「始まりの主よ──ご照覧あれ!」
巨大な剣を振りかざし、メヴォラクはファイズ達へと襲いかかった。
「……っ!」
真っ先にその切っ先を向けたのは……やはりファイズだった。
[Ready]
メヴォラクの怒涛の剣撃をファイズエッジでなんとかいなしていく。
同時に、彼女が何故ファイズを狙ったのかが分かった。
(……コイツ、ファイズのベルトを破壊しようと……!)
ロアの時と言い、やはり讃頌会がファイズのベルトを狙っているのはこの為なのだろう。
ふとそんな事が頭の中をよぎるが、今は考えている暇などない。
攻撃の強さが次第に増していき、いなし切れなくなったその時──
「!ぐっ……!!」
「お前さんの相手は私だ」
ちょうど良いタイミングで儀玄が割って入り、事なきを得る。
「讃頌会は余程私の弟子にご執心なようだな」
「戯言を……ファイズは始まりの主が思い描かれる理想の世界において不要な存在。ただそれだけです」
「理想の世界……か。讃頌会はそれっぽい理屈を並べ立てるのが得意だな。それで一体何人の罪なき人々を騙してきた?」
「愚かな凡人には理解もできないでしょう。主の崇高なる意思は……!!」
メヴォラクを纏っていたミアズマはより一層濃く、禍々しいものとなっていく。
「始まりの主よ……我にご加護を……!!」
「タクミくんっ、気をつけて! メヴォラクは、また貴方を……!!」
「……っ」
依然として弱まらない殺意を以て、メヴォラクは再びファイズへと襲いかかるが──
[Jet Sliger, Come closer]
「ぐぁあっ!?」
どこからともなくやって来たジェットスライガーに猛スピードで吹き飛ばされた。
「……お前さん、そんな隠し球を」
「隠し球って程でもないですけどね」
長期戦がしたくないファイズは最初からジェットスライガーで片をつけるつもりだった。
とは言え、素早い動きのメヴォラクにそのままミサイルを当てるのは至難の業。
なので呼び出したジェットスライガーによる奇襲の体当たり、そしてそれに怯んだ隙にミサイルを一斉掃射と言う、半ば強引な手で決着をつける事にしたのだ。
ファイズはジェットスライガーに乗り込み、すかさずメヴォラクに向けて無数のミサイルを発射。
「ぐあああああっ!!」
為す術もなく、メヴォラクはミサイルの雨に呑み込まれていった。
「な、なんか凄かったですね……何はともあれ、やっつけたって事でいいんですよね……? 呆気なかったですけど……」
「…………どうだろうな」
儀玄はメヴォラクの様子を見に、彼女の元へ近づく。
瓦礫に埋もれたであろうメヴォラク。彼女はうめき声の一つすら発さなかったが……
「……その死んだふりも、始まりの主とやらから教わったのか?」
「…………黙りなさい」
「!!」
儀玄の声に応えるように、メヴォラクは剣を持ち立ち上がった。
ダメージは与えられていたようだが……効果はいまひとつだったようだ。
「あ、あの人……ぴんぴんしてますよ!?」
「なんとなく分かってたけど、やっぱりミサイルじゃ無理だったか……」
「もしかしてミアズマがアイツを守ってたって事か!」
ミサイルは一応効いてはいた。効いていただけに、メヴォラクは怒りの感情を露わにする。
「やはり何も理解できぬ凡人に生きる価値などありませんね……ここで終わらせて差し上げましょう」
メヴォラクは剣を掲げた瞬間、ホロウの空が瞬く間に赤く染まり、周りのミアズマもより凶暴なものとなっていく。
「パワーアップしやがった……!!」
「来るぞ!」
掲げた剣を振り下ろすメヴォラク。
それを見た四人は不味いと悟り、とっさにその場から飛び退いた。
直後、先程まで場所に巨大な斬撃が走り、いとも容易く地面を抉った。
「っ……!」
[1・4・3][Blade Mode]
先程よりも増した素早さと威力。
ファイズはフォトンブレイカーを持ち、臨戦態勢に入る。案の定、メヴォラクはファイズに斬りかかってきた。
「はぁっ!!」
「ぐっ……!!」
讃頌会は余程ファイズのことを警戒しているのだろう。メヴォラクはファイズを一刀両断すべく、攻撃のスピードをあげる。
しかし、雲嶽山の三人が加勢に入る。
「させませんよっ!」
「相手は私と、言っただろう……!」
「く……小癪な……っ!!」
メヴォラクは剣を横に振り、福福と潘を吹き飛ばすが、儀玄は怯む事無く攻撃を続ける。
ファイズも負けじとメヴォラクに反撃をしていく。
金と黒の墨汁と赤いフォトンブラッド、そして禍々しいミアズマ。
三つの軌跡が入り交じり、戦いは熾烈さを増していく。
「始まりの主の意思に従えば、安寧の未来を手に入れられると言うのに……!! 何故それが分からないのです!」
「数多の犠牲を経て手に入れる未来に、安寧など存在するものか……!」
「……っ、痴れ者が!!」
怒りと共に放たれるメヴォラクの一撃に、ファイズと儀玄は吹き飛ばされてしまう。
「……やはり一筋縄では行かないか」
「あのミアズマの鎧が厄介ですっ……!」
「…………師匠」
「? なんだ」
仮面越しに覚悟を決めたファイズは、儀玄達に提案する。
「俺がアイツの動きを止めますから……その隙にアイツにデカいのお見舞いしてやってください!」
「な、なんだって!? 弟弟子くん、正気か!」
「……タクミ、私がホロウに入る前に言った事を忘れたのか。自らを犠牲にするような戦法はとるな」
「大丈夫です、死ぬつもりは一ミリもないですから……だから福福先輩そんな怖い目で見ないで」
「…………」
福福はファイズをじとーっとした目で見たあと、ため息を吐いた。
「……分かりました。今回は許してあげますっ。ただし! 危なくなったら直ぐに戻る事!」
「はい!」
「この戦法はこれっきりにする事!」
「はい!」
「姉弟子からの約束ですよっ! もし破ったらガブッて食べちゃいますからね!」
「はい!」
姉弟子からの了承を得たファイズは、ファイズブラスターにコードを入力する。
[5・5・5][Standing by…]
その後、バックルからファイズフォンを取り出し……ファイズブラスターにセット。
[Awakening]
瞬く間にファイズの身体は赤い光に包まれ……ブラスターフォームへと変身した。
ファイズはフォトンブレイカーを手に、メヴォラクへと勢いよく走り出した。
「忌々しい……!!」
メヴォラクはそう吐き捨て、ミアズマを剣に纏わせて反撃に臨む。
ファイズに襲いかかる無数の衝撃波。それをフォトンブレイカーで全て弾き落とし──
「はぁっ!!」
「ぐぅっ……!?」
メヴォラクに接近した後、フォトンブレイカーの刃を彼女に突き刺し、
そのチャンスを儀玄は見逃さず、札を取りだし術法による一撃をメヴォラクにお見舞いする。
[5・2・1・4][Faiz Blaster, Discharge]
「っ!?」
そしてファイズはブラッディキャノンの反動を利用し、儀玄の攻撃が届くギリギリのタイミングでメヴォラクの元から離脱。
結果、巻き込まれることなく大ダメージを与えることに成功した。
「……っ、主の加護が……!」
「やりましたっ! 周りのミアズマが一気に減りましたよ!」
「……良いでしょう。ならば……!」
メヴォラクは宙高く浮き上がり、無数のミアズマの塊を操り始める。
一個一個が巨大なそのミアズマを……彼女は儀玄達に向け、一斉掃射した。
「ここで終わりです、雲嶽山……!!」
「!!」
咄嗟に儀玄は術法による盾を張り、皆を守る。先程の比にもならない量のミアズマが、休む間もなく儀玄達へと襲いかかる。
「師匠!」
「…………!!」
死力を尽くし、攻撃を防ぐ最中──
『……儀玄。貴女は、私や皆と違う』
(…………? これは……)
ミアズマによる幻聴か否か、儀玄の耳には確かに声が聞こえた。