ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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プレゼント

 

 

 

 

 

蒼角からノックノックで遊びに誘われたのは、昨日の夜の事だった。

 

なんの用事かは特には言われなかったが、大方どこかへ食べに行きたいのだろうと、タクミは集合場所であるルミナスクエアへと向かった。

 

しかし──

 

 

 

「え、ごはん? もちろん後で食べるよ! でも、先にルミナモールに行ってもいい?」

 

 

こう言ってはなんだが、少し意外だった。

 

蒼角と一緒に出掛けてやる事と言ったら、ほぼ確実に食べ歩きだった。

 

今回もそうなのだろうとタクミは潘の制止を振り切り、今日の朝食は取らなかったのだ。

 

 

ルミナモールに入り、蒼角に連れられ入った場所は飲食店……ではなく、コーヒー豆などを売っている店だった。

 

 

(あれ……蒼角ってコーヒー飲むっけ?)

 

 

タクミの記憶では、蒼角はコーヒーを好んで飲むようなタイプではなかったはずだ。

 

最近コーヒーにハマり始めたのだろうか。そんなタクミの考えをよそに、蒼角は真剣な表情でコーヒー豆を選んでいる。

 

 

「うーん…………」

 

「……」

 

 

棚に並んである商品と数分ほどにらめっこをした末、彼女は──

 

 

「あ」

 

 

そのまま逃げるように店を出ていってしまった。慌ててタクミは後を追う。

 

 

 

 

 

 

次に彼女が向かったのは、調理器具やキッチン雑貨などを売っている店。

 

 

「むむむ……」

 

 

分かりやすく声に出しながら悩む蒼角。歩きながら、様々な商品を見て回っている。

 

 

(今度はキッチン用品店? 料理もするのか……?)

 

「これ、なんに使うのかなぁ……」

 

(いや……これも最近ハマり始めたって感じかな)

 

 

蒼角の意外な一面を発見したタクミ。彼女が料理をする光景を想像していると、蒼角から声をかけられる。

 

 

「ねぇ、タクミ」

 

「うん?」

 

「タクミは……誰かにプレゼントとかすることはある?」

 

「え?」

 

 

彼女からの突然の質問。意図は分かりかねるが、とりあえず普通に答える。

 

 

「……そうだな。あるよ、もちろん」

 

「ホント? どういうのをプレゼントしたりするの?」

 

「去年の誕生日、姉ちゃんには寝室に飾るぬいぐるみ、兄ちゃんにはパソコンの周辺機器をプレゼントしたな」

 

「シューヘンキキ?」

 

「マウスとか、そういうのだよ。蒼角もオフィスで柳さん達が使ってんの見た事あるだろ?」

 

「あ……うん、あるかも」

 

「それにしても、なんで急にそんなこと聞くんだ?」

 

「え!?」

 

 

タクミにそう聞かれた蒼角は、分かりやすくしどろもどろとし始める。

 

 

「な、なんでもないよ……? ただ、なーんとなく聞きたかっただけ!」

 

「そうか?」

 

「そうそう! あー、蒼角そろそろお腹が空いたかも! 一緒にご飯食べに行こっ!」

 

「あ、ちょ──」

 

 

タクミの返事を待たず、蒼角は早歩きで飲食店へと向かっていった。

 

何か様子がおかしいとは思いつつも深入りはせず、置いていかれないよう小走りで追いつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、聞いてしまった。

 

 

 

「ナギねえへのプレゼント、何がいいかなぁ……」

 

 

「!」

 

 

蒼角がここに来た理由を。

 

小さくそう呟いた後、蒼角は隣のタクミの顔を見る。そして、ハッとした表情を浮かべた。

 

 

「……!! え、えと……き、聞こえちゃってた……??」

 

「あ、うん……ごめん」

 

「あう……」

 

 

先程色々な店を回っていたのは、柳へのプレゼントを選ぶためだったのだ。

 

聞いてしまったのは決してわざとではない。

 

そのまま聞かなかったふりもできたが、悩んでいる蒼角を放ったらかしにはできなかった。

 

 

「…………蒼角、もし良かったらだけどさ。柳さんへのプレゼント選び、協力させてくれないか?」

 

「え、いいの? 蒼角が勝手に悩んでることなのに……」

 

「良いんだよ、別に。恩を着せるつもりはないし、こういう時は雑に友達を頼っていいんだ」

 

「……! そうだよね……ありがとう!」

 

 

それから蒼角に話を聞いた。

 

どうやら彼女は普段から色々としてもらっている柳へ、感謝のプレゼントを贈る為にルミナモールに来たのだそうだ。

 

タクミを誘ったのは、普通に遊びたかったと言うのもあるが、彼ならどんなプレゼントをするのかと言うのを知るという目的もあったらしい。

 

 

「ナギねえにはさぷらいずがしたくて、皆には内緒にしてたんだ。でも……一人じゃ中々良いのが決まらなくて」

 

「そう言う事だったのか……」

 

「ナギねえが喜びそうなコーヒーの豆の種類とか、いつも使ってるお料理の道具とかをプレゼントしようと思ったけど、全然分からなかったの……」

 

 

コーヒーの種類や調理器具等は、タクミが選ぼうにも何が必要なのかは分からない。

 

ちなみに蒼角が前回柳に送ったのは服、前々回はバッグ、その前はあんぱん詰め合わせだった。今回はそれらに被らないようプレゼントを選びたいらしい。

 

悩みに悩む蒼角。聞こえてきた空腹の音にも気付かず、熱が出そうな程に考え込んでいる。

 

 

「ナギねえのプレゼント……うーん……」

 

「…………蒼角」

 

「?」

 

「考えるのは、なんか食ってからにしよう。腹減ったまま悩んでもアレだしな」

 

 

 

 

そのまま、ルミナモール内のファミレスでハンバーグを注文。ここのハンバーグはなかなかに美味しいと評判らしい。

 

悩んでいたからか先程まで元気がなかった蒼角も、ハンバーグを口にした途端勢いよく食らいつき、そのまま平らげてしまった。

 

 

「ふー! ごちそーさま!!」

 

「美味しかったか? 満腹……にはなってないだろうけど」

 

「うーん……確かにお腹いっぱいじゃないけど、お腹いっぱい!」

 

「え、どういう事?」

 

「分かんない!」

 

 

まあ元気を取り戻してくれたのならそれでいい。プレゼントの件が解決したら、改めて食べ歩きを再開しよう。

 

そしてプレゼント選びの為、ルミナモールの外へと出る二人。

 

 

「プレゼントかぁ……なかなかいいものが思いつかないよ……」

 

「そうだな……あ!」

 

「?」

 

 

タクミはとある店を見て、何か思いついたような表情を浮かべた。

 

彼の視線の先にあるのは……ガーデニングショップ『朝露』だった。

 

 

「……あ、そうだお花だ! お花をプレゼントすればいいんだね!」

 

「よし、早速行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『朝露』の店主、ランは蒼角の話を一通り聞いた。

 

 

「────なるほど、お世話になっている方へのプレゼント、ですね?」

 

「そうですね」

 

「でしたら、フラワーアレンジメントはいかがでしょう?」

 

「フラワーアレンジメント、ですか?」

 

「ええ、少し前にオーダーメイドを開始したんです。ご自分で作成することも出来ますよ。蒼角さんはどうしますか?」

 

「うーん……お花の事はよく分かんないけど、あれんじめんと? って言うの、やってみる……!」

 

「ふふっ、承知しました。タクミくん、少し待っていてくださいね」

 

「あ、はい」

 

 

張り切る蒼角はランと一緒に店内へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして数十分経ったあと、植木鉢を持って蒼角は外へ出てきた。

 

 

「出来たよタクミ! これ、どうかな……?」

 

 

蒼角はタクミに自身で飾り付けた花を見せる。

 

所々で歪さはあるが、完全初心者にしてはかなりよく出来た飾り付けだった。

 

植木鉢に植えられていたのは『貴方に出会えて心から良かった』という花言葉を持つ五本の白バラと、『純粋な愛』などの意味を持つ赤いカーネーションの二つ。

 

あくまで素人目線だが……シンプルな配色が、なんと言うか蒼角らしいストレートな愛情を表しているようだった。

 

 

「蒼角……お前すげーセンスいいじゃん」

 

「そ、そうかな? えへへ……これでナギねえも、喜んでくれるよね?」

 

「ああ、間違いない。絶対喜んでくれるよ」

 

「何の話をしているんですか?」

 

「ウワーーーーーーッ」

 

 

タクミの後ろにはいつの間にかナギねぇこと柳が立っていた。

 

 

「あ、ナギねえ! ナギねえにね、渡したいものがあるの!」

 

「渡したいもの?」

 

「はい、これ!」

 

 

蒼角は先程作ったフラワーアレンジメントを柳に手渡す。

 

 

「……これを、私に?」

 

「うん! 蒼角が自分で作ったんだ! ナギねえ、いつもありがとう!」

 

「………………」

 

 

柳は蒼角の言葉に何も言わずに立ち尽くした後、そのまま勢いよく蒼角を抱きしめ始めた。

 

 

「わわっ、な……ナギねえ? どうしたの?」

 

「…………タクミくん」

 

「はい」

 

「申し訳ありませんが……ティッシュ箱、ありますか? 二箱ほど……」

 

「あるわけないでしょ……」

 

 

顔は見えないが、少なくとも感極まっていることだけは伝わった。

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