ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ハルトマン

 

 

 

 

 

その日の夕方、リンとタクミはヒューゴの言っていたルミナスクエアのガーデニングショップ『朝露』へと向かっていた。

 

ヒューゴからの頼みは、正直言って怪しさ満点ではあったが……彼の『危険な目に合わせない』という言葉を信じつつ、招待状のために行く事にした。

 

もしもの時は、専用アプリでFairyに救難信号を送るようアキラに釘を刺されている。

 

そして目的地に到着。呼び出した本人であるヒューゴは既に店前で待っていた。

 

 

「ご機嫌よう、店長くんと……おお、再び君に会えるとはな。タクミくん、で合っているかね?」

 

「合ってますよ」

 

 

ヒューゴは先程までいじっていたコインをしまい、何やらメモのようなものを取り出す。

 

メモに書かれているのは時間……だろうか。

 

 

「君とは色々と話したい事はあるが……あいにく時間がない。本題に入るとしよう。店長くん、前にレイヴンロック家の事について話したのを覚えているかね?」

 

「あ、はい」

 

(レイヴンロック家……)

 

 

タクミはその名前を聞いて思い出した。

 

かつてスマートブレインについて調べていた時、タクミはTOPSに関する記事やニュースも調べていたことがあった。

 

その際にレイヴンロック家の名前も知った。近年では内部抗争やら何やらでその影響力も勢いを失っていると聞いた。

 

 

「そのレイヴンロック家がどうしたんですか?」

 

「俺が頼みたいことはただ一つ、レイヴンロック家の当主であるハルトマンを追跡して欲しいのだ」

 

 

ヒューゴはメモをリンに渡す。

 

 

「これはハルトマンのスケジュールだ。それによれば今夜、誰かと会う予定なのだそうだ。君には彼らのやりとりの詳細を記録して欲しい」

 

「えっと……理由を聞いても?」

 

「おっと、それを先に話すべきだったな。これまで手に入れた情報によれば、レイヴンロック家は何やら良からぬ事を企んでるらしいのだ。そこで顔の知られていない君達にその良からぬ事についてハルトマンから情報を盗み出して欲しい、という訳だ」

 

「……バレたらヤバいやつっすかコレ」

 

「問題はない。君達はあくまで彼らの会話を『聞いてしまった』というテイを装えばいい。例え治安局を呼ばれようが、彼らにはどうする事もできまい」

 

 

ハルトマンとのやりとりの内容を知って、ヒューゴがどうするつもりなのかが気になるが、頼まれた以上何も言わずにやるしかない。

 

力仕事だったり、ホロウに入ったりするという訳でもないので、比較的危険度は低いはずだ。

 

 

「分かりました、任せてください!」

 

「感謝する。協力してくれた暁には、必ずオークションの招待状を手配すると約束しよう」

 

 

 

 

 

 

そうしてヒューゴと別れ、リンとタクミはハルトマンが現れるであろう路地裏でこっそり待つ。

 

そして数分もしないうちに、白い服と赤いサングラスをかけた、ハルトマンらしき男が現れた。

 

身を強ばらせながらも、リンはハルトマンの話し声に耳をすませる。

 

タクミは尾行がバレないよう、辺りにくまなく気を配る。

 

喧騒のない夜のルミナスクエア。あまりにも静かだからか、やけに耳が冴えた。

 

 

「…………ごくり」

 

 

リンはその会話の内容を一言一句聞き漏らさず記録した……が、何の話をしているのか分からない部分もあった。

 

ひとまず分かったのは、何やら開発中の薬品がある事と、レイヴンロック家はTOPS内部で再び頂点に返り咲こうと画策している事。

 

まあ、分かろうが分かるまいが二人には関係の無い事だろう。聞いた内容をそのまま全てヒューゴに伝えればいいだけだと割り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、アキラとタクミはヒューゴと情報交換しに行ったリンの帰りを待っていた。

 

順当に行けば、リンは三枚の招待状を持って家に帰ってくるはずだ。

 

 

「……それにしても、ヒューゴさんってTOPSと何の関わりがあるんだ?」

 

「どうやら彼曰く、収集家である以上レイヴンロック家のような上流階級と関わるのもそう少なくはないらしい。とは言え彼がどうしてハルトマンの会話の内容を知りたがるのかは謎だけれどね……」

 

 

工房でそんな会話をしていると、ドアが開く音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「招待状ーっ!!」

 

「お客さん店内で大声を出すのはお控え頂けると……」

 

「いや私店長だから!」

 

 

店に入るなり何かを叫ぶのは最近のリンのルーティンなのか。客がいたらどうするのかとツッコみたい気分だ。

 

 

「おかえり、リン。その様子だとどうやらちゃんと招待状は貰えたみたいだね」

 

「うん、ちゃんとヒューゴさんから三通貰ったよ!」

 

 

リンは三通の招待状を二人に見せる。確かにオークションの招待状だ。

 

何やらほんのり良い香りがする気がしなくもない。

 

 

「ヒューゴさん、よく三通も手に入れたな……市長さん達は手こずってるって聞いてたけど」

 

「一通は元々ヒューゴさん宛のやつで譲ってもらったの。もう二通は……なんか色々複雑な手段を使ったんだって」

 

「複雑な手段ってなんだ……」

 

 

何はともあれ、招待状は手に入れた。その手段とやらは気にしない事にする。

 

 

「あ……そうだ、お兄ちゃん、タクミ。私がヒューゴさんから招待状を貰った事、誰にも言わないでね? 市長さんやライカンさんにも」

 

「うん? それはまたどうしてだい?」

 

「よく分かんないんだけど……もしバラしちゃったら、ヒューゴさんが八つ裂きにされる……みたいな」

 

「……今更だけど、このオークションって出席しても大丈夫なやつなんだよな?」

 

「…………多分」

 

 

上流階級の世界は実はアウトロー寄りなのではないかと勘ぐっていると、再びドアの開く音が聞こえる。

 

 

「プロキシ様、いらっしゃいますでしょうか?」

 

「あ、ライカンさん!」

 

 

リンが出迎える。店内にはライカンが待っていた。

 

どうやら帰る途中にリンがライカンに『招待状を手に入れた』と連絡をしたらしい。

 

 

「再びお会いできて光栄でございます。早速で申し訳ありませんが……貴方様が手に入れたという招待状を、私にもお見せいただけますでしょうか?」

 

「いいよ」

 

 

リンはライカンに招待状を手渡す。招待状を見たライカンは何やら眉をひそめた。

 

 

「……リン様、私の見間違いでなければ、この招待状の出所はTOPSのようですが……貴方様はTOPSともご縁があったのでしょうか?」

 

「うーん、私がって言うより私の友達がかな? TOPSにコネがある友達なんだよね」

 

 

もちろん嘘である。ライカンには悪いが、ヒューゴが八つ裂きにされるのは避けたいので招待状の本当の出所は伏せておく。

 

 

「……なるほど、ご友人でしたか。それは失礼いたしました」

 

「ううん、気にしないで。ともかく招待状は無事手に入ったし大丈夫!」

 

「ええ。見たところ偽物という訳でもありませんでしたし、出席するにあたって差し障りが生じる事はないかと存じます」

 

「それを聞いて安心したよ。ありがとね、わざわざ来てくれて」

 

「滅相もございません。それでは、私はこれにて失礼致します。オークションでお会いしましょう」

 

 

ライカンは一礼すると店を後にした……ほんのわずかな疑念の表情を顔に浮かべながら。

 

 

「ヒューゴさんの為とはいえ、ちょっと心が痛むなぁ……ライカンさんには悪い事しちゃったかも」

 

「……それは俺も思うけど、しょうがねーよ。今はオークションに備えるしかない」

 

 

タクミの言う通り、もう数日もしないうちにオークションが行われる。

 

そこでサクリファイスのコアが埋め込まれた品を落札さえすればこちらのものだ。

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