互助会とともにポーセルメックスへの抗議の手助けをしていた医師、ロア。
ダミアンは以前から、彼の作る『解悩水』に疑問を抱いていた。
と言うのも、その薬に含まれている成分のことを考えれば、破格の安さで支給されている事が不自然だと考えているらしい。
「……つまり貴方は、ロア先生の作る薬に問題があるって言いたいの?」
「ええ。私から見れば、彼の告発は弊社と従業員間の対立を煽っているように思えてなりません。互助会の連中も、賠償金の為に彼の行いに疑問を抱こうともしない」
「…………」
「まあ、私の主張を今すぐ信じろと言うのも無理な話でしょう。証明として、事故の関係者名簿と賠償の進捗に関する資料をお渡しします。どうぞ、心ゆくまでお調べください」
ダミアンは持っていた資料を手渡し、適当観を後にした。
「……ど、どういう事でしょう……? まさか、本当にロア先生は嘘を……?」
「まだ分からない……ダミアンが嘘をついてる可能性もあるし、まずは貰った資料を調べてみないとね」
「リン、それなら僕に任せて欲しい。システムの調整が終わったら、ダミアンの資料が本当かどうかを調べるよ」
「よし。それなら私達はその間、治療を受けた人間に聞き込みをするぞ。何か収穫があるかもしれん」
ロアが労働者に支給している解悩水。それが本当に安全なのか、真偽を確かめる為に一行は再び聞き込みを開始する事にした。
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「──タクミ、ちょっと良いか?」
「! 真斗か」
澄輝坪にいる労働者達への聞き込みの途中、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「少し聞きてぇ事があるんだけどよ……この辺でパロ見なかったか?」
「奇遇だな、俺もパロさんとロア先生を探してんだ。解悩水の事で聞きたい事があってな」
「お前も探してたんだな……パロのヤツ、奥さんと耐侵蝕治療を受けに行くって言ったっきり、連絡が取れずじまいなんだよ」
「…………」
耐侵蝕治療。タクミは真斗からそれを聞き、ひどく胸騒ぎがした。
彼は今、ロアから治療を受ける為にホロウに入っているのかもしれない。
「んで、タクミの方はどうしたんだ? 解悩水で、何か聞きたいことでもあんのか?」
「ああ。解悩水の詳細をまだロア先生から聞いてなかったからな……治療を受けに行ったって事は、ホロウの中にいるかもしれない。ありがとう真斗、とりあえずこっちで探してみる」
「あ、そんならパロに会ったら『娘を心配させんな』って伝えてくれねぇか? 電話の一つぐらいは寄越して、安心させてやれって」
「分かったよ」
ひとまず、パロもロアもホロウにいるであろう事は分かった。
タクミは急ぎ足で適当観へと戻って行った。
聞き込みで得た情報を持って適当観へ戻り、リン達と合流した。
「みんな、さっきダミアンが渡した事故の報告書を確認した。どうやら彼の言う通り、補償の申請は進んでいたみたいだ。市長さんがくれたルートでも検証したけど、依然嘘はなかった」
「……つーことは、やっぱロア先生が嘘ついてたって事か……?」
「あたしも、労働者の皆さんに解悩水について話を聞いたんですけど……どうも変なんですよねぇ」
労働者曰く、解悩水を飲むと侵蝕による痛みが緩和されるだけでなく、強烈な眠気が襲いかかった後……自身の昔の夢を見る事があるらしい。
幼い頃に見た懐かしく暖かな光景……そのような夢を見てしまうのだそうだ。
ロアが言うにはそれは薬が効いている証拠らしいが……儀玄は怪訝な表情を浮かべる。
「……まさか、解悩水にミアズマを混ぜているんじゃないだろうな……」
「み、ミアズマっ!? どうしてですか!?」
「ミアズマは触れると感覚が麻痺し、幻覚を見るようになるんだ。痛みだって感じなくなってしまうのさ」
「つまり……解悩水はそのミアズマのせいで、侵蝕が和らいだように
「ええ、間違いはないでしょう。ポーセルメックスの薬に問題があると嘘をつき、自身の薬を売り込んだ……しかしそれは緩和剤でもなんでもない、ただの偽薬だったという訳ですね」
現在ミアズマが増加しているラマニアンホロウでは、さぞ材料には困らなかった事だろう。
「そんな……薬にミアズマなんか混ぜちゃったら、却って侵蝕が広がっちゃいますよ!」
「もし本当なら患者の人が危ない……! 今すぐホロウに行って、先生を探さないと!」
リン達は手早く準備を整えた後、ラマニアンホロウへと向かっていった。
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イアス姿のアキラによるナビの元、ラマニアンホロウを進んでいく一行。
『リン、労働者達が言っていた治癒エリアはこの辺りだ。通信シグナルの強度は弱いけど、すぐ近くから出ているみたいだ』
「こ、ここ……ミアズマまみれじゃないですかっ!? こんな所で治療を……!?」
『ポーセルメックスの目を避ける為だと労働者達は言っていたけれど……恐らく違う理由があるはずだ』
真斗の情報が正しければパロもこのホロウの中で治療を受けているはずだ。
患者を見つけるため、ホロウを進んでいく。
「なんだこりゃあ……ここ辺りもそこかしこミアズマだらけじゃないか!」
「エーテリアスも沢山いますっ……!」
「進めば進むほど疑念が深まるな……本当にクロなのはダミアンさんじゃなくてロア先生の方だったか」
並み居るエーテリアスを片付け、障害物である凝固したミアズマを術法で消していく。
そうしていくうちに、先の方から助けを呼ぶ声が聞こえてきた。
「──! ────っ!」
「……今の声は」
「パロさんだ! 急ごう!!」
声の方へと急いでみれば、治療を受けていたはずのパロがふらふらとよろめいており、立っているのもやっとな状態だった。
見たところ、侵蝕はかなり進んでいるようだ。
「ゴホッ、ゴホッ……!! き、君たちは……」
「パロさん! 大丈夫か!?」
「ぐっ……うぅ……解悩水を飲んだのに、ちっとも痛みが収まらないんだ……助けてくれ……!!」
呻きながらそう言うパロは、咳をした拍子にバランスを崩し膝をついてしまう。
「パロさん……しっかり……!!」
ファイズが何とか彼を支え、起き上がらせる。
「タクミ、そのまま支えていてくれ。私が体内のエーテルを整えてみる」
儀玄はパロに近づき、術法で侵蝕症状を後退させようと試みる。
「…………っ、はぁ、はぁ……」
「…………!これは……」
「? 師匠? どうしたんすか……?」
「……いや、なんでもない。そのまま支えていろ」
パロを見た儀玄は一瞬、驚きの表情を見せた。その様子にファイズは疑問符が浮かんだが……今は支えることに集中する。
術法により発作を起こしていたパロの咳はなりを潜め、徐々に安らかな顔になっていく。
やがて糸が切れたように、パロは眠りについた。
「お師匠さま、パロさんは……」
「ひとまずは大丈夫だが……依然として危険な状態だ。潘、悪いがパロをホロウの外まで連れて行ってくれ」
「合点だ!」
潘はパロを抱え、キャロットのデータを使ってホロウの外へと向かっていった。
「よし……私達は残りの患者を助けるぞ」
「はいっ!」
一刻の猶予も残されていない。先を急ぎ、他の患者の様子を見に行くリン達。
そこで目にしたのは──
「ぐっ……ゴホッゴホッ……」
「ゲホッゲホッ……誰か……緩和剤を……!!」
「…………これは」
パロと同じく、侵蝕の発作に苦しむ十数人の患者の姿だった。
新キャラ、タコだ!ねえ、タコタコ!ほら、凄いよ!