ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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適当観

 

 

 

 

 

「──なるほど、そのような事が……」

 

 

晴れて雲嶽山の弟子となったリンとタクミ。リンは兄弟子達にこれまでの経緯を話した。

 

 

「どっかの誰かが飛行船を襲撃したせいで、お師さんと一緒にホロウに墜落、か……そりゃあ疲れて腹も減るはずだ」

 

「そんな、事故じゃなかったなんて……一体誰の仕業なんでしょう……?」

 

「分かんないけど……もしかしたら、今回雲嶽山の皆と行う調査を妨害するつもりだったのかも」

 

「大いに有り得ますね。貴方がかの有名なプロキシ、パエトーンであるなら尚更でしょう」

 

 

しかし、当然ながら今回調査を行う旨は外部に漏れていなかったはずだ。

 

釈淵曰く、リン達がここへ来る少し前に占いで悪い兆しを見たらしく、安全のため儀玄が自ら護衛を買って出たのだそうだ。

 

 

「……そうだったのか。確かに、俺と姉ちゃんだけじゃ危なかったかもな」

 

「二人に大事がなかったのは何よりだが……情報が外部に漏れてたって事は、俺たち雲嶽山が適当観に戻ってきた事もバレてるって事だよなぁ……」

 

「え? 皆、今までここで寝泊まりしてた訳じゃないの?」

 

「実は雲嶽山の総本山はここじゃないんです。昔からある拠点のひとつってだけで……昔は結構賑わってたんですけど、旧都陥落以降はすっかり誰も来なくなっちゃって……」

 

 

今回戻ってくることになったのは、雲嶽山がラマニアンホロウの調査を依頼されたから。ただ、適当観へ帰ってきた事は衛非地区の皆には知らせてはいない。

 

 

「タクミくん達が来るって聞いてから、お掃除したりしてお泊まりする為の準備をしてたんですけど……そうするにはちょっと質素過ぎるかもです」

 

「ううん、全然大丈夫だよ! 私って枕さえあればどこでも寝れるからね! タクミなんか外で立ったまま寝れるんだよ?」

 

「立ったままは寝れねーよデタラメ言うな」

 

「まあ……何はともあれ、今後に備え休息は十分に取っておくべきですね」

 

「そうだな。よし、そんじゃあ俺は何か作ってくるから、お弟子ちゃん達は休んでてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで福福の案内の元、タクミは適当観の寺の中で待つ事にした。

 

ちなみにリンはお腹がすいていないとの事で、適当観周りを散歩している。

 

 

「いつもこの部屋でご飯を食べるんです! 潘さんが来るまで、ここで待ってましょう!」

 

「ありがとう」

 

 

部屋の中は大きい机以外何も無く、まだ荷物の準備中だと言うことが分かる。

 

このような質素な部屋でも、タクミからしたら不思議と居心地が良かった。

 

 

「一応掃除はしてるから大丈夫だと思いますけど……ホコリっぽかったら言ってくださいね?」

 

「大丈夫だ福福先輩。それよりもちょっと聞きたい事があるんだけど」

 

「なんですか? なんでも聞いてくださいっ!」

 

「その……なんでここは『適当観』って呼ばれてるんだ?」

 

「あーそれは……確かに気になりますよねぇ……では、この福福がお答えしますっ! えっと、お師匠さまによれば──」

 

 

その昔、雲嶽山の先人が衛非地区に建てる拠点の立地を決めるにあたり、一週間ほどの時間をかけて風水を調べていた。

 

風水を調べている事が地主にバレたくなかったその先人は『適当に観ているだけだ』と嘘をついたのだそうだ。

 

それに地主は大笑いし、あげく拠点を建てることになった時も大工達にからかわれ、この道観は『適当観』と呼ばれるようになったらしい。

 

 

「──これが、ここが『適当観』と呼ばれるようになった所以です」

 

「……なんか、結構深いストーリーがあんのかと思ったけど、四コマ漫画みたいなスピード感だったな」

 

「それはあたしも思いました……まあ、でも『適当』観らしい理由ですよね」

 

 

 

 

 

そんなことを話していると、部屋に潘がお盆を持って入ってきた。

 

 

「お待ちどおさん! 潘特製チャーシューまんだ! どうだ、美味そうだろう?」

 

「おお…………!」

 

 

湯気が立ち上る出来たてホカホカのチャーシューまん。思わずゴクリと唾を飲む。

 

 

「わあ〜……! ありがとうございます、潘さん! それじゃあ食べましょうか、タクミくん!」

 

「ん? おいおい福姐、これは弟弟子くんのために作ったチャーシューまんだぞ? そんなに腹が減ってるなら、備蓄の乾パンでも食べたらどうだ?」

 

「う……や、やっぱりそうですよね……」

 

「あー……その、大丈夫だぞ福福先輩。この多さなら一緒に食っても十分足りる。それに、乾パンは小腹がすいた時の為の携帯食にしといた方がいいし」

 

 

タクミの言葉に、潘と福福は目を丸くする。

 

 

「え? まあチャーシューまんに関しちゃあ、アンタがいいならいいんだが……それより、乾パンも食べるつもりなのか?」

 

「タクミくん、乾パンは別に無理はしないでいいんですよ? その、こう言うのもなんですけど、アレってあんまり美味しくないんですよねぇ……」

 

「大丈夫。美味しくない()()ならいい」

 

「? どういう事ですか?」

 

「まあそれは、色々あって……とにかく大丈夫」

 

 

タクミの胃袋と舌は……エレンや蒼角ほどでは無いが、普通の人よりわりかし頑丈に出来ている。

 

 

「それより、わざわざ作ってくれてありがとう潘さん。有難くいただきます」

 

「おう、いいってことよ! 弟弟子の腹を満たすのは兄弟子の使命ってやつだからな!」

 

「それじゃあ食べましょうっ! いただきま〜す!」

 

 

チャーシューまんを頬張るタクミ。さすが雲嶽山の台所を任されているだけあって、かなりの絶品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹も膨れ、元気を取り戻したところで外へと出る。外にはリンと儀玄がいた。

 

 

「お、丁度いいところに来たな、タクミ。腹は膨れたか?」

 

「おかげさまで」

 

「ならいい。どれ、せっかくの機会だしお前さんにも紹介しておこう……ここ適当観の、大黒柱をな」

 

「大黒柱?」

 

「ああ。この子こそ、適当観の陰の主だ……名を『朔』と言う」

 

 

そう言って儀玄が紹介したのは……大人しく座っている黒い犬。

 

 

「……大黒柱?」

 

「そうだ」

 

「……この子が?」

 

「そうだ」

 

「…………なるほど」

 

(あ、考えるのやめちゃったなコレ)

 

 

リンはなぜか納得したタクミを見てそう思った。

 

旧都陥落後に住み着いた適当観の陰の主──朔はエーテルに敏感で、なんでも運命を察知する力があるのだそうだ。

 

 

「私達が適当観を離れていた間、この子はここでずっと訪れる参拝客を占ってきたんだ」

 

「そうだったのか……って、この子占いも出来るんすか?」

 

「もちろんだ。どうだ、お前さんも占ってみるか?」

 

「…………よし」

 

 

タクミは朔の元に置かれている龍亀の占い箱を手に取り、ガラガラと振って蓋を開けた。

 

中にある三つの賽に描かれていたのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……師匠、雷マークが三つ揃いました」

 

「なるほど、『平』だな」

 

「それって良いやつですか?」

 

「『平』は普通って意味だ。吉でも凶でもない。安心しろ、悪くはない」

 

「……」

 

 

普段の運がお世辞にも良いとは言えないタクミにとって、『普通』はかなりいい結果と言えるだろう。

 

 

「ここに来て運が向いてきたかもな……ありがとう、朔」

 

「ワンッ!」

 

「そんじゃ姉ちゃん、俺ハツの所行ってくる」

 

「あ、うん。行ってらっしゃい」

 

 

タクミは上機嫌のまま、適当観の外で出張ビデオ屋の準備をしている20号(ハツ)の元へと向かっていった。

 

 

 

「…………師匠、"平"って朔の占いの中じゃ一番下の位じゃなかったっけ?」

 

「言ってやるな。別に悪い結果って訳じゃないんだ」

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