「ディナ……!! どうしたのですか……!?」
ビビアンの問いかけに、ディナは表情を変えずに僅かに口を開いた。
「…………び、ビア……ン」
「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」
ディナの顔を見て、ファイズは彼女の様子に何かが引っかかっていた。
(灰色の目……顔の模様──まさか……っ!)
かつて乾から教えて貰った、『あの怪物』の特徴と合致している。
という事は、ディナは今──
「ビビアン! 姉ちゃん! ディナから今すぐ離れろ!!」
「え?」
その瞬間、ディナの体に変化が起き始めた。
「ぐ………………ゥ……あぁ……!!」
「ディナっ!!」
ディナは呻き声とともに蹲る。
そして彼女の体は……次第に人間のそれではなくなっていく。
小さな体は次第に大きくなり始め、最早原型すら留め無いほどに、少女は『化け物』へと姿を変えていく。
『グォォォォオオオオオオ!!』
──『オルフェノク』という化け物に。
「……なに、あれ……!?」
「…………っ」
体を覆う銀色の鎧。
巨漢ですら丸ごと呑み込めそうな巨大な口と牙。
ギョロリとこちらを睨みつける六つの眼。
全てを破壊し尽くしかねない巨大な角。
そして……かつて戦ったデッドエンドブッチャーに匹敵するほどのサイズを誇るその巨体。
まるでサイの様な見た目をした、『エラスモテリウムオルフェノク』が、ファイズ達の目の前に姿を現した。
オルフェノクの事は事前に聞いていたとはいえ、このサイズ感だけは予想外だった。
「……ビビアン、姉ちゃんを連れて逃げろ」
「な……!? なぜですか、わたしも一緒に──」
「良いから逃げろ! あいつは……エーテリアスでも、サクリファイスでもない……!!」
「……!? まさか、あれは──!!」
「ちょっと待ってよ! だったらタクミも一緒に──」
『グォォォォオオオオオオ!!』
「きゃぁっ!?」
[Exceed Charge]
「はぁぁっ!!」
こちらに向かって突進してきたエラスモテリウムに対し、ファイズはグランインパクトで迎撃する。
しかし突進自体を止めただけで、ダメージ自体は入っていない。むしろファイズの迎撃をもろともせず、突進の力を強めていく。
「三人じゃ逃げる暇すらない……! ここで俺が時間を稼ぐから、二人はヒューゴさんの所に行け! 俺もタイミングを見て後から逃げる!だから早く!」
「…………っ、パエトーン様!」
「!!」
リンはビビアンに手を引っ張られ、一瞬葛藤したものの……タクミを信じ、彼女と行く事にした。
「もし無茶したら……数時間は説教するから!」
「…………」
そう言い残し、リンはビビアンと共にこの場を後にした。突進を受け止めていたファイズは、とうとう限界を迎え──
『グォォオアアア!!』
「うわあっ!!」
エラスモテリウムに巨大な角で勢いよく弾かれ、吹き飛ばされてしまった。
灰色の猛獣は間髪入れずに、吹き飛ばしたファイズに向けて鼻腔から無数の針を放った。
「っ!!」
ダウンしていたファイズは身体をひねらせてなんとか身体を起こし、針を避けるべく走り出すが──
「ぐっ……!」
飛んでくる針を避けきれず、一本の針が右肩を掠めてしまった。
それにより動きを止めるファイズ。エラスモテリウムは巨大の角を掲げ、再び突進してくる。
「……!!」
[Ready]
ファイズは咄嗟にポインターを足にセットし、アクセルメモリをファイズフォンに装填する。
[Complete]
胸部のフルメタルラングを展開させ、アクセルフォームへと変身する。
エラスモテリウムの突進を大ジャンプで避け、そのまま上空から無数のポインティングマーカーを射出する。
[Three, Two, One──]
「はぁぁあああああっ!!」
巨体めがけ、ポインティングマーカーの数だけクリムゾンスマッシュを叩き込んだ。
[Timeout][Reformation]
着地し、通常形態へと戻るファイズ。クリムゾンスマッシュを食らったエラスモテリウムは、その身体を微動だにさせなかった。
「……?」
何かがおかしいと感じるファイズだったが……
『グォォォォオオオオオオ!!』
「っ!? ぐわぁっ!!」
そう思ったのもつかの間、エラスモテリウムは怒りで暴れだし、振り回されたダイヤモンド以上の強度の爪をモロにくらい、吹き飛ばされてしまった。
「ぐ……うぅっ……!!」
勢いよく、引きずられるように地面を転がった後、力無く仰向けに倒れ伏せるファイズ。
エラスモテリウムは怒りが収まらないのか、まだ暴れ回っている。吹き飛ばされたのが幸いしたのか、ファイズの事は見失っているようだ。
(なんて、強さだ……今まで戦ってきた奴の比じゃねぇぞ……!!)
ある程度ダメージを与え、頃合いを見て逃げ出す作戦だったが……
オルフェノクの強さを見誤っていた。
その強さは、下手すればサクリファイス以上にも及ぶかもしれない。
さらに、オルフェノクはエーテリアスと違いホロウの外でも活動可能。もしこのオルフェノクがホロウの外へ出てしまえば──
(──このまま野放しにしたら……絶対にまずい……!)
被害を防ぐためにも、やはりこのオルフェノクはここで倒しておかなければならない。
『グォォォォオオオオオオ!!』
「!!」
息を切らしながら立ち上がったファイズを見つけたエラスモテリウムは、咆哮とともにこちらに向かって猛スピードで走ってくる。
しかし何者かの攻撃により、エラスモテリウムはその動きを止めた。
『グゥゥ…………!!』
上を見上げれば、駆けつけたオートバジンが上空からガトリング砲で援護射撃をする姿があった。
エラスモテリウムは恨めしそうにオートバジンを見つめ、撃ち落とすべく大量の針を鼻腔から発射する。
オートバジンは飛行しながらそれを華麗に避ける。そして手に持っていた何かを、ファイズへと投げ渡した。
「これは……」
オートバジンから受け取ったのは──トランクボックス型マルチツール、『ファイズブラスター』。
ブラスターフォームは、アクセルフォームを使用した時以上の負荷がかかるため、あまり使いたくはなかったのだが……
現状からして、そのような悠長なことを言っている場合ではないだろう。
(よし……やるか……!)
[5・5・5][Standing by…]
オートバジンが交戦している今のうちに、ファイズブラスターのテンキーでコードを入力し、ENTERキーを押す。
そして──
[Awakening]
ファイズフォンをブラスターのトランスホルダーにセットした。
たちまちファイズの体が赤く光り始め、その姿を変えていく。
赤いフォトンストリームは黒く変わり、逆に黒いスーツは赤色へと変化していく。
赤く輝くその光はなりを潜め、ファイズは──ブラスターフォームへと変身した。
[5・2・1・4][Faiz Blaster, Discharge]
ファイズブラスターにコードを入力し、背部ユニットを両肩に展開する。
「ふっ!!」
『ガァァアアアアア!!』
エラスモテリウム目掛け、ブラッディキャノンから大量のエネルギー弾を発射。
咆哮を上げるエラスモテリウム。ダメージは与えられているようだ。
[1・0・3][Blaster Mode]
コードを入力し、ファイズブラスターをフォトンバスターモードに変形させる。
[Exceed Charge]
ENTERキーを押し、フォトンバスターに濃縮されたフォトンブラッドがチャージされていく。
そして──
「はぁっ!!」
フォアグリップを引き、銃口をエラスモテリウムに向け、引き金を引いた。
『ガァァァアアアアアアア!!』
フォトンバスターから発射された光弾を食らったエラスモテリウムは、断末魔を上げながら『Φ』のマークを浮かべた。
次回で(多分)アウトロが終わります