ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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残された謎

 

 

 

 

 

『がぁぁ…………ぁ……っ!!』

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

呻き声を上げるエラスモテリウム。

 

ファイズは戦闘中に負ったダメージとブラスターフォームの負荷で倒れそうになりながらも何とか気を保っていた。

 

エラスモテリウムの身体は白く輝き、元のディナの姿に戻っていく。

 

 

と、その時。

 

 

「タクミ!」

 

「!」

 

 

後ろから声がし、振り返ればリンがヒューゴ達を連れてこの場へと戻ってきていた。

 

 

「っ!! ディナ!」

 

 

倒れているディナを見たビビアンは彼女の元へと駆け寄り、抱き上げる。

 

 

「……ビビ……アン」

 

「ディナ! わたしの事が分かりますか!?」

 

「……」

 

 

ディナは自身の体を支えるビビアンを見つめ、彼女の手をゆっくりと握る。

 

 

「……この温かさ、懐かしいわ……ねぇ、ビビアン。初めて一緒のお布団で眠った夜のこと、覚えてる? あの夜と、同じ温かさをしてる」

 

「……!」

 

「お父様が貴女を連れてきたあの日……私、とても嬉しかったの」

 

 

しかし日が経つに連れその気持ちは薄れ、ビビアンに対する嫉妬や憎しみの感情が湧き始めた。

 

 

「貴女は色んなものを手に入れて……反対に私は、貴女に数少ない大事なものを奪われた。あげく、貴女はそれを壊しさえもした」

 

 

ディナの体から、青い炎が出始める。

 

 

「……!!」

 

「私は……そんな貴女が今まで憎かった。その気持ちは、きっとこれからも変わる事はないわ。だってこの感情は──私に、残された、大切なもの……だから」

 

 

身体から出る炎は勢いを強め、次第にあちこちが灰と化していく。

 

握られていた彼女の手も、灰となってビビアンの掌からこぼれ落ちていく。

 

 

「サヨナラ。私の……一番嫌いな、一番最初のお友達」

 

「ディナ! ディナ……!!」

 

 

ビビアンが零れ落ちた灰をかき集めようとするがそれも適わず、ディナの身体は完全に灰となってホロウの風と共に消えていった。

 

 

「…………なんと」

 

「これは……」

 

 

灰と化したディナに、その場にいたヒューゴ達は驚きを隠せなかった。

 

そんな中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……どういう、事だ……? なんでサイガは、ディナを、オルフェノクに……サイガは……)

 

 

ファイズは起こった出来事について、途切れそうになる意識を必死に保ちながら、考えを巡らせていた。

 

しかし意識を保とうとすればするほど、思考もままならなくなっていく。

 

 

(──あ、ダメだ……頭が……痛い)

 

「タクミ? どうし──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがてタクミは、その意識を闇の中へ落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。病院にて。

 

 

「タクミ? わたしが何を言いたいか分かっていますね?」

 

「…………」

 

 

今日、アキラとリンがモッキンバードの二人を連れて、何度目かの入院となったタクミのお見舞いへ来たのだが……

 

ビビアンは病室に入るなり、いきなりタクミの頬をこれでもかとくらいこね回した。

 

タクミはそれを甘んじて受け入れた。いくらタクミとて、ビビアンの怒っている理由が分からないほどニブチンではないからだ。

 

 

「全く……あの日一緒に戦おうと言っていたのはどこの誰でしたか? それなのに貴方と来たら……」

 

「ほんとだよ! あれだけ無茶はするなって言ったのに……」

 

「すみません……」

 

「そこまでしてやれビビアン。彼も最初から無茶をするつもりではなかったのだろう」

 

 

 

ヒューゴの言う通り、最初はリンを守るためビビアンと一緒に戦うつもりだった。

 

しかし、この世界にいるかどうかすら不明だった『オルフェノク』という存在が、いきなりタクミ達の前に姿を現した。

 

さらに、ディナをオルフェノクに変えたのはサイガ。

 

『オルフェノクは人間を同じオルフェノクに変えることができる』という乾の話が正しければ、彼自身もオルフェノクという事になる。

 

 

それともう一つ。

 

ヒューゴとビビアンには、これまで『オルフェノク』の事は一度として話してこなかった。

 

オルフェノクという存在がどの手段を持ってしても確認出来なかった……と言うのもあるが、何よりタクミはこれを『自分だけの問題』だと思っていた。

 

ツイッギーの時でも、オルフェノクの存在が理由で標的にされたのはタクミ()()

 

さらに言えば今回のサクリファイスの件もオルフェノクに関しては直接的な関わりはなかった為、わざわざ言う必要はない……そう思っていた。

 

 

しかし、エラスモテリウムオルフェノクと出くわし、オルフェノクの存在が発覚した事で状況が変わった。

 

あの凶暴な化け物と同じようなオルフェノクが存在し、それが無関係の人々を襲うのであれば、もう『自分だけの問題』ではなくなるだろう。

 

少なくとも、この二人にはオルフェノクについて言っておく必要がある。

 

 

 

「…………ヒューゴさん、ビビアン。実は──」

 

「『オルフェノク』の事ならもう知っているのです」

 

「えっ」

 

 

思わず素っ頓狂な声が出る。どういう事かと聞く前にアキラが答える。

 

 

「昨日僕が話したんだ。ライカンさんや市長さんにも、この間起こった事を話してある」

 

「あ……そうなんだ」

 

「ああ、大方の事はアキラくんから聞いた。オルフェノクとやらの生態……そして君()()がファイズに変身できる……その理由をな」

 

「…………」

 

 

タクミはヒューゴの言葉を聞き、押し黙ってしまう。

 

 

「……なに、気にする事はない。何者であろうが、どんな過去があろうが、俺達が友人である事に変わりはない……そう思っているのは、何も俺だけではないだろう?」

 

「そう……っすね」

 

「もし、過去のことについて……打ち明けたくなったらいつでも話してください。貴方やパエトーン様が受け入れてくれたように、わたしも受け入れるのです」

 

「…………ありが──」

 

「そう! 将来の義姉として!!」

 

「台無しだよお前!!」

 

 

 

まだ結婚する気満々だったビビアン。心なしかアキラの笑顔がひきつっている気がする。

 

 

「コホン……とは言え、オルフェノクがもたらす無関係の人々への影響については一考を案じる必要がある。サクリファイス以上の危険要素となる可能性も否定はできんからな」

 

「市長さんの方でも、できる限り調査に協力するつもりらしい。逃亡したサイガについても、行方を追うつもりみたいだ」

 

「…………そっか」

 

 

タクミは胸を撫で下ろす。市政に加え、六課の協力もあれば、恐れている事態が起こる可能性は低いだろう。

 

 

「……あ、そういえばタクミ、右肩は大丈夫?」

 

「え? 右肩?」

 

「え? いやほら……侵蝕されてたでしょ?」

 

「侵蝕!?」

 

 

タクミは慌てて自分の右肩を触る。

 

 

「安心して、今はもう治ってるよ。でもリンが居なければ、どうなっていたかは分からなかったからね?」

 

「な、治ってる……? どういう事だ? 姉ちゃんが治したって事か?」

 

「えっと……実はね──」

 

 

ディナが消滅した後……タクミは気絶し、その拍子に変身が解除された。リンが見た時、彼の右肩は酷く侵蝕されていたらしい。

 

それもエーテル結晶が現れるほどに。

 

しかし──

 

 

「リンの目がいきなり青く光ったかと思えば、タクミの右肩にあったエーテル結晶がみるみるうちになくなっていったんだ」

 

「え……何それ……怖……」

 

「怖いはこっちのセリフだよ! ほんっとに心配したんだから……!」

 

 

 

その後、侵蝕の後遺症も無かったらしいので、完全に侵蝕を打ち消してしまったらしい。

 

現にこうして会話できているのがその証拠だろう。

 

市長の考えによれば、リンの体内にあるエーテルエネルギーが空気中のエーテル粒子に影響を及ぼし、侵蝕を後退させたのだとか。

 

ただそのメカニズムについて、詳しい事は現時点では不明らしい。

 

 

(…………あれ? でもなんで侵蝕されてたんだ……? ファイズのスーツは余程の事でもなけりゃ侵蝕なんてされないはず……エーテリアスと戦ってたわけでも────ん?)

 

 

右肩が侵蝕された原因……タクミはエラスモテリウムとの戦闘中、鼻腔から発射された針が自身の『右肩』を掠めていたのを思い出した。

 

 

(…………まさか、あれが?)

 

「タクミ? どうしたの?」

 

「あ、いや……なんでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラ達が帰った後。タクミは日がおちる空を窓からぼんやりと眺めていた。

 

 

(あ……そうだ。オルフェノクの事、乾さん達にも言っとかねーと)

 

 

タクミは置かれていたスマホを取り、電話をかけようとする。

 

その時、病室のドアが開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……? アンビー?」

 

「…………」

 

 

病室に入ってきたのはアンビーだった。

 

 

「…………ねぇ、そこの貴方」

 

「え? はい」

 

「この病室に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がいるって聞いたんだけど、知らない?」

 

「……」

 

「…………」

 

「…………わ、分かんないッス」

 

 

 

本日二度目の頬こねくり回しの刑を受けた。




アウトロ今回で終わりです!
次回から番外編を挟んでシーズン2へと突入します!
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