ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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町の未来

 

 

 

 

 

(これは──聞き間違えるはずもない。紛れもなく姉様の声……!! しかし……)

 

 

ミアズマの攻撃を防ぐ最中、聞こえてきたのは姉である儀降の声。

 

もう聞こえるはずのないその声を耳にし、儀玄は険しい表情を浮かべる。

 

 

『貴女の才は、皆を守る武器になる。いずれ、私達より遠くへ──』

 

(これはミアズマの見せる幻……惑わされるものか……!)

 

 

「……師匠……!」

 

 

儀玄を呼ぶファイズの声も、届かない。

 

幻聴を振り切り、皆を守る為に精神力を削り、全力を尽くす──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────見知らぬ人よ

 

 

「……!」

 

 

気づけば、彼女がいたのはこの世の何処でもない真っ白な空間。

 

声がした方を振り向けば……そこには黒く大きな鳥が一羽、目の前に佇んでいた。

 

 

(これも幻か? あるいは……()()の記憶の世界か)

 

 

その鳥は大きな翼を広げ、静かに告げる。

 

 

 

────どうか、妹に伝えて欲しい

 

────あの子の姉は、偉大でも……ましてや、高潔でさえもなかった

 

────今夜、悲劇を止めないと……私の儀玄が、エリー都と共に散ってしまう

 

 

「…………! 姉、様」

 

 

 

────全ては……儀玄の為に……あの子には、どうか生きて欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────それが、私たちの約束

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミアズマの強大なドーム状のエネルギーに呑み込まれる儀玄達。

 

それを見て、メヴォラクはほくそ笑んだ。

 

 

「主よ……我が使命は遂行いたしました。雲嶽山の者共も、これで終わり──」

 

 

メヴォラクがそう言った瞬間……暗黒のドームから、黄金の光が飛び出す。

 

 

「!? 馬鹿な……!!」

 

 

それを見て、メヴォラクは狼狽える。

 

溢れんばかりのミアズマのエネルギーは、その光に呑み込まれていき──跡形もなく霧散した。

 

 

「…………! これは……」

 

 

ミアズマに呑み込まれたはずの儀玄達は傷一つ付いておらず、それどころか全てのミアズマを浄化しかねないほどのエネルギーで満ちていた。

 

渦巻くエネルギーの中心にいるのは──

 

 

 

 

 

「──姉様」

 

 

青溟鳥を羽ばたかせ、儀玄は強大な気を身にまとい、目の前の敵を見据える。

 

 

「こんな形で貴女を識り、貴女になるとは」

 

やがて青溟鳥と儀玄が一つと成り、彼女の背中に黄金の翼が顕現する。

 

 

 

 

 

「私こそは雲嶽山第十三代宗主──儀玄!」

 

「……っ、おのれ……!!」

 

 

激昂したメヴォラクは剣を握りしめ、儀玄へと襲いかかる。

 

しかしメヴォラクの攻撃はもはや通用せず、赤子をあやすかのように軽々と全ての攻撃をいなされていく。

 

そして──

 

 

「破ッ!!」

 

「っ!!」

 

 

持てる全てを注ぎ込み、儀玄はメヴォラクへ渾身の一撃を叩き込んだ。

 

放出されたエネルギーと共に吹き飛ばされるメヴォラク。やがてメヴォラクは動かなくなり、その場で消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

元凶を倒し、解悩水に関する事件に終止符を打った儀玄率いる雲嶽山。

 

集会にいた労働者達も、讃頌会の儀式を目撃した事により急いでホロウを脱出。

 

結果、犠牲者をゼロに抑えることが出来た。

 

 

 

 

そして適当観の正門前。

 

リンと儀玄は、エリックと話していた。

 

 

「ひとまず犠牲者が出なかったのは何よりだけど……解悩水を飲んだ人が無事と言い切れるかは、検査を受けるまでは分かんないよね……」

 

「該当者は全員緊急で検査を受けに行く事になったから、手遅れになるって事はないはずだ。検査費用はポーセルメックスが全額負担してくれるらしいし、これで一安心だな……」

 

「そうか……まあ、無事なら良いんだ」

 

「雲嶽山の先生方、本当にありがとう。旧都陥落の時と同じように、貴方たちは皆を助けてくれた。本当になんてお礼をしたら良いか……」

 

「礼など良い。雲嶽山の宗主として、使命を果たしたまでだ」

 

「いやいや、それじゃ俺の気が収まらない! 是非なにかお礼を……!!」

 

 

エリックの一言を皮切りに、労働者達が儀玄の元へ詰め寄ってくる。

 

 

「私からもなにかお礼を……!」

 

「そうだ、雲嶽山に弟子入りさせていただけませんか!? 僕、掃除は得意で!」

 

「それなら俺も!」

 

「私も!」

 

「…………」

 

 

儀玄は彼らに応える事はしなかった。代わりに彼女は彼らを軽く手で制した後──

 

 

「ゴホッゴホッ……!! く……」

 

「!!」

 

 

激しく咳込み始めた。急に様子が変わった彼女に労働者達は慌て出す。

 

 

「だ、大丈夫ですか……!?」

 

「皆落ち着いて! 師匠はホロウで戦ったばかりなんだから、ちょっと休憩させてあげて!」

 

「あ……た、確かに」

 

 

間に入ったリンにそう言われたエリック達は申し訳なさそうな顔でその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……すごい勢いだったね。ってそうだ師匠! 体は大丈夫!?」

 

「ん? ああ、問題ない」

 

「えっ?」

 

 

先程の様子が嘘だったかのように、儀玄はケロッとしていた。

 

 

「…………師匠、もしかしてその場しのぎの為に仮病使った?」

 

「仮病じゃないぞ。雲嶽山に伝わる術法だ」

 

「……なんか前にも似たような事してなかった?『散財戒めの呪い』とか言って」

 

「そうだったか?」

 

 

 

そんな会話をしている時、リンのスマホから着信音が鳴った。画面を見てみれば……

 

 

「ダミアンさんからだ!」

 

「アイツか……繋げてみろ」

 

 

スピーカーモードにし、電話に出る。

 

 

『ご機嫌麗しゅうございます、雲嶽山の皆さん。言伝にてお聞きしたのですが……なんでも讃頌会の司教を撃退したのだとか』

 

「ああ、そうだな」

 

『左様でございましたか。衛非地区……そしてポーセルメックスの危機を救ってくださった雲嶽山の皆様方には、頭が上がりません』

 

「はぁ……相変わらず調子のいい人だね、ダミアンさん」

 

『何をおっしゃいますやら。讃頌会の根源が絶たれた訳ではないとは言え、雲嶽山の協力により災厄の芽を摘む事が出来たこと……心より感謝しているのですよ』

 

「まあ……お前さんの心持ちがどうであれ、労働者達の待遇を改善してくれれば、私から言うことは何もない」

 

『ご安心ください。弊社従業員のさらなる福利厚生充実のため、より多くのリソースを確保していく所存です』

 

 

それから少しした後、ダミアンとの通話を終了させた。彼とは、これから長い付き合いになるかもしれない。

 

 

「……まあ、ひとまず今回の件についてはこれで解決って事でいいのかな?」

 

「あくまで()()()()についてはな。衛非地区に長く根を張ってきた讃頌会がこれからもたらす悪影響については、これからも注意深く警戒しなければならん」

 

「確かにあの地下研究所とか、タクミが拾った変な物体とか、分からない事がいっぱいあるもんね……って、あれ?」

 

「どうした」

 

「そう言えばタクミと福福先輩は? さっきから姿が見えないけど……」

 

「福福は……タクミが怪我をしていないか確かめるとか言っていたな」

 

「…………」

 

 

儀玄とリンはタクミがいつも寝ている部屋へと向かう。

 

扉を開けると──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身裸のタクミと、彼の服を手に持った福福がそこにはいた。

 

 

「…………タクミ? 福福先輩??」

 

「……何をしている」

 

「あ、姉ちゃん、師匠! 二人からもなんか言ってやって!!」

 

「な……何が??」

 

「お弟子ちゃん、お師匠さま、止めないでください……これは姉弟子として、やらなきゃいけない事なんですっ!」

 

「やらなきゃいけないなんてこたねーだろ!」

 

 

福福曰く、今回からはホロウから出たあと必ず怪我の状態をチェックするとタクミに言ったらしい。

 

そして現在、怪我のチェックをしたいからとタクミに着ている上の服全てと、履いているズボンを脱ぐよう言っている最中だと言う。

 

 

「あたし、気づいたんですっ! 弟弟子であるタクミくんの体の調子を確かめるのは姉弟子の役目だって! その為にタクミくんの体を見る事は恥ずかしい事なんかじゃないって!」

 

「その割には随分と恥ずかしそうだが。顔が赤いぞ」

 

「弟弟子の為なら多少の恥など気にしませんっ!」

 

「気にして福福先輩! 俺の恥も気にして!! 上の服ならともかく、ズボンを脱ぐ必要は──ちょ、やめて! 引っ張らないで!」

 

「だって脱がなきゃ下半身の怪我が分からないじゃないですかっ!」

 

 

今福福は正気ではない。弟弟子への過保護っぷりが暴走している。

 

そう思ったタクミは二人に福福を説得するよう懇願した。

 

 

「「…………」」

 

 

それを聞いた二人は──

 

 

「じゃ、後はよろしくね福福先輩!」

 

「姉ちゃん!!」

 

「程々にしてやれよ、福福」

 

「師匠!!」

 

「それでは姉弟子チェック行きますよ!!」

 

「福福先ぱぁぁああい!!」

 

 

 

その後、なんとかズボンだけは許してもらえた。




終始過保護な姉弟子ちゃんでした
次回から番外編を挟み、2-2章へ突入します!
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