儀玄達はキャロットに従い、工場エリアまでやって来た。
辺りはまだホロウ深部でないにも関わらずミアズマが多く散見された。
恐らく例の侵蝕事故による影響かもしれない。うっかり触れてしまわないよう、気をつけて進む。
そうして進んで行くと、積まれたコンテナの所に侵蝕物質があるのを発見した。
「ふむ……丁度いい。リン、昨夜言ってた『覚感の術』、今ここで教えてやる」
「ホント?」
「ああ。今回はエーテルの痕跡を追跡する術を教える」
『覚感の術・追跡の法』──周囲のエーテル波動を感じ取る事で、侵蝕物質がどこから来たものかを調べる事ができる。
「既にお前さんの経路は調整してある。習うより慣れろだ、やってみろ」
「分かった……!」
リンは目を伏せて集中し、周囲に漂うエーテルの波動を感じ取る。そして数秒もしないうちに、リンは顔を上げた。
「こっちだよ!」
「!」
リンが感じ取ったエーテル波動を元に皆を案内する。するとそこには──
「これは……」
「ミアズマの残骸か。だが、やけに濃く残っているな」
それだけではない。残骸がある地面に、何やらマークのようなものが描かれているのだ。
「なんでしょう、このマーク……」
「分かんないけど……一応写真に残しとこっか」
マークの意味は分からないが、ひとまず証拠として写真に撮っておくことにする。
この残留物が侵蝕事故によるものならば、まだ他にも同じようなものがあるかもしれない。
儀玄達は先へと進んだ。
「お、来たな皆!」
「潘さん? どうしてここに?」
工場エリアを抜けた先のリフトビーコンの近くで潘と会った。
彼はラマニアンホロウのデータ観測装置に異常が無いかを調べていたはずだ。
「ああ、実はな……観測装置のデータをコピーしてる最中に、エーテリアスに囲まれてるボンプに出くわしたんだ」
潘の傍には彼が助けたであろうボンプがいる。
「ンナナ! ンナ……(そうだよ! 皆の手助けをするため、ロア先生が僕を送ってきたんだけど……潘さんが助けてくれなきゃ、今頃僕はエーテリアスの餌になってた……)」
「なるほど、あたし達の調査の手伝いに来たんですねっ?」
「ンナンナ!(うん! 先生がマークした地点を目的地に、皆を案内するね!)」
シンジル曰く、この先にあるビルは事故が起こった場所とかなり近い生産センターらしく、侵蝕事故の痕跡が残っている可能性が高いとの事だ。
ビルはすぐ近くにある。一行は生産センターへと向かっていった。
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ビルの中へと入り、足を進めるリン達。
「……気のせいか? なんかやたらとミアズマが多い気がすんだけど……」
「気のせい、ではないだろうな。外周区域でないにも関わらずあちこちにミアズマがある。少し不自然だな」
さらに足を進めていくと、部屋の入り口がエーテルの結晶で覆われているのを発見した。
「師匠、これって……」
「よし……良い機会だ。覚感の術のもう一つの法を教えよう。『崩解の法』だ」
『覚感の術・崩解の法』──エーテル共振の周波数を乱し、短時間でエーテルの性質変化を引き起こす事で、対象を破壊するもの。
侵蝕物質の周波数を感じ取り、エーテルを活性化させ共振を起こす。そのあと周波数を変えれば、均衡を崩すことができる。
「よーし、やってみるね……! えと、周波数を感じ取って……共振を起こして……」
「崩解の法……これ、結構難しいんですよねぇ……」
「福福先輩は習得するのにどのくらいかかったんだ?」
「そうですね……思ったより難しくて、結構時間がかかった記憶が──」
「あっ、できた」
「えっ」
瞬く間に消滅するエーテル結晶。福福は驚きのあまり固まってしまう。
「ふむ……初めてにしちゃあ上出来じゃないか。覚えが早いな」
「いやあ、それは師匠の言った通りにしたらなんか出来たってだけで……」
「凄いじゃないですかお弟子ちゃん! 才能の塊ですよっ!」
「そんな、褒めすぎだよ……」
「すげーな姉ちゃん。一回目で出来ちまうのか」
「もっと褒めてくれてもいいんだよ? 弟弟子さん」
「おい俺が褒めた時だけ調子乗んな!」
引き続きビルの調査を進めていく……が、部屋がいくつか分かれていた。
「ここは二手に別れるぞ。私とリンはこの部屋、福福とタクミは向こう側の部屋だ」
「了解ですっ、お師匠さま!」
四人は一旦二手に別れ、別々の部屋を調査していく。
「タクミくん、気をつけてくださいね……事故に近いエリアだからか、エーテル濃度が高まってきてます」
「ああ、分かった」
何か手がかりは無いか探していると──
「…………?」
部屋の隅に、自走カーゴがあるのを見つける。不自然と思いつつも、何か手がかりになるかもしれないと慎重に近づいてみる。
すると───
「グァオオオオオッ!!」
「!?!?!?」
「っ!? タクミくん、どうしましたかっ!?」
突如、自走カーゴが変形し……巨大なエーテリアスと化し、襲いかかってきた。
別の場所にいた福福も駆けつけ、エーテリアスの姿を目にする。その姿はまるで──
「蟹だ……!! やべぇ蟹だ!!」
「このエーテリアス、ミミック蟹ですよっ! ホロウの中のコンテナとか自走カーゴに混ざって擬態するエーテリアスです!」
ミミック蟹は素早い動きで巨大なハサミを振りかざし、二人に襲いかかる。
「……っ! 虎威! 行きますよっ!」
福福は武器兼ペットの虎威と共にミミック蟹に立ち向かう。ファイズも同行していたオートバジンからファイズエッジを引き抜く。
「ハァッ!!」
ファイズはエッジを持って飛びかかり、ミミック蟹を斬りつけようとするが……硬い殻で防御され、弾かれてしまう。
「っ……!!」
そしてお返しの両手のハサミによる連撃で、ファイズを防戦一方まで追い込んでいく。
「がおおおっ!!」
「! 福福先輩!」
しかし、福福と虎威の助太刀でファイズはなんとか事なきを得た。
ミミック蟹を睨みつける福福。
「タクミくんには傷一つつけさせませんっ……! とおっ!」
福福は虎威のしっぽを掴んで飛び上がり、ミミック蟹の殻を壊そうとする。
当然それをミミック蟹が許すはずもなく、飛びかかってきた福福をハサミで叩き落とそうとする──
[1・0・6][Burst Mode]
「フッ!!」
──事は叶わず、フォンブラスターの銃撃で阻止される。
「ナイスですっタクミくん! やぁああっ!!」
その隙に福福が渾身の力で虎威を振り下ろし、ミミック蟹の装甲は粉々に砕け散った。
「ガァァアアアッ!!」
「……!」
[Exceed Charge]
好機を逃すものかとファイズはフォンを開いてENTERキーを押し、ファイズエッジの刀身にフォトンブラッドをチャージする。
「はあっ!!」
赤く輝く刀身を振りかざし、ミミック蟹の足を次々と切り落とし──
「グォォオオオッ!!」
最後は本体目掛け、渾身の『スパークルカット』でトドメをさした。
『Φ』のマークを浮かべて、ミミック蟹は消滅した。
「やりましたね、タクミくんっ! エーテリアスをやっつけましたよ!」
「福福先輩のアシストのおかげだ。助かったよ、ほんとに……」
「……! えへへ……あたし達、息ぴったりですねっ!」
虎らしからぬ、ほにゃりとした笑顔を浮かべる福福。彼女のしっぽはファイズには見えないが、ブンブンと嬉しそうに揺れている。
幸か不幸か、その揺れる尻尾が見えたのは後ろに居たオートバジンのみだった。