ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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約束された幸せ

 

 

 

 

 

あの後、タクミ達はモッキンバードの二人とともにホロウを出て六分街へと帰ってきた。

 

 

「そうですヒューゴ、折角ビデオ屋に来たのですから、プロキ……店長さんに何か映画をオススメして頂いては?」

 

「そうしたいのは山々だがね……あいにく画廊の経営で忙しくてね。また今度の機会にさせて頂こう」

 

「へぇ〜、ヒューゴさん画廊の経営もやってるんだ?」

 

「諸事情から、社会的に都合の良い身分が入り用だったのだ……画廊のオーナーというのも、中々悪くないものだろう?」

 

「画廊の仕事があるなら止めませんが……ヒューゴ、貴方は最近とても忙しそうなのです。わたしに隠れて何かやっていませんよね?」

 

「……安心したまえ、特段気にするような事でもない。それでは諸君、俺はこれにて失礼する」

 

「……」

 

 

そう言ってヒューゴは六分街を後にした。その後ろ姿をタクミはしばらく見つめていた。

 

その時、ふとビビアンから声をかけられる。

 

 

「タクミ、今お時間はありますか?」

 

「? ああ、特にやる事はないけど……」

 

「でしたら、わたしと一緒にお散歩でも行きませんか?」

 

「え? 俺と?」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

突然タクミと散歩に行きたいと言い出したビビアン。

 

行き先は特に決めてないらしいので、二人でルミナスクエアまで行く事にした。

 

今回はあえてバイクは使わず徒歩で向かう。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

散歩に行こうと言い出したのはビビアンだが、当の本人は特に何か喋ろうともせず、ただひたすら何か考え込んでいるようだった。

 

仕方ないのでタクミから話題を切り出す。

 

 

「……なあ、ビビアン」

 

「どうしたのですか?」

 

「いや……その、前から気になってたんだけどさ。初めて会った時、兄ちゃんと姉ちゃんの事を『運命の人』って言ってたよな」

 

「う゛っ」

 

 

ビビアンは突然呻き声を上げる。そしてタクミを『その話題を出してくるのか』と言った目で見る。

 

 

「あ……あれは、ヒューゴが彼らが腕達者なプロキシであると言っていたからなのです! オークション時から、あのお二人とは手を組みたいと思っていましたから!」

 

「へぇ、二人がプロキシだって知ってたのはヒューゴさんに教えてもらったからなのか?」

 

「ちゃ、ちゃんと自分で調べた情報だってあるのです」

 

 

アキラとリンがパエトーンで、タクミがファイズだと知らないのは、ヒューゴがその事をビビアンに伝えていないからだった。

 

タクミが見習いプロキシだと勘違いされてるのも恐らくそのせいだろう。

 

 

 

辺りも日が暮れた頃。二人はルミナスクエアに到着した。

 

……しかし、特にこれと言って行く場所は決めていない。二人は適当に自販機でジュースを買う。

 

その後、川辺の公園へと訪れた。

 

 

「……タクミ、今日はありがとうございました」

 

「ん?」

 

「その……貴方やリンさんが、この力を──わたしが呪いだと思っていた力を、肯定してくれて……とても嬉しかったのです」

 

「……ビビアン」

 

「貴方達に出会えて本当に良かったと、心からそう思いました」

 

 

そう言うとビビアンは優しく微笑む。

 

幼い頃から『呪いを振りまく子供』だと蔑まれながらも、不幸な人々の運命を変えるべく奔走したが、それでも運命を変えることは出来なかった。

 

何度も心が折れかけた事は容易に想像がつく。それでもビビアンは諦めず、こうしてここまでやって来た。

 

『パエトーン様への愛』のおかげだと彼女は言っていたが、彼女自身の心の強さも一因としてある。

 

そんな彼女を、タクミは心から尊敬して──

 

 

 

 

「それはそれとして」

 

 

ん???

 

 

「タクミ、少しこの動画を見て欲しいのです」

 

 

そう言ってビビアンはスマホをタクミに見せる。

 

動画に写っているのは──エーテリアスと戦うファイズの姿だった。

 

動画の中で、ファイズはいつものようにエーテリアスを殴ったり蹴飛ばしたりしている。

 

いつの動画だろうか。画角からして、恐らくホロウにあった監視カメラの映像なのだろうが……

 

 

「これはインターノットにあげられていた動画なのです。お姿は見えませんが、恐らくパエトーン様も傍におられるはずです」

 

「はい」

 

 

何を言わんとしているのか、ビビアンの意図が読めない。心なしか先程と比べ空気がガラッと変わった気がする。主に悪い方向へと。

 

というか、猛烈に嫌な予感がする。

 

 

「今日、貴方を誘ったのはこうしてお礼を言う為でもありましたが……本当の目的は別にあるのです」

 

「はい」

 

「単刀直入に聞くのです、タクミ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が、ファイズですね?」

 

 

 

 

嗚呼。

 

 

 

 

 

「…………なんでそう思ったのか聞いても?」

 

「今日、ホロウで貴方の戦う姿を見て何度か既視感を覚えました。ホロウを出るまでその既視感の正体は分かりませんでしたが……ビデオ屋に到着した時、思い出したのです」

 

「……」

 

「あの戦い方……先程お見せした動画でのファイズの戦い方とそっくりだったのです。細かな仕草や攻撃のしかた……その全てが合致していたのです」

 

「…………」

 

 

完全に意識の外だった。

 

カモフラージュするなら、もっと戦い方を意識すべきだったのだ。

 

しかし、今後悔してももう遅い。もうビビアンは確信の域に入っている。誤魔化しようがない。

 

 

「答えて欲しいのです。やはり貴方は、本当にファイズなのですね?」

 

「…………ビビアン」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決闘の件なんですけど今ベルト持ってきてないのでまた日を改めさせて頂けると──」

 

「ちょっと待ってくださいそれは誤解なのです」

 

 

急に頭を下げてきたタクミにビビアンは慌てて釈明する。

 

 

「決闘っていうのは……その、いわゆる言葉の綾と言うやつなのです。ほ、本当に決闘する訳ないじゃないですか」

 

「……本当か? あん時のビビアンの目、結構マジだったっつーか……」

 

「そ、それは! パエトーン様のお隣に立ちたいという気持ちが思わず前に出てしまったというか……とにかく! 敵意はこれっぽっちもないのです!」

 

「……本当に?」

 

「本当なのです! むしろ、わたしは貴方がファイズで良かったとさえ思っているぐらいですから」

 

「そうか……」

 

 

それを聞いてタクミは胸を撫で下ろす。とりあえず危機は去った、ということで良いのだろうか。

 

 

「それにしても、モッキンバードの情報網をくぐり抜けてその正体を隠し通すなんて……ただ者ではありませんね。流石、パエトーン様の右腕なだけの事はあるのです」

 

「へ? いや、別にそれは──」

 

「それよりも!!」

 

「おわあ!?」

 

 

急に掴みかかってくるのはやめて欲しい。本当に敵意は無いのかと勘ぐってしまう。

 

 

「貴方がファイズ……という事は! パエトーン様ともよく知る仲だという事ですよね! ここからが本題なのです!! パエトーン様が今どこにいらっしゃるか、分かりますか!?」

 

「っ、パエトーン……が?」

 

 

鼻息を荒くしてこちらに詰め寄るビビアン。

 

ファイズの正体が分かったのなら、てっきりパエトーンの正体も分かったものだと思っていたが……

 

 

(そうか……俺とパエトーンは実は血が繋がってます、なんて普通思わないよな)

 

 

タクミとしては別にパエトーンが誰なのかを明かしてしまっても良いのだが……

 

本当に良いのだろうか。

 

ビビアンは今日ずっと推しと一緒にいたという事を知ることになる。

 

果たして平静でいられるのだろうか。

 

まあ遅かれ早かれ、長期的な協力関係を結んだ以上、バレるのは時間の問題だろう。

 

 

 

「……ビビアン」

 

「はいなのです!」

 

「その、もう夜遅いからさ。俺が今から何言っても大きい声とか出すなよ」

 

「はいなのです!」

 

「よし、実はパエトーンはな──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の早朝、ビデオ屋にて。

 

 

「……あ、ビビアンおはよ!」

 

「もう来ていたんだね、待たせてしまって──」

 

「おはようございます、パエトーン様♡」

 

「「!?!?」」

 

 

恐らく興奮で眠れなかったであろうビビアンが、目の下にクマをこさえながらも、飛びきりの笑顔でリン達を待っていた。

 

 

(……バラすタイミング、もうちょい後の方が良かったかもな……)

 

 

タクミはそんなビビアンを見て、眉間を押さえた。

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