ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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次回はシーズン2と言ったな、あれは嘘だ
あと一話だけあります


なんでもない特別な一日

 

 

 

 

 

「お、来た来た! こっちこっち!」

 

 

すっかり日が暮れ、月が登り始めた時間。タクミは猫又に呼び出され、待ち合わせ場所であるルミナスクエアまで来た。

 

 

「ふふん、それじゃあどこ行く? タクミが決めちゃっても良いぞ?」

 

「……なあ、猫又」

 

「ん?」

 

「今日はお前の誕生日だし、一緒に遊ぼうってのは分かるんだけどさ……なんでこの時間帯なんだ? 普通昼間じゃね?」

 

 

そう、今日は猫又の誕生日。

 

なので昼間は邪兎屋のメンバーと一緒に彼女をお祝いした。昼飯に海鮮丼をご馳走したり、サバのぬいぐるみをプレゼントしたりした。

 

しかし、どういう訳か誕生日パーティーが終わった後の夜、猫又からノックノックで『遊びに行こう』とDMが来たのだ。

 

現在夜の十時。どこかへ遊びに行くという時間でもないだろう。ゲームセンターも閉まっている。

 

 

 

タクミの問いに、猫又は途端にしどろもどろになり始める。

 

 

「そ、それは……昼間は二人っきりになれるタイミングなんかないし

 

「……? ごめん聞こえなかった」

 

「あーもうとにかく! 別に夜遊んじゃダメな理由はないでしょ? あんまりこっちも時間はないし、ほら早く行こ!」

 

 

 

 

 

猫又はタクミの手を握り、歩き出す。連れられてやって来たのは、川沿いにある公園。

 

到着すると、彼女を出迎えるように二匹の猫がやって来た。

 

 

「紹介するぞ! この灰色の猫ちゃんは"カイ"、それとこの白い猫ちゃんは"ミルク"!」

 

「すげーな猫又……ルミナスクエアの猫とも友達なのか」

 

「ふふん、顔が広いのは人間だけじゃないんだぞ!」

 

 

六分街の猫と知り合いなのは知っていたが、まさかルミナスクエアの猫とも知り合いだとは思わなかった。

 

さすがの人脈……いや、猫脈と言うべきか。

 

 

「あれ? もう一匹の猫ちゃんは来てないの?」

 

「もう一匹いるのか。なんて名前だ?」

 

「モカって名前の三毛猫なんだけど……ねえカイ、ミルク、知らない?」

 

「にゃ〜ぁん」

 

「うーん知らないか……」

 

「…………あ、なんかもう一匹歩いてきてるぞ。あれじゃねーか?」

 

「ほんと?」

 

 

タクミが指差した方向からまるまるとした三毛猫がのこのこと歩いてくる。

 

 

「ニャア〜〜」

 

「やっほーモカ……って、アンタまた太ったんじゃない? またダラダラしてたでしょ! そのうち太りすぎて動けなくなっちゃうぞ!」

 

「ニャア……」

 

 

三毛猫のモカはゆったりとした動きでごろりと寝転ぶ。タクミはしゃがみ込み、モカのお腹を撫でる。

 

 

 

 

 

「ニャア〜〜〜〜♪」

 

「!?!?」

 

 

タクミは猫の鳴き真似をしながら、モフモフとしたお腹を撫で続ける。

 

カイとミルクの二匹も、スリスリと体を擦り付けている。

 

 

「にゃあ〜〜〜」

 

「はは、コイツ随分撫で心地がいいな。なあ猫又──猫又? なんでそんな驚いた顔してんだ?」

 

「…………タクミ」

 

「な、なんだ」

 

「アンタもしかして……あたしと同じ猫のシリオンだったり……?」

 

「なわけねーだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は特にどこも行く、という事はしなかった。せいぜい自販機でジュースを二つとアイスを買ったぐらいだった。

 

お互い既に夕飯は既に済ませたばかりなので、なにか食べに行こうという気持ちもない。

 

心地よい夜風に当たりながら、二人は六分街へと戻っていく。

 

タクミはレジ袋からジュースが入った二本のペットボトルを取り出し、猫又に見せる。

 

 

「猫又、どっちの味がいい?」

 

「うーん、あたしはー……これとこれっ!」

 

「あっお前、どっちも取るのかよ!」

 

「へへ〜、だって二本とも手に持ってたら二本取るに決まってるでしょ?」

 

「はぁ、お前な……まあいいや」

 

「あれ? いいの?」

 

「別にいいよ。今日はお前の誕生日だしな、大目に見てやる」

 

「…………ありがと」

 

 

六分街とルミナスクエアはそれなりの距離があるが、徒歩でも行けなくない距離ではある。

 

散歩しながら帰るには最適な距離と言える。

 

タクミはレジ袋から棒アイスを取り出し、歩きながら食べ始める。

 

 

その横顔を、猫又は見つめていた。

 

 

 

 

 

(…………タクミ)

 

 

彼と会う度、話す度、湧き上がるこの気持ち。

 

 

 

いつ気づいたのかは分からない。

 

いつからあったのかも分からない。

 

なぜそうなったのかも分からない。

 

 

ただ一つ分かるのは、この気持ちは、言葉では言い表せないほど、大きくなっているという事だけ。

 

 

(…………)

 

 

しばらく見つめていると、タクミがこちらを振り向く。

 

 

「……猫又」

 

「!」

 

「今日はもう何回も言ったけどさ……誕生日、おめでとう」

 

「…………っ、にゃはは」

 

 

心臓の鼓動が早くなる。それを自覚すると、さらに早くなっていく。

 

ニブチンなタクミには彼女が今どんな気持ちかは分からないだろう。分かってもそれはそれで困るかもしれない。

 

心地いい涼しさを持つこの夜風は、熱くなった顔を冷ますのに丁度いい温度だった。

 

 

 

 

 

 

そうして六分街へと帰ってきたタクミと猫又。

 

まだ営業している『BOX GALAXY』の看板が目に入った。

 

 

「あ、そーだ……折角だし、ここでガチャ回してかない?」

 

「ガチャか……何回かやったけど、だいたいハズレ枠だったんだよな……」

 

「今回は『招き猫の手』を持つあたしがいるから大丈夫だぞ! ほらほら、一回ずつ回そ!」

 

「しょーがねーな……」

 

 

タクミはカプセルトイのガチャにディニーを入れ……ハンドルを回す。

 

出てきたのは──小さなバッタのフィギュア。

 

 

「……最低レアって訳じゃねーが、まあ微妙だな」

 

「よーし、じゃあ今度はあたしの番!」

 

 

今度は猫又がディニーを入れ、ガチャを回していく。取り出し口に出てきたのは……

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

「あれ……お前も俺と同じやつか」

 

 

かなり種類が多いこのカプセルトイで、よりによって同じバッタで被ってしまった。

 

 

「ついてなかったな……どっちもハズレとはな」

 

「……ううん、ハズレじゃないぞ」

 

「え? そうか?」

 

「うん……あたしにとっては、大当たり」

 

 

()()()となったバッタのフィギュア。

 

猫又の『招き猫の手』は、誕生日に一際大きな幸運を呼び寄せた。




という訳で猫又誕生日回でした
誕生日おめでとう、猫又!!

そして次回こそシーズン2開始です!
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