ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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休眠体

 

 

 

 

 

協力を持ちかけてきた市長の要望はただ一つ。それはバレエツインズのホロウにあるサクリファイスの休眠体の回収。

 

 

かつて讃頌会を仕切っていた、今は亡きランドンという男が作っていたサクリファイスの試作品。

 

それが隠されている場所がブリンガーの地図を調査したところ判明したらしい。

 

ハルトマンはランドンの部下と密かに連絡を取り、サクリファイスの製造を援助しているのだろうと市長は推測した。

 

 

この要望に対しビビアンは最初、あまりいい顔はしなかった。彼女は『協力を申し出るなら、それなりの誠意を見せるべき』だと言った。

 

それに対し市長は、とある事を明かす。

 

なんと、ハルトマンがヒューゴを『殺害』したという情報を拡散したのは市長自身だと言ったのだ。

 

ヒューゴの名誉回復の為、そしてTOPSとレイヴンロック家の距離を離すための世論誘導。それが市長の"誠意"だった。

 

それを聞いたビビアンは、少なくとも協力するには値するだろうと判断し、この要望を受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして休眠体回収の為、ホロウへと入ったリン、ビビアン、そしてファイズ。

 

市長が共有してくれた座標を元に探し出す。ちなみに、ライカンは私用のため今回は同行しない。

 

 

「うーん……」

 

「どうした姉ちゃん」

 

「さっき市長さんが話してた特殊調査員の人ってどんな人なのかなぁって」

 

 

市長の知り合いであるその人物が行っている事と、アキラとリンか師事していたカローレが行っていた研究は、共通点があると言う。

 

話を聞く中で驚いたのが、なんとその人物はあの『虚狩り』に並ぶほどの実力を持っているらしいという事。

 

 

「雅さんレベルか……それ聞いただけで強いって分かるよな」

 

「確かに話を聞く限り只者ではありませんが……それでもパエトーン様の足元には及ばないのです! なんたってパエトーン様ですから!」

 

「ぶれねーなお前」

 

「あはは……」

 

 

そもそも比較する実力のジャンルが違うということは黙っておくべきだろうか。

 

 

「──そろそろかな。二人とも、一つ目の座標の場所に着いたよ」

 

 

リン達はサクリファイスの休眠体があるという部屋にたどり着いた。しかし……

 

 

「……? サクリファイスはどこだ? それっぽいのは何処にもないな」

 

「あれ……? でもブリンガーの地図には確かにここだって……」

 

「……まさか、既に持ち去られてしまったのでしょうか。()()は既に、市長が捜査の手を伸ばしている事に気づいて……?」

 

「え、()()? 誰の事だ?」

 

 

タクミにそう聞かれ、ハッとした表情を浮かべるビビアン。

 

 

「え、えと……『彼女』と言うのは、讃頌会のメンバーの事なのです。その子とわたしは以前、少なからず関わりがありました」

 

「! 讃頌会の人と?」

 

「はい。その……言い訳がましいですが、決してお二人に隠し事をしたかった訳では無いのです……ただ、わたしにとって彼女と関わっていた過去は、あまり良いものではなく……」

 

 

気まずそうにビビアンはそう言う。

 

彼女に悪気が無いのは見れば分かる。人には誰しもそういう過去があるものだという事は、タクミもリンもよく知っている。

 

リンはビビアンの頭を優しく撫でる。

 

 

「大丈夫だよビビアン。話すのは今じゃなくても大丈夫。ビビアンが話したいと思ったタイミングでいいからね」

 

「…………」

 

「……ビビアン?」

 

 

「パパッ、パエトーン様にッ、頭を撫でられなでなでなでナデナデナデナデナデナデ

 

「うわぁ!? ビビアンがショートしてる!!」

 

「え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十秒後、なんとか落ち着きを取り戻したビビアン。

 

パエトーンと同じ空間にいる幸福に適応したのか、以前よりも落ち着くのが早かった。

 

 

 

「びっくりしたぁ……」

 

「ふぅ……先程はお騒がせしてしまったのです。気を取り直して、残りのサクリファイスがあると言う場所へ向かいましょう」

 

 

この後も地図の座標を参考に、いくつかの場所を回ったが……いずれの場所でもサクリファイスの休眠体が見つかる事はなかった。

 

引き続き、残りの場所へ向かう。

 

 

『マスター。目的のエリアに生体反応を検出しました』

 

「!!」

 

「恐らく何者かがサクリファイスを持ち出そうとしています。急ぐのです!」

 

 

手遅れになる前に、ビビアン達はその場所へ急いで駆けつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、サクリファイスはどういう訳か既に破壊されていた。

 

そしてそこにいた人物を見て、ビビアンは驚愕の表情を浮かべた。

 

 

 

「……カミエル姉様? どうして貴女が……!」

 

「……ビビアン。やはりこの件を嗅ぎ回っていたのは貴女でしたか」

 

(姉様? まさか……)

 

 

目の前にいるこのカミエルと呼ばれる女性は、讃頌会の人間なのだろうか。

 

カミエルはビビアンを冷たい目で見る。

 

 

「そのような呼び方は不要です。貴女と私の歩む道は、とっくの昔に分かたれているのですから」

 

「どうしてなのですか……? ランドンが何をしたか、忘れた訳ではないでしょう!?」

 

「…………」

 

 

カミエルはビビアンの言葉にしばらく押し黙った後、再びビビアンを見る。先程よりも冷たく、突き放すような目で。

 

 

「……ビビアン、これ以上この件に関わるのはやめなさい。彼女は──貴女をとても憎んでいる」

 

「……っ、カミエル!」

 

 

ビビアンが止める間もなく、カミエルは煙幕弾と共に姿を消した。

 

そして煙幕弾の音におびき寄せられてか、エーテリアスの群れが現れる。

 

 

「パエトーン様! わたしの近くに!」

 

 

ビビアンはリンを守りつつ、大量の下級エーテリアスと応戦する。

 

ファイズも助太刀しようとするが、目の前に現れたデュラハンに足止めされてしまう。

 

 

「……! 邪魔だ!」

 

 

ファイズは盾を構えたデュラハンにもなりふり構わず、ひたすら乱暴に殴り続ける。

 

そして殴り飛ばした後手首をスナップさせ、ファイズポインターをセット。

 

 

[Ready]

 

[Exceed Charge]

 

 

ファイズフォンのENTERキーを押し、膝に手をかけて姿勢を低くする。チャージ完了後にファイズは走り出し、大きく飛び上がって──

 

 

「はぁぁぁあああっ!!」

 

 

怯んだデュラハンに向けてクリムゾンスマッシュをお見舞いした。

 

その後、『Φ』のマークを浮かべて消滅するデュラハンを横目にリン達の元へ向かう。

 

 

「姉ちゃん、大丈夫か!」

 

「わ、私はビビアンのおかげで大丈夫。でも、サクリファイスは……」

 

「他の場所にも全くないようなのです。ここはひとまずホロウを出て、今後の行動について話し合いましょう」

 

「そうだな……」

 

 

と、その時電話の着信音が鳴る。アキラからだ。

 

 

「もしもし、お兄ちゃん?」

 

『もしもし? 三人とも、随分遅かったじゃないか。何かトラブルでもあったのかい?』

 

「実は……殆どのサクリファイスは既に讃頌会の人間によって処分されていたのです。おまけに、その人物はわたしのかつての知り合いでもありました」

 

「私とタクミも確かに見たよ。なんで讃頌会の人がそんな事をしてたかは全然分かんないけど……」

 

「ランドン亡き後、カミエルはてっきり讃頌会を離れたと思っていましたが……まさか残る事を選ぶなんて……」

 

『え……讃頌会の人間が、かい? 一体どういう事なんだ? というよりビビアン、随分と讃頌会に詳しいようだけれど……』

 

「……実は幼い頃、讃頌会に身を寄せていた事があるのです」

 

「……!」

 

 

ビビアン曰く、ランドンはヤヌス区の讃頌会内部にて、尊敬を集める人物だったらしい。

 

ランドン亡き後は、ビビアンは讃頌会を離れたらしいが……

 

 

「ヤヌス区でサクリファイスが現れたと聞いた時、かつてサクリファイスを生み出す為に多くの命が犠牲となったのを知っている身としては、このままではいけないと思いました」

 

 

同じ悲劇を繰り返してはいけない。

 

そう思ったビビアンはヒューゴに頼み、まずはサクリファイスのコアから調査をしてもらう事にしたのだそうだ。

 

 

『……そんな事があったのか』

 

「あ、待ってください! 今はまだ慰めの時ではないのです。今ある問題を片付けた時……改めてパエトーン様によしよししてもらいますので!」

 

「さっきされただろ」

 

「タクミ??」

 

「すいません」




白状します、限界化しているビビアンを書くのが楽しい
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