ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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本性

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか……!? しっかり……っ!」

 

「ぅ……うぅ……」

 

 

ホロウにいる患者には、壁に寄りかかりなんとか意識を保とうとしている者や、苦しさのあまり地面に蹲っている者まで居た。

 

 

「やっぱり、解悩水に侵蝕を緩和する効果なんてなかったんだ……!」

 

「ぐ……効果がない……?」

 

「!」

 

 

会話を聞いていた患者の一人がこちらにふらふらと歩み寄っていた。

 

 

「おい、無理に動くんじゃない」

 

「わ、私はまだ大丈夫です。それより、解悩水に効果がないとは、どういう事でしょうか……?」

 

「えっと、実はね──」

 

 

リンは患者に事の発端を説明する。話を聞いた患者は絶望の表情をあらわにした。

 

 

「そ、そんな……ロア先生は嘘をついていたんですか……?」

 

「ロア先生がどこに行ったのか、分かる?」

 

「それは……分かりません。私達に薬を飲ませたあと、数人を連れてどこかへ行ってしまったんです」

 

 

どこへ行くのかと聞いても『儀式を円滑に進める為に必要な事だ。安心して待っていてくれ』とだけ言い残し、その場を後にしたらしい。

 

待っているうちに彼らの症状は悪化してしまい、現在に至る。

 

 

「周りにいるみんな、ロア先生を待っているのに……このままじゃ侵蝕が……」

 

「おーい、みんなぁ!」

 

「! この声は……!」

 

 

声がした方から、パロをホロウの外の医療施設へ運び込んでいた潘がいくつかのダンボール箱を持ってこちらへ戻ってきた。

 

 

「潘さん! その箱は……!?」

 

「おう、ここに戻ってくる途中に拾ったんだ! 中にはなんとびっくり、大量の侵蝕緩和剤が入ってたんだよ!」

 

「何……?」

 

 

潘の言葉を聞いた儀玄がダンボール箱を開け、中身を確認する。

 

彼の言う通り、確かに侵蝕緩和剤が入っていた。

 

 

「……ロアの用意した偽物ではないようだな。しっかり保管もされていたようだ」

 

「これだけあれば足りるか……?」

 

「ああ、これだけあればとりあえずは十分だろう。でかしたぞ、潘」

 

 

リン達は手分けして、その場にいた患者たちに緩和剤や術法での治療を施した。

 

 

 

「ふぅ……ひとまずはこれで一安心ですねっ!」

 

『喜ぶのはまだ早いよ、姉弟子さん。ロア先生が連れていった患者の事も助けないと』

 

「時間は残されていない、先を急ぐぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道行くエーテリアスをなぎ倒し、先を急ぐ一行。

 

 

『警告。前方約五十メートル先に、複数の生態反応を検知』

 

『……! ロア先生はこの先だ、皆急ごう!』

 

 

手遅れになっていないことを祈りつつ、ファイズ達はロアがいる場所まで駆け付けた。

 

 

 

 

 

そこではロアが今にも患者に、注射器で薬を投与する寸前だった。

 

 

「っ!!」

 

[1・0・3][Single Mode]

 

「!? ぐわぁっ!!」

 

 

反射的にファイズはフォンブラスターを取り出し、ロアが持っていた注射器に目掛け銃撃を放ち、粉々にした。

 

ロアが怯んだ隙に、福福達は患者達を保護する。

 

ロアは前に会った時とは別人のような、忌々しいものを見るかのような歪んだ顔つきでファイズを見た。

 

 

「貴様……よくも儀式の邪魔を……! どういうつもりだ!!」

 

「どういうつもりだはこっちのセリフだ……! お前今何しようとしやがった!」

 

 

ロアは前に見た白衣ではなく、特異な服装を身にまとっている。

 

 

「その服装…………もしかして、讃頌会!?」

 

「ロア先生……貴方は讃頌会の人間だったんですね……! 皆を騙して、どうしてこんな事を……!」

 

「騙した……? ははっ、心外だな……私は始まりの主に()()()()彼らを、供物として捧げていたに過ぎない。むしろ、喜ぶべき事だろう?」

 

 

狂気的な表情を浮かべていたロアは一転、ファイズを憎しみを込めた眼で見る。

 

 

「そんな神聖な儀式を、ファイズ……貴様は邪魔をした! 始まりの主の御命に置いて、貴様に罰を与える……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──この、オルフェノクの力で!!」

 

「……っ! 何……!?」

 

 

驚く暇も与えず、ロアの顔にはかつて見たあの模様が浮かび上がる。

 

そして──

 

 

「…………コイツは」

 

「うそ、でしょ……!?」

 

 

ロアは瞬く間に姿を変え──スズメバチのような姿をした『ワスプオルフェノク』に変貌を遂げた。

 

 

「お師匠さま……これって……!!」

 

「間違いない……メイフラワーが言っていたオルフェノクとやらだ。ここで見る事になるとはな」

 

 

市長から事前にオルフェノクの情報を伝えられていた雲嶽山の面々は、さほど驚いてはいなかった。

 

しかし、何も知らない患者達は──

 

 

「ひぃっ……!? え、エーテリアスじゃない……!?」

 

「な、なんだよあいつ……!」

 

『まずい、混乱している……! リン、患者達を安全な場所に連れていこう!』

 

「分かった!」

 

 

アキラ(イアス)とリンは協力して、患者達をその場から避難させる。

 

 

「…………」

 

 

ファイズは手首をスナップさせ、目の前のワスプオルフェノクを見据える。

 

雲嶽山の三人も戦闘態勢に入る。

 

しかしワスプオルフェノクは、元より四人全員を相手取る気はなかった。

 

 

「フッ!!」

 

「っ!!」

 

「タクミくん!!」

 

 

背中の羽を羽ばたかせ、目にも止まらぬスピードでファイズを捕まえる。

 

そのまま抱えあげ、追いつけない程の速度でファイズをさらっていった。

 

 

「くっ……!」

 

 

三人は急いで追いかけようとするが…………狙いすましたかのようなタイミングでエーテリアスが出現。

 

 

「な、エーテリアスだと……!?」

 

「どうしてこんな時に限って……っ!!」

 

「落ち着け、ひとまずコイツらを片付けるぞ」

 

 

一刻も早く追いつくため、儀玄達はエーテリアスの群れと戦うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……離せっつーんだよっ!!」

 

「!!」

 

 

飛行するワスプオルフェノクに捉えられていたファイズはフォンブラスターで無理やり引き剥がし、そのまま落下。

 

 

「ハァッ!!」

 

「…………っ、フッ!!」

 

 

落下したファイズを追いかけるように襲いかかるワスプオルフェノクに、なんとか蹴りで迎撃。

 

地面に着地したワスプオルフェノクと、そのまま熾烈な肉弾戦を繰り広げる。

 

 

「はっ、はぁっ!!」

 

「っ、くっ!」

 

 

ワスプオルフェノクが右手に携えているのは、先端が赤紫色の鋭利な毒針。

 

あれを食らってはいけないのは、最早本能で察することができる。

 

 

「ふっ、たぁっ!!」

 

 

毒針をギリギリでかわしながら、ボディブローなどを反撃として叩き込んでいく。

 

 

「丁度いい……そのベルト、私が貰っておこう!」

 

「あ? なんでだよ……!!」

 

「始まりの主は、そのベルトを手にする事をお望みなのだ……!! 大人しく明け渡せば、命までは取らないでおいてやるぞ……?」

 

「……っ、随分強欲じゃねぇか、お前のご主人様……はっ!!」

 

「っ!!」

 

 

ファイズは拳を握って、ワスプオルフェノクの顔に強烈な一撃をお見舞いする。

 

吹っ飛ぶワスプオルフェノクに、さらに追撃を入れようと駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──しかし、それは叶わなかった。

 

 

『ガァッ!!』

 

「っ!? なんだと……!」

 

 

なんといつの間にか現れたエーテリアスが、ファイズを後ろから羽交い締めにしたのだ。

 

ワスプオルフェノクは醜悪な笑みを浮かべ、右手の毒針をファイズ目掛けて突き刺そうとした。

 

 

「っ…………!!」

 

 

それを見たファイズは後ろのエーテリアスを肘打ちで吹っ飛ばした後、攻撃を避けるべく身を捩らせた。

 

 

「たぁっ!!」

 

「ぐわあっ!!」

 

 

そのまま勢いよくワスプオルフェノクを乱暴に蹴り飛ばした。

 

 

[Ready]

 

[Exceed Charge]

 

 

ファイズはファイズショットを取り出し、そのままフォンのENTERキーを押す。

 

そしてトドメの『グランインパクト』を喰らわせるべく、走り出した。

 

 

「くっ……!!」

 

 

このままではまずいと悟ったのか、ワスプオルフェノクは羽を広げ、そのまま飛び去っていった。

 

 

「…………」

 

 

すんでのところで取り逃したファイズは、彼が逃げていった空を呆然と見つめていた。

 

 

 

「タクミ!!」

 

 

ちょうどその時、エーテリアス達を片付けた雲嶽山の三人がリン達と共にファイズの元へ駆けつけた。

 

 

「良かった……無事だったんですね、タクミくん……!」

 

「…………」

 

「……タクミくん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え」

 

 

福福の声にファイズは応えられず、そのまま地面へ倒れ伏せた。

 

彼の脇腹には、()()()()()大きな傷跡ができていた。

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