ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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遊園地②

 

 

 

 

 

気を取り直し、店内でお土産を選ぶ。

 

色々なものが売店にはあるが、やはり一番の定番はあれだろう。

 

 

「ねぇ、タクミは何選んだの?」

 

「俺は……菓子折りかな。姉ちゃんは?」

 

「私はね……ぬいぐるみ!」

 

「ぬいぐるみ?」

 

「うん、適当観に飾ったら……なんか良い感じになりそうかなって!」

 

 

確かに、今の適当観を少しでも賑やかにするには必要なものかもしれない。

 

 

「まあ、師匠さえ良ければ……だけどね。お兄ちゃんは何を選んだの?」

 

「僕は……食器にするよ」

 

 

アキラが選んだのはこの遊園地のマスコットキャラクターが描かれた皿やフォークなど。

 

 

「別に食器が足りていない訳では無いけど、多いに越したことは無いはずだ……多分」

 

「喜んでくれると良いんだけどな……なんか急に不安になってきた」

 

「うーん、それは私も思ったけど……まあ、大丈夫でしょ!」

 

 

儀玄は『お前さん達がくれるものなら何でも嬉しい』と言っていたが、だからと言って適当に選んで良い訳ではない。

 

菓子の種類、ぬいぐるみの種類、食器のデザインなど……なるべく彼女らの好みに合うよう選んだつもりだが、気に入ってくれるかは分からない。

 

まあ、土産とはそういうものだ。割り切った三人は会計へと進む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出たあと、引き続き遊園地を回っていると、再び見知った顔に出会う。

 

 

「やっほ」

 

「こ、こんにちは!」

 

「やあ、エレン、カリン。奇遇だね」

 

 

二人はいつものメイド服ではなく、カジュアルな服装をしていた。

 

 

「二人もここに遊びに?」

 

「そ。リナがさ、スーパーのくじ引きで二人分の遊園地の無料券当てたんだよね」

 

「それで、ライカンさんが私とエレンさんにお休みをくれたんです。『たまには二人で羽を伸ばしてきなさい』って言われて……」

 

「あ、そうだ。アンタたちも一緒にアトラクション乗る?」

 

「いいよ! 何にする?」

 

「んー……それは決めてないんだよね。カリンちゃんは何がいい?」

 

「えっ!? え、えーと……」

 

 

カリンは手に持ってあるパンフレットをしばらく見た後、とある箇所に指を差した。

 

 

「か……カリン、メリーゴーランドに乗ってみたいです……!」

 

「良いじゃん。あたしもこれに賛成」

 

「よし、なら決まりだな。そこに行こうぜ」

 

「あれ……でもタクミ、良いのかい? またさっきみたいに気分が悪くなるかもしれないよ」

 

「大丈夫だよ。さすがにメリーゴーランドじゃ酔わないって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、タクミ様! 大丈夫ですか……!?」

 

「チクショウ……! メリーゴーランドにはもう乗らない……!!」

 

「だから言ったのに……」

 

 

ジェットコースターよりもスピードが緩やかだからと高を括っていたらこのザマである。

 

思ったよりもスピードが出るし、思ったよりも揺れるしで、酔うには十分過ぎるほどの乗り心地だった。

 

 

「あぅぅ……申し訳ございません……! カリンがメリーゴーランドに乗ろうと提案したばっかりに……!」

 

「カリンが謝る事じゃない……三半規管がクソザコな俺が悪いんだ……」

 

 

思えば以前ビビアンと一緒にモーターボートに乗った時もかなり気分が悪くなっていた記憶がある。

 

 

「えーっと……これからどうする? 一人ダウンしちゃったけど」

 

「ごめん……俺の事は気にしないでみんなで楽しんできて……」

 

「またお化け屋敷行く?」

 

「行くわけねぇ!!」

 

 

今度は普通にベンチで座って休む事にする。タクミが遊園地で楽しめるアトラクションは、最早ゴーカートぐらいしかないのかもしれない。

 

 

(そうだ……自販機で飲み物買おう。なんか飲んだら気分良くなるかも……)

 

 

そう思ったタクミは自販機を探すため、ベンチを立とうとする。すると……

 

 

「……?」

 

「……」

 

 

いつの間にか隣に座っていた見知らぬ女性と目が合った。

 

灰色の瞳に、白い服。その女性はタクミを見つめたまま一言も喋らない。

 

 

「……えと、俺に何か……?」

 

「…………」

 

(誰だ、この人……てかなんでさっきから何も喋んないんだ……?)

 

 

どうすればいいか迷っていると、女性はいきなり立ち上がり、そのままどこかへ歩き出す。

 

そして立ち止まって振り返り、タクミに向かって手招きし始めた。

 

 

「…………」

 

「……こっちに来いって?」

 

 

タクミもベンチから立ち、彼女の後を着いていくことにした。

 

 

(……あれ? なんで俺、なんの疑問もなく知らない人に着いて行ってるんだ……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まあ、いっか)

 

 

タクミは女性にひたすら着いていく。彼女がどこに向かうのか、見当もつかなかった。

 

それにも関わらず、タクミは着いていく事をやめなかった。

 

やがて二人は、とある場所にたどり着く。

 

 

「…………観覧車?」

 

「…………」

 

「え、ちょっと」

 

 

周りには誰もいない。行列はなく、それどころか係員の一人もいない。

 

女性は空いているゴンドラに入り、再びタクミに向かって手招きをする。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

タクミは彼女の行動に疑問を抱くこともなく、同じゴンドラに入り、女性の向かい側に座る。

 

そしてゴンドラに入って間もなく、ひとりでに動き出す観覧車。

 

 

「高いな……」

 

「…………」

 

 

次第に小さくなっていく景色。それに見とれていると……女性がいつの間にか隣に座っていることに気がついた。

 

 

「…………?」

 

「…………」

 

 

女性は至近距離まで顔を近づける。タクミは何故か、目を逸らすことができなかった。

 

そして彼女はタクミの両頬に手を添え──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこりとわらった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タクミ!!』

 

「えっ」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえ、タクミは我に返る。直後、窓から眩い光が差し込んできた。

 

窓の外にいたのは──儀玄だった。

 

 

「!? 師匠、なんでここに……!?」

 

「……っ!」

 

 

儀玄は彼の問いには答えず、無理やりゴンドラの扉を破壊し、タクミを抱きかかえる。

 

 

「えっ!? ちょっ──」

 

 

儀玄は黒い翼を広げ、そのままタクミをゴンドラの外へと引きずり出した。

 

瞬間、タクミの視界が一面真っ白となっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

「あっ! タクミくん!!」

 

「え、福福先輩……?」

 

 

目が覚めるなり視界に入ったのは、すっかり見慣れた姉弟子の顔。

 

 

「ようやく目を覚ましたか……」

 

「師匠も……なんでここに」

 

「私が呼んだの。戻ってきたらすっごいうなされてたんだよ? 心配したんだから……」

 

 

どうやら自分は寝ていたらしい。上体を起こすと、アキラとリンも心配そうな顔でこちらを見ていた。

 

タクミは先程までの記憶を必死に呼び起こす。

 

 

「……さっきまで乗ってた観覧車は……?」

 

「……観覧車だと?」

 

「観覧車? タクミ、今日観覧車は乗ってないでしょ?」

 

「え……えぇ……? まさか夢?」

 

「夢って、何の夢を見たんだい?」

 

 

タクミは先程自分の身に起こった事を皆に説明する。

 

 

「……白い服の女に、か。どうやら、ただ悪夢にうなされていたわけではないようだな」

 

「何かの怪異に魂を連れていかれそうになった、とか……?」

 

「私は霊媒師じゃないから詳しい事は知らん。ただ、術法で叩き起こすのがもう少し遅かったら、結構危なかったかもしれんな」

 

「全く……貴方は心配ばっかりかけて! 今度からは、知らない女の人に着いてっちゃいけませんよっ!」

 

「いやそれは……す、すいません」

 

 

小学生みたいなこと言われたが、ぐうの音も出ない。それに自分でも何故着いて行ったのかが分からない。

 

というか、身の毛がよだつような体験をしたのに、イマイチその実感が湧かなかった。

 

 

「まあ、話を聞く限り今回は巻き込まれちゃったって感じみたいですし、許してあげますっ。それじゃ、行きましょう! 今度は私も一緒に遊びますっ!」

 

「福福先輩?」

 

「どうしました?」

 

「なんで手を繋ぐんだ」

 

「勿論はぐれない為ですよ?」

 

「いや、そこまでする必要は」

 

「ありますよっ! あ、そんなに心配なら腕を組みましょうか!」

 

「ちょっと!?」

 

 

有無を言わさずタクミの片腕にがっちり抱きつく福福。そしてご満悦な表情を浮かべる。

 

 

「えへへ……あれ、タクミくんどうしました?」

 

「いや……だから、別に腕を組む必要は……つーか、なんかさっきから視線を感じるんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 

(さっきの着ぐるみだ……!!)

 

 

怪異よりも何倍も怖く感じた。

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