ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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裏では

 

 

 

 

 

ホロウを出る前、ビビアンからとある事を聞いた。

 

それは、レイヴンロック家が仕切る鉱区にて起こった、多くの犠牲者が出たという事故について。

 

この事故はレイヴンロックが支払った基準を大きく超える賠償金により、公になる事は無かったのだが……一つだけ不審点がある。

 

それは、何故右肩下がりであるレイヴンロック家の財政状況で事故を揉み消せる程の大金を支払えたのか、という事だ。

 

ビビアンは古い友人達にその事について聞くため、リンと二人でルミナスクエアへと向かった。

 

 

 

 

そして彼女からの吉報を待つため、ベッドで横になるタクミ。

 

やる事がない。タクミはスマホを開き、ノックノックの画面を見る。

 

液晶の中にある『ヒューゴ』の文字。それを見てタクミはとある日の夜の()()のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休眠体を探しにホロウへ入る前の日の夜。タクミの元に一本の電話がかかってきた。

 

着信画面を見たタクミは怪訝な顔をし、音を立てないよう店の外へ出た後、電話に出た。

 

 

「もしもし」

 

『ご機嫌よう、タクミ君。実に数日ぶりだな』

 

「…………」

 

『どうかしたのかね? 君の友人が奇跡の生還を果たしたと言うのに、沈黙とは』

 

「……茶番は間に合ってますから。それよりも色々と説明して欲しいんですけど」

 

『まるでライカンのような反応をするではないか。折角の再会だ、もっとゆっくり語らおうではないか』

 

「冗談はやめてください。こっちは()()()()()()()()()()()()()から、何の事情も聞いてないんですから」

 

 

そう、あの時バレエツインズでエーテリアスによる奇襲からファイズを救ったのは、他でもないヒューゴだったのだ。

 

……しかし、ヒューゴはファイズを助けた後、即行で煙幕弾で姿を消してしまい、何も聞けずじまいだったのだ。

 

その時のヒューゴの切羽詰まった表情を見るに、恐らくのっぴきならない事情があったのだろう。

 

そう考えたタクミは今この時まで、誰にもヒューゴが生きていた事を言わないでいた。

 

 

『ハハハ……確かに、かく言う俺もそこまで時間が残されている訳ではない。早速本題へ移りたい所だが……その前に前提として君に伝えたい事がある』

 

「前提?」

 

『ああ。先に言ってしまえば、俺はとある計画の為に君たちを"裏切る"演技をした。無論、ライカンも共犯だ。そして元より、この計画に君を巻き込むつもりは無かった』

 

「この電話も、本当はするつもりは無かったって事ですか?」

 

『ああ。当初は俺とライカンでこの計画を進めるつもりだったのだが……想定外の事態が起きた』

 

「想定外って……もしかして俺の足元にエーテルの裂け目が現れたことですか?」

 

『ご明察だ。さすがは店長くんの弟だな』

 

 

ヒューゴは自身の計画を進めるにあたり、リン達の安全を確保するため、裏切る演技をして彼女らをモッキンバードから一時的に切り離そうとした。

 

しかし、突然ハルトマンが行った合図のタイミングでエーテルの裂け目が出現、それによりファイズが行方不明となってしまった。

 

 

『……あの時は流石に肝が冷えた。あれで君の身に何かあっては本末転倒だからな。あの後はライカンが俺を"殺した"タイミングで急いで君の救助へと向かった、という訳だ』

 

「あん時のヒューゴさんが血塗れだったのはそういう事だったのか……そういえば、ハルトマンの奴はなんで裂け目を出せたんだ?」

 

『それは俺にも皆目見当がつかん。あの時のハルトマンの行動はあまりにも唐突で、不可解なものだった。突然人が変わったかのようにすら思えた程だ』

 

 

バレエツインズのホロウ内部の変化パターンを完全に熟知していれば、あのような芸当もできなくは無いのかもしれないが……

 

プロキシですらないハルトマンにそのような事が出来るはずもない。

 

もしかしたら、彼が繋がっている讃頌会やサクリファイスと何か関係があるのかもしれない。

 

 

『……君が出くわしたドッペルゲンガー然り、これらの事についてだけは俺も詳しくは分かりかねる。ビビアン達と共に行動する際は、くれぐれも用心してくれたまえ』

 

「……分かりました」

 

『さて……俺から話すべき事はこれで全てだ。これから先はしばらく連絡も取れなくなるだろう』

 

「いやちょっと待ってください、肝心なとこ話してないですよ……ヒューゴさんの『計画』って一体なんなんですか?」

 

『それについては、すまないが答える事はできん。先程も言った通り、君を巻き込むつもりは無いからだ。だが、君たちを本当に裏切ったつもりはない……これだけは伝えておこう』

 

「……そうですか」

 

『それでは、俺はこれにて失礼する。ビビアンをどうかよろしく頼む──いい夜を』

 

 

その言葉を最後に、ヒューゴは電話を切った。

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ以来、ヒューゴからはなんの連絡も来ていない。試しにこちらからメッセージを送っても、既読すらつかない。

 

 

(……計画、か。ヒューゴさん、何をするつもりなんだ……?)

 

 

その時、部屋のドアが開く。

 

 

「タクミ、少しいいかい?」

 

「兄ちゃん。どうかしたか?」

 

「さっきライカンさんから連絡があってね。レイヴンロック家が揉み消した例の事件の被害者を、ルミナスクエアでリン達が保護したらしい」

 

「保護? 生存者って事か?」

 

「その事なんだけどね……情報によれば、どうやらあの鉱区で犠牲者が出たという事自体が、そもそも嘘らしいんだ」

 

 

保護されたその男性曰く、彼らが失踪したのは事故のせいではなく、何らかの薬品開発の実験体となっていたからだそうだ。

 

その労働者の一人だった男性はとある人物の助けのもと、命からがら逃げ出したのだそうだ。

 

 

「もうすぐリン達が帰ってくる。そしたら改めてライカンさんと──」

 

『ただいまー!』

 

「おっと……噂をすれば」

 

 

丁度良いタイミングでリンとビビアンが帰ってきた。一階に降り、出迎える。

 

 

「おかえり、二人とも。ライカンさんが二人が帰ってきたら通話で話したいと言っていたよ。もう準備は出来てるから、早速繋ごう」

 

「おっけ〜」

 

「…………」

 

「……ビビアン?」

 

 

タクミは帰ってくるなり一言も喋らないビビアンを不審な目で見る。何やら身をわなわなと震わせている。

 

 

「……タクミ」

 

「?」

 

「今、わたしは貴方に嫉妬の気持ちが湧いているのです」

 

「は?? なんで」

 

「だって毎日タダでパエトーン様の『おかえり』が聞けるのですよ!? こんな至高のご褒美を毎日貰えるなんて羨まし過ぎるのです!!」

 

「あのなビビアン」

 

「はぁ……弟である貴方が羨ましくて堪らないのです。わたしもパエトーン様の妹になりたかった……どうしたらお二人の義妹に──ん?

 

「何思いついたか知らねーけどやめとけよ?」




絶対パエトーン様の夢小説書いてるよね
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