ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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泅瓏囲へ

 

 

 

 

 

泅瓏囲。

 

澄輝坪の下層の海辺にあるエリア。小さな町ではあるが、たくさんの人が住んでいる。

 

タクミはアキラとリンに事情を説明し、柚葉達と一緒に聞き込みをするため泅瓏囲へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

──向かうことにしたのだが……

 

 

「一時休止中……?」

 

 

適当観のすぐ側にあるエレベーター。そこから下層にある泅瓏囲に行けるはずなのだが、『現在使用できません』という看板が立っていた。

 

 

「あれ〜? おかしいなぁ……つい最近修理が完了したって聞いたんだけど……」

 

「修理は完了してるはずだ。ただ、どういう訳か使うことはできなくなってるみてぇだが」

 

 

エレベーター付近にはまだ作業員達がいる。作業員の一人は、黒い服を着た緑髪の女性と話している。

 

彼女は作業員ではないようだが……

 

 

「ねぇタクミ……あそこにいるのって、イゾルデさんじゃない?」

 

「イゾルデさん?」

 

「ほら、晩餐会の時にいたでしょ? 防衛軍の研究顧問の人!」

 

「あー……いたな」

 

 

タクミ達はイゾルデと作業員の会話をこっそり聞いてみる。

 

 

「エレベーターはまだ使えないのか?」

 

「申し訳ありません。安全上の理由で、衛非ロープウェイは一時運行を休止しております」

 

「安全上の理由?」

 

「詳しい事は自分の方も分かってはおらず……ただ、ポーセルメックス社の窓口にお問い合わせして頂ければ、詳しいご案内ができるかと」

 

 

二人の会話を聞き、リン達は顔を見合わせる。

 

 

「ポーセルメックスが、エレベーターを使えなくしてるって事?」

 

「そうみたいだね。ま、大方『余計な事』を聞かれないためにそうしたんだろうけど」

 

「エレベーター以外に泅瓏囲に行く道はあるのか?」

 

「勿論あるよ。ただ、結構遠回りになっちゃうけどね」

 

 

どうやら澄輝坪上層にある道路から行けるらしい。かなり距離があるみたいだが、問題はないだろう。

 

 

「それじゃ早速行くか」

 

「え、大丈夫? ホントに遠いよ?」

 

「大丈夫だって。体力はそれなりにあるし」

 

「そうそう。いざとなったらおぶって貰うから大丈夫!」

 

「最初からおぶる気はないからな」

 

 

 

ひとまず今後の行動を決めたあと、柚葉と真斗は泅瓏囲への道に障害物が無いかを先に確かめに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

準備を済ませた後、タクミとリンは街の上層にある道路まで向かう。

 

ちなみに念の為、アキラもイアスに同期して同行する事にしている。

 

 

「ねえ、タクミ」

 

「?」

 

「さっき見せてくれたオブスキュラの欠片だけどさ……触った時、なんか凄い嫌な感覚がしたんだよね」

 

「嫌な感覚?」

 

「うん……なんかサクリファイスを目の前にした時みたいな感覚だったんだ」

 

「マジかよ……オブスキュラから?」

 

「そう」

 

 

ただの実験用機材に感じたが……もしかしたら、想像以上に厄介な事情が隠されているかもしれない。

 

何はともあれ、泅瓏囲に行って調べるしかないだろう。

 

話しているうちに、柚葉と真斗と合流した。

 

 

「お待たせ、二人とも」

 

「おっ、ナイスタイミング!」

 

「山道の方はどうだった? 何かあった?」

 

「押忍、実はっスね……この先に警備ロボが巡回してるみてぇで……ダミアンの野郎、この道の事もしっかり気を回してたみたいっス」

 

「讃頌会の残党がここから来るかもって名目で、山を下る道を封鎖してるみたい。おまけに真斗曰く、その警備ロボは人間の三倍はあるんだって。あそこを素通りするのは、ちょっと骨が折れるかも」

 

「仮にぶっ壊しても、警備ロボの視覚記録のせいで簡単に足が付いちまうしな」

 

「警備ロボね……それなら大丈夫!」

 

 

リンはFairyのことを簡潔に伝える──あくまでウチには便利なAIがありますよという体で。

 

 

「なるほど……そのAIがありゃ、視覚記録も消せるってワケっすね?」

 

「そう、ロボをシャットダウンしてくれたら、後はこっちでバレないように色々しとくから!」

 

「よし! そうと決まったら、早速行こ!」

 

 

善は急げと、一行は早速出発する事にした。

 

 

 

 

 

「!」

 

 

しかしいざ行こうとしたその瞬間、タクミは何かの気配を感じた。

 

だが、振り向いても誰もいない。

 

 

「……?」

 

『タクミ、どうしたんだい? 早く行くよ』

 

「え、ああ……すぐ行く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泅瓏囲への道を少し進んだ先にて。

 

 

(そろそろ変身するか……)

 

 

ここならリン達以外誰もいないだろう。タクミはファイズに変身するべく、ベルトを取り出す──

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

タクミが取り出したのは、()()()

 

しかしベルトはベルトでも、ズボンなどに使うベルトだった。

 

 

「え……えっ、なんで!? ファイズのベルトはどこに……」

 

「探し物はこれかな〜?」

 

「あっ」

 

 

柚葉がファイズのベルトを見せびらかす。いつの間にかすり替えられていた。

 

 

(アイツ……猫又みたいな事するな……)

 

「ふーん、これが例のファイズのベルトね……ねぇタクミ、柚葉も『変身!』って言うのやってみてもいい?」

 

「別にいいけど、変身はできねーぞ。俺以外がやっても弾かれて痛いだけだから」

 

「え〜?」

 

「え〜じゃない」

 

 

タクミは柚葉からベルトを返してもらい、そのまま装着する。そしてファイズフォンを取り出し、コードを入力する。

 

 

[5・5・5][Standing by…]

 

 

「変身」

 

 

[Complete]

 

 

赤い光に包まれ、タクミはファイズへと変身した。

 

 

「それにしてもタクミ、さっきからぼーっとしてどうしたの?」

 

「え……ぼーっとしてたか、俺?」

 

「柚葉がベルトをすり替えても気づかねぇくらいにはぼーっとしてたぞ、お前」

 

「…………」

 

「あ、もしかして……さっきのお嬢様の事、気になってるんでしょ」

 

「!」

 

 

柚葉にそう言われ、タクミは図星をつかれたような表情を浮かべた。

 

 

「別に気にすることもないんじゃない? あの子は自分から関わらないって言ったんだから、ほっとけば良いんじゃない?」

 

「そりゃそうだけど……」

 

「……? 真斗くん、柚葉とアリスに何かあったの? なんか妙にトゲトゲしてるね?」

 

「あー……なんでかは知らねぇけど、柚葉はアリスって子の事があんまし気に入ってねぇみたいっすね。つっても本心は多分──」

 

「はーいそこの真斗うるさいよ〜」

 

 

 

あの時、去っていくアリスの背中には何か葛藤のようなものがあった。

 

きっと彼女も、力になりたかったのだろう。

 

しかし、彼女はあくまでポーセルメックス側の人間。関わるにも関われない事情があるのだ。

 

 

 

 

「……ま、本人は関わる気満々みたいだけどね」

 

「……? どういう事だ?」

 

「その前に、ちょっと隠れよ」

 

 

柚葉はタクミ達を連れ、物陰に隠れる。そして彼女は来た方向を指差す。

 

 

「あれ、見える?」

 

「…………! あれは……」

 

 

彼女が指を指した先には……なんとアリスが歩いて来ていた。

 

 

「さっきから誰かに着けられてる気がするな〜って思ったら、あのお嬢様……結局着いてきちゃってるし」

 

「柚葉、どうする?」

 

「んー……すこーし待ってね」

 

 

アリスはタクミ達に気づかないまま、こちら側へ歩いてくる。

 

柚葉はタイミングを見計らい──

 

 

「ばあっ!!」

 

 

「きゃああああっ!?」

 

 

軽くアリスを驚かせた。軽く……ではあったが、アリスは盛大に驚き、尻もちを着いた。

 

 

「う、浮波さん……! ビックリさせないで欲しいのだわ……!」

 

「ビックリしたのはこっちなんだけど。一応聞くけど……ポーセルメックスに雇われてる身で、なんで柚葉達に着いてきてるの?」

 

「そ、それは……」

 

 

アリスは不安そうな面持ちから一転、決意の籠った表情で柚葉達を見た。

 

 

「──私にも、オブスキュラの調査に同行させて欲しいのだわ……!」

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