそうだよね。タクミ、ジャンケンですら勝率1%とかだもんね」

 

「バカにすんな。にゃんきち長官にぐらいは勝てるわ」

 

「いやにゃんきち長官チョキ出せないじゃん……」

 

「イアスにも勝てるぞ」

 

「イアスそもそも指ないじゃん!」

 

「……随分と愉快な会話をしているな」

 

 

抽選会などやるだけ無駄である。

 

自身の不運っぷりを誰よりもよく知っているタクミは、抽選会には興味も示さず、別れを言うとそのまま六分街へと帰って行った。

 

その背中を見送るリンとヒューゴ。

 

 

「……君たちご姉弟は、とても仲が良いのだな」

 

「そうかな? 確かに結構仲良しって言われるかも。喧嘩もほとんどした事ないし」

 

「それは実に……素晴らしい事だ」

 

「?」




イアスにじゃんけんパネルを持たせたらタクミの勝率が1%以下になったらしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。