ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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邂逅

 

 

 

 

 

「……!! それ以上近づくな──ぐわぁっ!!」

 

「…………ここにもあったか」

 

 

ホロウに入り、ディナの薬を探し始めて十数分経った頃。

 

ヒューゴの言っていた通り、ランドンが遺したという薬はかなりの数があった。

 

 

「ランドンの奴……思ったよりも大量の薬を残していたな。だが幸い、見つけたどの薬も手つかずの状態だ」

 

 

まだディナは実験を開始していないのだろう。

 

とはいえ、こちらの行動が讃頌会側にバレるのは時間の問題と言える。

 

 

「付近にもまだたくさんあるはずでございます。行方不明の人々の手がかりも、未だ見つからず……」

 

「ここは二手に分かれて探すしかないね」

 

「そうだな……ではアキラくん、君はイアスと共に俺とライカンを案内して欲しい」

 

『分かった、任せてくれ』

 

 

イアスと感覚同期をしたアキラが短い手を上げる。

 

 

「それじゃあ私はビビアンとタクミと一緒に行くね!」

 

『リン、もし讃頌会の人間に会うようなことがあったらくれぐれも注意してくれ。君は僕と違って生身の状態だからね』

 

「ご安心ください、アキラ様。私とタクミがいる限り、リン様には傷一つ付けさせないのです」

 

『それなら良いけど……二人もくれぐれも気をつけるんだよ?』

 

「彼らに遅れを取るような私ではないのです。そうでしょう、タクミ?」

 

「ああ」

 

 

ファイズとビビアンは顔を見合せ、互いに力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん! このコンテナの中から声がするぞ!」

 

「! ホント!?」

 

 

ディナの部下達を退け、さらに捜索を続けていくと、コンテナの中から失踪した労働者を発見した。

 

ヒューゴとライカンに連絡をし、すぐさま駆けつけた彼らに労働者の保護を頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして引き続き破壊すべき薬の在処を探していると……後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「あら、また会ったわね……ビビアン」

 

「……! ディナ……」

 

 

振り向けば、恐らく部下からの知らせを聞きやって来たであろうディナとカミエルの姿があった。

 

 

「貴女が捕らえていた労働者の皆さんは避難させました。もう貴女に打つ手はないのです」

 

「分かっていないようねビビアン。彼らは()()()実験体となっているの。今居なくなったところで、新しい実験体は何もせずともやってくるわ。それに私は……皆を希望の未来へと導いているの。貴女にはそれを止める資格も理由もないわ」

 

 

希望の未来──『祝福』の力で、ホロウに苦しめられることなく生きられるようになる。

 

かつてランドンがそう言った事を信じ、ディナはその計画を進めてきた。

 

 

「違います……貴女は、皆が持つその希望を利用しているだけに過ぎません──ランドンのように」

 

 

ビビアンは彼女の言葉をきっぱりと否定した。

 

 

「サクリファイスの存在を許してしまえば最後、新エリー都の人間にもたらされるのは、希望ではありません──絶望です」

 

「…………うるさい」

 

「あの時、私は確かに見たのです。ランドンから『祝福』を授けると言われた時の、貴女の恐怖の表情を。貴女も本当は分かっているはず──」

 

「うるさいっ!!」

 

 

ディナは感情のままに怒鳴る。しかし、ビビアンはそれに狼狽える事なく、ディナを見つめる。

 

 

「貴女はいつもそう……! お父様からの関心を独り占めして! 善人気取りで私の邪魔をして! 貴女がなんと言おうと、お父様から受け継いだものを壊すつもりは無い!」

 

「ディナ……!」

 

「今度こそ、三人まとめて消えてもらうわ……カミエル、サクリファイスの失敗作を出して。絶対生きて帰さないで!」

 

「…………」

 

「……カミエル? 何をしているの?」

 

 

カミエルはディナの指示に従わず、ただ黙って彼女を見つめているだけだった。

 

 

「どうしたの、カミエル? まさか貴女も私を止める……なんて言わないわよね? だって貴女は、ずっと私の味方でいてくれていたものね?」

 

「……おっしゃる通りです、ディナ。私はいつであろうと貴女の味方です。今までも……そして、これからも」

 

 

カミエルは振り返り、近くに出来たエーテルの裂け目へと向かう。

 

 

「……? カミエル、何処へ行くの……!」

 

「私は前に、ヒューゴを介して市長に合意を取り付けました。説明すべき時が来たら、全ては私がやったという事になります」

 

 

"カミエルはディナを脅迫、監禁し、サクリファイスの研究と製造を手伝わせていた"

 

"そして自らの利益のため、密かにレイヴンロック家と結託していた"

 

これらは勿論カミエルがやったわけではない。しかし、彼女はディナの為、あえてそう捏造する事にした。

 

カミエルは自身をこの件の首謀者とし、ディナを『計画の為に長期間に渡り利用された被害者』に仕立て上げることで、ディナが社会に復帰できるようにするつもりだったのだ。

 

 

「なんで……そんな事をして、何のために……!」

 

「ディナ……貴女は本心からこのような事をしているわけではない。心の中では引き返したいと思っているはずです。しかし、もう今更引き返すことも出来ない……こうとも思っているはずですね」

 

「……っ、分かったような口を──」

 

「分かります。私はずっと、貴女と共にいたのですから。ホロウ災害で家族を失った私にとって、貴女という存在ははかけがえのない、何よりも大切なものでした」

 

 

カミエルはディナの方を向く。その目には涙が浮かんでいた。

 

 

「貴女が引き返せるよう……私が身を呈し、引き返せる道を作ります。サクリファイスの休眠体も……私が全て処分します」

 

「なっ……! ダメよカミエル、戻ってきて!!」

 

「貴女はまだやり直せる……これから沢山の友達を作り、沢山の人に愛される……そんな人生を送る権利が、貴女にはあります」

 

「そんなの、いらない……いらないっ!! お願いだから戻ってきてよ、カミエル!!」

 

「…………っ、ビビアン……あとは頼みます。始まりの主の導きが、希望をもたらしますように」

 

「……!」

 

 

カミエルは一度もディナの方を振り返らずに、裂け目の向こうへと消える。

 

当然ディナもカミエルを追い、裂け目へと向かっていく。

 

ファイズ達も追いかけるが、コンテナの中に潜んでいたエーテリアスに通せんぼをされてしまう。

 

 

「……っ!! まずい……!」

 

「パエトーン様は後ろに! 早く倒して、ディナを追いかけましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しした後、エーテリアスを片付けたファイズ達はカミエルとディナが入った裂け目へと入った。

 

そして裂け目を出た先でディナ達を探す。

 

 

「! いた、あそこだよ!」

 

 

リンが指をさした先に、ディナはいた。しかし、何やら彼女の様子がおかしい。

 

 

 

 

 

ディナの傍で、力尽きて横たわっているカミエル。しかし、ディナはカミエルには目もくれず、とある方向を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の視線の先には──サイガの姿があった。

 

 

 

 

「……サイ、ガ……!? なんでアイツが……!!」

 

 

 

 

サイガはゆっくりと歩き、ディナへと近づいていく。

 

 

「ディナ!! そいつから離れろ──!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファイズの叫ぶ声も虚しく、ディナはサイガの体から飛び出した『何か』に貫かれてしまった。

 

 

「ディナ!!」

 

「……っ、野郎!!」

 

 

[1・0・6][Burst Mode]

 

 

ファイズはフォンブラスターで飛んでいくサイガを撃ち落とそうとする。

 

しかし、サイガはフライングアタッカーを駆使し、そのまま空の彼方へと消えていった。

 

 

「ディナ! ディナ!! しっかりしてください!」

 

 

ビビアンは倒れたディナを抱き上げ、必死に呼びかける。ディナはそれに応えず、目を閉じたまま、返事さえもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし数秒後、彼女は何事もなかったかのように目を開けた。

 

 

「…………」

 

「ディナ! 目を覚ましたのですね、良かった──きゃっ!」

 

「!!」

 

 

目を開けたディナは表情を変えずにビビアンを突き飛ばし、立ち上がる。

 

彼女は明後日の方向を向いたまま、一言も声を発さない。

 

 

「……ディナ? どうしたのですか?」

 

「……」

 

 

ビビアンの声に対し、ディナは振り向きこちらに顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の顔には模様が浮かび上がり

 

その瞳は灰色に濁っていた

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