ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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帰る場所

 

 

 

 

 

一方その頃、ヴィジョン爆破解体本部。

 

猫又はパールマンを連れ、今プロジェクトの責任者であるサラ長官に直接交渉を持ちかけた。

 

猫又の要求は、爆破を中止し、閉じ込められた住民たちを救出すること。そうすればパールマンの安全は保証する、と猫又は言った。

 

だがパールマンを助けたからと言って、住民が救出され、この事実が世に広まれば、ヴィジョン側の信頼は地に落ちる事だろう。

 

サラ長官は簡単に応じはしなかった。

 

しかし猫又は自身が赤牙組の者だということを明かし、さらに自分の身を差し出す事でヴィジョンに『シルバーヘッドの爪、猫宮又奈を捉えた』という功績をもう一つの取引材料にする作戦に出た。

 

自身を犠牲とし取引を成立させる。これが猫又の狙いだ。

 

しかし猫又には一つ誤算があった。

 

 

「──そうか、陰で糸を引いて爆破解体を企てたのは、あんただったんだ!」

 

 

それはヴィジョン側にとって、パールマンという存在は取引材料に値しなかったということだ。

 

 

「どうして……?ヴィジョンにとって、このプロジェクトは、人の命より大事なものだったの!?」

 

「……大事かどうか?貴女みたいな小物に尋ねる資格はないわ──無駄話をし過ぎたわね。そろそろ本題に入りましょう」

 

 

そう言ってサラ長官は一つのスイッチを取り出す。

 

 

「それはなんだ……!」

 

「この小さなおもちゃ?もちろん爆薬の起爆スイッチに決まってるじゃない」

 

 

それを聞いた猫又の顔は一気に青ざめる。

 

 

「そんな、待っ……ダメだ──!!」

 

「私からも……『存在しない住民』たちに、お悔やみを申し上げるわ」

 

 

止めようとする猫又には意をも介さず、サラ長官はスイッチを押した。

 

 

「──サラ長官。爆破の完了を確認しました」

 

「ええ、ご苦労様」

 

「ま、待てよ……ホロウに繋がるトンネルから誰か出てきたぞ!」

 

「……?」

 

 

猫又はトンネルの方を見る。そこから出てきたのは──

 

 

「ヴィジョンは命を軽んじたわ!ヴィジョンを倒すのよ!」

 

「ヴィジョンの手は血塗れだ!その体の隅々まで、罪なき一般市民の血に塗れているんだ!」

 

「いつまでも私達の口を封じられると思うな!」

 

 

ヴィジョンにより爆破エリアにより閉じ込められた住民達だった。

 

ヴィジョンへの怒りの声と共に行進を続ける。

 

その行進の先頭にいたのは、邪兎屋の三人とボンプ一匹。

 

 

「──ニコ!それにみんな!」

 

「……あら、爆破エリアから抜け出してくるなんて……中々やるじゃない。でも──」

 

 

サラ長官の余裕の笑みは未だ崩れない。

 

 

「──それで全てが公になるなんて思ってないわよね?ふふ……忘れないで、ここにはうちの人間しかいないの」

 

「……」

 

 

ニコは何も答えない。

 

 

「……命令よ。撃ちなさい」

 

 

サラ長官の一声と共に、ヴィジョンの武装部隊は一斉に銃を構える。

 

 

「そ……そんな……!」

 

「あの女、本気だぞ!」

 

 

すると、どこからかけたたましいサイレンの音が聞こえた。治安局のパトカーのサイレンだ。

 

 

「速報!速報です!あのヴィジョンに、重大な人命軽視が発覚しました!」

 

 

報道機関も現場に到着する。さらにはヘリコプターも到着。中にはヴィジョンの競合他社である白祇重工の面々がいた。

 

ヴィジョンの武装部隊を取り抑える治安局。

 

 

「ふふん、ヴィジョンが大人しく交渉に応じるわけないと思って、ホロウを出て真っ先に白祇重工に連絡したのよ」

 

 

治安局は武装部隊を取り抑えたあと、閉じ込められていた住民達を保護していく。

 

猫又がその光景を見ていると、見知った顔を見つけた。

 

 

「タクミ!」

 

「猫又?」

 

 

タクミはある場所で座っており、その頭には包帯が巻かれていた。

 

猫又はタクミの元へ駆け寄る。

 

 

「どうやらニコが上手くやってくれたみたいでよ、これで一件落着だな」

 

「う……うん、そうだな──ってそうじゃなくて!タクミ、その包帯はどうしたんだ!?」

 

「あーこれ?例のデカブツと闘った時にちょっとな。それで住民の人が手当てしてくれたんだよ。つってもかすり傷だったし絆創膏で良かった気もするけどな」

 

「──全然良くないんだけど?」

 

「えっ」

 

 

声がした方を振り向いて見ると、そこには仁王立ちをしたボンプがいた。明らかに怒っている。

 

 

「ね……姉ちゃん」

 

「……びっくりしたんだよ?タクミが変身を解除したら頭から大量の血が流れてたんだから!あんなの絆創膏で済むわけないじゃん!」

 

「た、大量って……大袈裟じゃねーか?」

 

「大袈裟じゃないわ」

 

「えっ」

 

 

タクミは再び声がした方を振り向く。今度はアンビーだった。アンビーは無表情のままこちらに歩いてくる。

 

そしてタクミの両頬を掴みじっとこちらを見つめる。凄まじい圧にタクミは狼狽える。

 

 

「ア……アンビー」

 

「あのまま手当をしなかったら、失血死してしまうリスクだってあった。軽傷とはとても言えない状態だったわ」

 

「ふぁ……ふぁい」

 

 

言い訳などさせないと言わんばかりの圧に、タクミは素直に返事をするしかなかった。

 

 

「あ……それと猫又」

 

 

アンビーは猫又の方を向く。

 

 

「貴女には、まだやってもらわなきゃならない事がある」

 

「……やってもらわなきゃならない事?」

 

「まず、貴女にはヴィジョンを罪に問うための証人になってもらう。それと──」

 

「……?」

 

「──貴女はまだ、『自分の分』を払ってない」

 

「……え?自分の分って、何のこと……?」

 

 

ポカンとする猫又。アンビーは説明をする。

 

 

「食事代よ、前に言ったでしょう。今回の依頼が終わったら、皆でご飯に行くって」

 

 

前に邪兎屋は依頼が終わったら、猫又を食事に連れて行くと言った。ビリーの奢りで、スターライトナイトのテーマレストランに行く予定だったのだ。

 

しかし猫又は特撮モノがあまり好きじゃないという事でその誘いを断っていた。

 

 

「──でもニコは、折角だからいい物を食べたいって言ったの。だから、割り勘」

 

「待って!『大事な顧客だから盛大に奢る』って言ってたのに、何であたしまで払わなきゃいけないの!?それに、あたしはそもそも行くなんて一言も……!」

 

「そう。なら正式に聞くわ──私達と一緒に、ご飯に行く?」

 

「店長たちも来るぜ!しかも、食べ放題だぞ!」

 

「……!」

 

 

その一言に、猫又は立ち尽くす。

 

 

「あたし……その、えっと……」

 

 

猫又は大粒の涙を浮かべ──

 

 

「……ほんとに好きなだけサバを食べていいなら……考えてやっても……いいぞ……っ!」

 

 

それと同時に、満面の笑みも浮かべた。

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