アンビーとトリガーに手早く事情を説明した後、ビビアン達の所に戻ってきた。
早速ビビアンとホロウに出発しようと言う時、一人の女性がこちらへやって来た。
「……! 貴女はあの時の……!」
その姿を見て、ビビアン達は驚愕する。
彼女はなんとオークションの時に、ビビアンに品を競り落としてくれと頼んでいた女性だったのだ。
「あら、貴女は……まさかこんな場所でまた会えるとはね」
オークションの時とはまるで人が違う。どうしてここにいるのかと問おうとすると──
「──っ!! …………!!」
「? ビビアン?」
突然ビビアンが顔を背ける。その様子にタクミは眉をひそめる。
しばらくするとビビアンは顔を再びこちらに向ける。その眼は少し赤くなっていた。
「……どうしたんだ?」
「っ、いえ、なんでもないのです。砂埃が目に入っただけですから──それよりも、どうして貴女がここにいるのですか? まさか……」
「そう目くじらを立てないでよ。今日はここで待ち合わせをしてるだけだから」
それを聞いたアンビーは何かに気づいたような表情を浮かべる。
「……貴女はもしかして、シエナ? 情報提供者の……」
「あら? という事は貴女、シルバー小隊のアンビーね? それでそちらの方はオボルス小隊のトリガー、で合ってるわよね?」
どうやらアンビーとトリガーが待っていたのは、このシエナと言う女性だったようだ。
「お待ちしていました、シエナさん」
「それじゃあ早速、情報交換と行きましょ。失礼するわね」
「あ、はい」
そう言うとシエナ達は少し離れた場所に移動し、何かを相談し始めた。
「……ねぇビビアン、ホントに大丈夫? 顔色が悪いけど……」
「そ、それについては……あ、後で詳しく話すのです」
「そう?」
やはり彼女の様子がおかしいのは目にゴミが入ったなどというわけではないようだ。
とは言え、後で話すというのなら今は何も追求はしない方がいいだろう。
「……そういえばタクミ。調べによれば貴方は『戦える見習いプロキシ』と聞いたのですが……これは本当なのですか?」
「あー……うん、一応。それ用のベルトがあるから」
「ベルト?」
「ああ。コレなんだけど」
タクミはビビアンにスマートバックルのベルトを見せる。ビビアンはそれを見て眉をひそめた。
「……これ、どこかで見た事があるのです」
「え? それどこで──」
タクミが聞こうとしたその時に、ちょうどアンビー達がこちらへ戻ってきた。
「有益な情報をありがとう、シエナ」
「どういたしまして。それで、交換条件と言ってはなんだけど……少し頼みがあるの」
「頼み、ですか?」
「ええ。私を──」
「ホロウに連れて行って欲しいの」
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郊外のとあるホロウ。
シエナはアンビー達に、ホロウで失くした結婚指輪を探して欲しいと頼まれた。
ビビアン達は別の目的があるとは言え、急いでいるわけでもないので協力する事にした。
リンとビビアン、タクミとアンビーとトリガーで手分けして探す。
ただの物探しとはいえ、場所はホロウの中。当然エーテリアスも湧いてくるので、それらを片付けながら指輪を探していく。
「グォオオオ!!!」
「ふっ! はぁっ!!」
変身したライオトルーパーは、ハッキリ言ってファイズの何倍も弱かった。
それでもエーテリアスを叩きのめす程の力はある。
武器さえあれば、上級エーテリアスにも何とか食いつける……かもしれない。
「指輪、見つかりませんね……」
「タクミは見つかった?」
「いや、どこにも……」
かれこれ三十分弱、指輪を探しているのだが、それらしいものは見つからない。
シエナは『この辺りで失くした』と言っていたので、探せば見つかるはずなのだが……
「…………あ」
「見つかりましたか?」
「いや、違うなこれ……指輪は指輪だけど、なんか変な手のマークが……おもちゃだな、これ」
隅々まで探しても見つからない。一回シエナ本人に色々聞いた方が良いかもしれない。
そう思った時──
「タクミ!! 皆!!」
「姉ちゃん?」
ビビアンと一緒に指輪を探していたはずのリンがこちらに大声で呼びかけている。
その顔は、いつになく焦った表情だった。
「──シエナさんが……!!」
「!!」
タクミ達は状況を察し、急いでシエナの元へ行く。
しかし、彼女は既に息絶えた状態だった。
その遺体には、一滴の血も流れていない。殺された訳ではないようだ。
「……これ、は」
「どういう事だ……? さっきまで普通に喋ってただろ……?」
「…………」
「? ビビアン、どうしたの?」
「…………実は」
ビビアンはその重い口を開く。
「実はわたしは、こうなる事を最初から知っていたのです」
「知っていた……? どういう事?」
「……彼女は、重い病に侵されていました。もう一日も持たない命だったのです」
勿論、治そうと思えば治す事はできた。しかし、シエナは娘のために、治療を受けずにお金を残しておくことを決意。
そしてとある手段でレイヴンロック家のホロウ侵蝕保険に入り……そのホロウで死を迎えた。
仮にホロウに入る前から彼女の病気の事を知っていたとしても、未来が変わる事はなかっただろう。
彼女の遺体がホロウから持ち出されば、多額の保険金が娘の元へと入る。彼女は娘の未来のため、その命を犠牲にする事を選んだのだ。
「……理由は分かりました。でも、どうしてビビアンさんはその事が分かったのですか?」
「……見えるのです」
「見える?」
「はい。信じて貰えないかもしれませんが……わたしには小さい頃から、未来を予見する力があったのです」
しかし、見えるものは全て不幸な未来ばかり。そしてその予見は、必ずと言っていいほど当たる。
その未来が見えた時、ビビアンの目からは自分の意思に関わらず涙が零れてしまうのだそうだ。
「……ブレイズウッドでも、彼女の姿を見た時にその未来が見えました。あの時咄嗟に顔を逸らしたのは、そのせいなのです」
そう言うビビアンは、酷く悲しそうな顔をしていた。
その力のせいで、ビビアンは幼い頃から不幸の象徴として皆から蔑まれてきた。
「……その未来が見えたとして、わたしにはそれを変える術がない。ここにわたしを蔑んでいた人間がいたら、こう言うでしょう──『お前が彼女の死を呼び寄せたのだ』と」
「……」
「違うよ、ビビアン! それはビビアンのせいなんかじゃない!」
「プロキシ先生の言う通り。貴女は起こりうる災いや不幸を、ただ皆に知らせてただけ」
「……ずっと、苦しんできたんですね。心中、お察しします」
「みなさん……ありがとう。何はともあれ、今は彼女の冥福を祈りましょう。未来が見えていようがいまいが、この世の全ての不幸が……罪なき人に降りかからない事を願うばかりなのです」
ひとまず、ビビアン達はシエナの遺体をホロウから運び出すことにした。
「…………死を、呼び寄せる」
タクミはビビアンの話を聞き、
なんか過去編に続きそうな感じですが、タクミの過去が明らかになるのはまだ結構先です
いつ頃書くのかは未定です……すみませんorz
一応どういった過去なのかは既に決めています