『ブリンガーの遺物の場所を突き止めたのです』
次の日の早朝、リンのスマホにビビアンからメッセージが届いた。
ブリンガーの遺物、彼女曰くどうやら郊外のホロウに隠されているのだとか。
という訳でブレイズウッドで現地集合と連絡を受けたので準備をする。
しかし、タクミは現在とある問題にぶつかっている。それはファイズのベルトを持っていくべきかどうかという問題。
『パエトーン』の身バレ問題を抜きにしても、ビビアンの前でファイズに変身してしまったら、郊外よろしく一対一の決闘となってしまうことは恐らく避けられない。
(要はファイズじゃなけりゃいいんだけど……カイザとデルタのベルトは乾さんとこにあるしなぁ……)
今から連絡しても出発までには間に合わないだろう。どうしたものかと頭を悩ませていると、スマホからノックノックの通知音が鳴る。
「……? 誰からだ──って、ヒューゴさん!?」
タクミは慌ててノックノックのアプリを開く。
《ご機嫌よう、タクミくん》
《突然の連絡、失礼する》
ホロウでコアの件で一悶着があったにも関わらず、普通に連絡してきた。かなり図太い神経の持ち主だ。
……関心している場合では無い。コアがどこにあるのか、そもそも今ヒューゴがどこにいるのかを問いたださなければならない。
そう思っていた矢先に、ヒューゴから再びメッセージが送られる。
《君の言わんとすることは分かる。だがいずれ、全てが分かる時が来るだろう》
《どうかその時まで、何も聞かないで頂けると助かるのだが》
「…………」
〔……じゃあなんの用でDM送ったんすか?〕
《その事だが……ホロウではライカンが迷惑をかけてしまったな。このヒューゴ、謹んでお詫び申し上げる》
《ライカンとはほぼ断ち切れたと言ってもいい関係とはいえ、奴の不手際は元関係者である俺にも責任の一端があると言える》
《そのお詫びとして、俺からプレゼントを送らせてもらった》
(……贈り物?)
何の話かと返信する前に、リンが部屋のドアを開ける。
「タクミ〜」
「? なんだ?」
「なんかタクミ宛に荷物だって。もうすぐ出発だし、さっさと開けちゃって〜」
「あ、ああ」
リンに渡されたのはアタッシュケースサイズのダンボール。リンが部屋を出たあと、タクミはそのダンボールを開封した。
「…………え?」
タクミはダンボールの中に入っていたものを見て、驚愕した。
赤色のベルト帯。銅色の外枠で囲まれたバックル。
そしてそのバックルには──『スマートブレイン』のロゴが彫られていた。
見たことの無いベルト。ヒューゴから再びメッセージが送られる。
《それは『スマートバックル』という名の代物だ》
《これがどう言った使われ方をするのか……君ならば理解できるだろう》
《気に入って頂けたら収集家冥利に尽きるというものだ》
タクミはヒューゴのメッセージを見た後、彼が送ってきた『スマートバックル』とやらを見る。
これも恐らくファイズやカイザと同じく変身ベルトの類なのだろう。
〔ヒューゴさん、どこでこんなものを?〕
《今しがた言った通り、俺は収集家なのだ》
《それの入手経路は大っぴらに言えるものではないが……》
《君が懸念するほど程のことでは無い、安心してくれたまえ》
〔……とりあえず、ありがとうございます〕
ヒューゴがどのようにしてスマートバックルを手に入れたのかは気になるが、とりあえずこれで心配事はなくなった。
郊外には、このスマートバックルを持っていけばいい。
《それともう一つ》
《そのスマートバックルの強化スーツの事だが……》
《君が普段変身しているファイズと比べれば、全体的な性能は著しく劣る》
《だが、少なくとも今の君にとっては役に立つはずだ》
(『今の君』……? どういう事だ?)
確かに、ビビアンと行動する際にファイズに変身することはできないので、どうするかと悩んではいた。
だがちょうどそのタイミングで、ヒューゴがその問題を解決する物を送ってきたのだ。
ファイズの事もさることながら、ヒューゴはそんな事まで知っているのか。
(……まあ、今考えても仕方ないか)
問題が解決してくれたヒューゴに感謝しつつ、タクミは出発の準備を進めた。
───────────────────────
そしてやってきたブレイズウッド。ビビアンはまだここへは来ていないようだ。
代わりに、意外な人物と出会った。
「リン先生? それにタクミも……」
「お二人もブレイズウッドにいらしたんですね」
そこにいたのはアンビーとトリガー。
アンビーの方は、なぜかシルバー小隊の制服を身にまとっていた。
「……アンビー。お前がその服を着てるって事は……」
「ええ。この間の件で、黒幕の情報を提供してくれる人が現れたの。それにあたって、提供者に素性を証明する為にこの服を着てる。……それ以外では特に意味は無いわ。もう終わったことだから」
「……そうか」
「私は彼女の助力になるべく、同行しています。黒幕を突き止めたいという気持ちは、私も同じですから」
「……二人はどうしてここに?」
「あ、うん、それはね──」
「お待たせしたのです、プロキシさん」
リンがここへ来た理由を説明しようとしたタイミングで、ちょうどビビアンがやってきた。
「……? リンさん、こちらの方は……?」
「この子はビビアン、私の友達だよ。ここで一緒に調査したい事があって来たんだ」
「なるほど、そうでしたか」
「調査って、ホロウに? でも先生、あなたは生身じゃ──」
「あー、えっとね? 今日はすこぶる調子が良いからさ! たまには生身で入るのも良いかなって!」
「……そう。でも注意して。いくら一緒にファイズが──」
「あーーーーーー」
急に大声を出すタクミ。
「……どうかしたの、タクミ。急に大声を出して」
「いやなんでも。それよりアンビー、トリガーさん。ちょっといいすか?」
タクミは二人と一緒に建物の裏へと移動する。
「……? 彼らは何を話しているのですか?」
「た、多分そんな大した話じゃないんじゃないかな? それよりもほら、今日の目的のおさらいでもしよ?」
「……分かりましたが、念の為言っておくのです。協力関係な以上、隠し事は控えて欲しいのです」
「わ、分かってるって!」
タクミはビビアンに聞こえない程度の声量で二人に事情を説明する。
少なくともアキラとリンがパエトーンだとバレるまでは、タクミがファイズだとバレてはいけない。
ならさっさと打ち明けてしまえばいいのでは?と思うだろうが、そうすると却ってビビアンの怒りを買ってしまう恐れがある。
故にビビアンにはどうにかして自分で気づいてもらうしかないのだ。
それを聞いたアンビーとトリガーは同情の気持ちを露わにする。
「……それは、なんと言うか……大変ですね。分かりました、私達の方からは何も言わないでおきます」
「でも、それならタクミも生身でホロウに入るって事になるんでしょう? ……エーテル活性の低いホロウだとしても、少し危険だと思うわ」
「それについては大丈夫だ。代替品があるから、それに変身する」
「代替品?」
タクミはリュックからスマートバックルを取り出し、装着する。
「変身」
そして『スマートブレイン』のロゴが彫られたバックル部分を90度横へ傾け──
[Complete]
聞き慣れた音声と共に、タクミは光に包まれ──ライオトルーパーへと変身した。
「……ま、こんな感じだ。ファイズ程では無いけど、この姿もそこそこ強いからさ」
「……このようなものを、一体どこで?」
「いやぁそれは言えないっつーか……そもそも知らないっつーか……」
「?」