手がかりを集めた後、儀玄達と合流したファイズと福福。
「…………タクミくん」
「ん?」
「なんか……お腹空いてきちゃいましたね」
「あー……まあ戦った後だし、そりゃあ腹も減るか」
現在時刻はお昼前。
調査が何のアクシデントもなく順調に進めば、正午を迎える頃には一段落がつきそうだ。
「…………タクミくん」
「ん?」
「なんか……食べたいものとかありますか? 例えば…………蟹とか」
「え、蟹? なんで急に──」
そう言いかけて、ファイズは先程まで戦っていたエーテリアスのことを思い出した。
「…………まさか福福先輩」
「ち、違いますよっ? 蟹と戦ったから蟹が食べたくなっちゃったとか、そんなのじゃないですよ! そんなに食い意地張ってるわけじゃありませんからっ! ただ、なーんとなく食べたいなって……」
「……福福、今更取り繕う事もないだろう。蟹が食いたいならそう言えばいい」
話しているうちに、ビルの最上階へと到着した。最上階からは周りの景色が一望できる。
「あそこに見えるのが……事故のあったエリアだね。行ってみよう!」
エレベーターを使用し、一階へと降りる。そして出口付近で潘と合流した。
「おう。調査の方は順調か?」
「うん、結構な数の手がかりが集まったんだ。潘さんの方は?」
「さっきホロウレイダーの連中に襲われてな。ソイツらを少し痛めつけてやった後、あたりの状況を聞き出したんだ」
ホロウレイダーからの情報によれば、やはり先程見えた場所が事故のエリアで間違いないそうだ。
ポーセルメックスがそのエリアを廃棄したあと、何者かがインターノットで生産設備を買い取った。
ホロウレイダー達はそれを解体しに、ホロウにやって来たらしい。
「──そんで連中はその過程で薬のデータも手に入れたらしいんだが……もう捨てちまったんだとさ」
「薬のデータ、か……事故に関する詳細も、その中に?」
「恐らくな。お弟子ちゃんに頼まれた観測データのコピーは済ませてある。おれは今から奴らの本拠地に行って、薬のデータがないか確かめてくる」
「え、一人で? 大丈夫?」
「問題ないさ、潘を信じろ。門下生の中でも、こいつの強さは指折りのものだ」
「ははは、お師さんの言う通りだ! お弟子ちゃんの方こそ、くれぐれも気をつけてくれよ!」
そう言うと潘はその場を後にした。リン達はキャロットのデータに従い、目的地へと足を進める。
労災が起きたエリアももう目前という所、リン達は見知った顔を目にした。
「あれは……ロア先生? どうしてこんな所に……」
遠くに見えるのは、ホロウの外周を調査していたはずのロア。
「! おーい、こっちだ!」
彼は何やら立ち往生している様子で、リン達を見ると手を振ってきた。
「いやあ、凄く良いタイミングで来てくれたな! おかげで助かったよ」
「ロア先生、なんでこんなところに?」
「実は侵蝕症状のサンプルを取るために抜け道を使おうと思ったんだけど……その道中でエーテリアスに襲われてね。逃げているうちにこんな所まで来てしまったんだ」
「なるほど……。あ、そうだロア先生っ! ここに来るまでに、いくつか証拠になるものを集めてきましたよ!」
「助かるよ。うちのボンプとも無事に合流できたみたいだし、ポーセルメックスに突きつける証拠としてはこれぐらいあれば十分──」
「グォォオオオオ!!」
ロアの言葉を遮るように、エーテリアスの咆哮がこだまする。
「……エーテリアスか。この先にいるみたいだな」
「あそこは侵蝕が爆発的に増えたエリアだ、無理もない。本当はあそこでもう少しサンプルを集めておきたいんだけど……さすがに無謀が過ぎるな」
「ご安心くださいっ! あたし達がちゃちゃっとやっつけてきますね!」
「それはありがたい……! それじゃあ、お願いするよ!」
声が聞こえた場所まで行ってみれば、案の定エーテリアス数匹が徘徊していた。
その中には──
「おいおいカエル野郎もいるじゃん……」
「タクミ、戦った事あるの?」
「飛行船がラマニアンホロウに墜落した後に出くわしたんだ。ぴょんぴょん飛び回るから苦手なんだよなアイツ……」
相手はどうあれ、ひとまず調査のための安全を確保するのが最優先。
バニーレック率いるエーテリアスの群れは、彼女らを見るなり一斉に襲いかかってきた。
────ファイズの方へと。
「……え?」
「た、タクミくんっ!」
「…………!」
儀玄や福福には目もくれず、場にいたエーテリアス全てがファイズへと襲いかかる。
エーテリアスに覆われ、ファイズは姿が見えなくなってしまった。
「ど、どういう事……!? なんでタクミにだけ……」
「……っ! タクミくんを──」
「待て、福福」
助けるべく動き出した福福を儀玄が止める。
「ど、どうして止めるんですかっ、お師匠さま!」
「手出しは必要ない。いや、むしろしない方がいいだろう……それにしてもこの強さ、メイフラワーから聞いていただけの事はあるな」
「え……?」
儀玄は上を見ながらそうつぶやく。福福は不思議に思いながらも同じように上を見る。
襲いかかったエーテリアス達は、既にポインティングマーカーで動きが封じられていた。
[Three, Two, One ──]
そして見上げた上空には、アクセルフォームに姿を変えたファイズが宙返りしながらクリムゾンスマッシュの構えを取る姿があった。
「はぁあああああっ!!」
目にも止まらぬ速さのクリムゾンスマッシュでエーテリアス達を瞬殺していくその様子に、福福は唖然としたままだった。
[Time out][Reformation]
システム音声と共にフルメタルラングが閉じ、通常形態に戻るファイズ。
「…………うん。カエル野郎にはこれでいいな」
「たたた、タクミくんっ!」
見守っていた福福が駆け寄ってくる。
「い、今のなんですかっ!? もしかしてタクミくんにも、隠されていた凄まじい才能が……!!」
「そんなんじゃねーよ。今のは武器……兵器? みたいなもんだから。本当の強さは福福先輩には遠く及ばない」
「そうでもないぞ。エーテリアスに襲われた時、咄嗟に反応して飛び上がった後、そのまま反撃へと転じた……独学にしては、見事な機転と言えた」
「…………あざす」
「お、師匠のお墨付きじゃん! 良かったねタクミ〜!」
「からかうなよ……」
辺りはもうエーテリアスはいない。ひとまず安全は確保したと言えるだろう。
「それにしても、なんでエーテリアス達はタクミくんだけを狙ってきたんでしょう……」
「確かに、タクミを見るなり凄い勢いで襲いかかってきたよね」
タクミにも心当たりはない。エーテリアスを引き寄せる事でお馴染みのリナの料理を食べた訳でもない。
原因が分からず頭を悩ませていると、潘とロアがこちらにやって来た。
「潘も来たか。どうだ、そっちは片付いたか?」
「ああ、本拠地に乗り込んでリーダーを張り倒したんだが……ソイツ、ただ雇われただけだったらしいんだ。まあとにかく、これで調査の邪魔はされないはずだ」
「ありがとう、潘さん。あれ……その書類は?」
「これは本拠地で見つけた労働者の服用記録だ。これも証拠として使えるはずだ」
「何から何までありがとう、皆さん……おかげで十分な証拠が集まったよ」
「いえいえ、お安い御用ですっ!」
ひとまずこれで調査は一段落ついた。
時刻は正午前。アクセルフォームを使用したからか、先程と比べてかなりお腹が空いた。
「ようし! 調査も一段落着いたことだし、適当観に戻ったら早速飯にするか! 今日は何が食べたいんだ?」
「……そうだな、今日は蟹料理と──カエル料理で」
「タクミっ!?」
リンの大きな声がホロウにこだました。
タクミは食に対する偏見がほとんどない(ヴィクトリア家政調べ)