ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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幸運

 

 

 

 

 

海辺へ行くと、ダンテは海を見つめながら一人ポツンと佇んでいた。

 

 

「よう、ダンテ」

 

「! 真斗兄ちゃんに、柚葉姉ちゃん……どうしてここに?」

 

「ひとりで飛び出しちゃった君の事が心配だから、ここに来たの。さっき聞いたんだけど、ダンテは防衛軍に入りたいの?」

 

「……うん。けど、本当は入って欲しくないって言う母さんの気持ちも分かるんだ。叔父さんは命をかけて戦ったのに、誰も褒めてくれない……母さんだって、きっと同じくらい辛かった」

 

「……ダンテ」

 

「けど、それでも防衛軍に入りたいんだ! 入って防衛軍の悪いところを変えたい! 同じ辛い思いをする人が出て欲しくない……!」

 

 

ダンテは本気で、防衛軍に入ろうとしていた。その気持ちが、彼の目と言葉から伝わってくる。

 

 

「……もちろん、簡単な事じゃないってのは分かってるけど……」

 

「心配するな。君がその夢を諦めない限りは、道は閉ざされることは無い」

 

「イゾルデさん……! イゾルデさんもここにいるって事は、もうすぐ帰っちゃうって事?」

 

「ああ、先程ポーセルメックスから呼び出しの連絡があってね。今一度、防衛軍の腹の内を探っておきたいのだろう。それとダンテくん、母上が心配していたから、そろそろ帰ってやるといい」

 

「うん、分かった……あ、そうだ。柚葉姉ちゃん達、確か他に用事があったんでしょ? 輝磁の事で聞きたい事があるって、メローから聞いたよ」

 

「えっと……ダンテはこの輝磁の欠片のこと、覚えてる? 君が拾ったって聞いたから、何処で手に入れたのかを聞きたくて」

 

 

リンはオブスキュラの欠片をダンテに見せる。

 

 

「これ……確か三日前の午前中ぐらいに、船で釣りに出かけた時に拾ったやつだよ。岸から三キロくらい離れた沖合の小さい島らへんかな」

 

 

ダンテはそこで釣りをしていた際に、近くのホロウから欠片が島へと流れてくるのが見え、そのまま拾ったらしい。

 

 

「これは……見間違いでなければ、オブスキュラ装置の欠片だな。衛非地区で製造が行われていたと言うのか……?」

 

「どうしてこの欠片はホロウから流れてきたのかしら……?」

 

「ラマニアン島には水の流れが沢山あるから、地下に川なんかもあったりするんだよね。この欠片も、何かの拍子にに川に落ちてそのまま流れて来たんじゃないかな?」

 

 

しかし、欠片がホロウのどこから来たのか……ラマニアンホロウほどの巨大なものとなると、特定は難しい。

 

 

「ふむ……そうだダンテくん、そのよく壊れるというディニーガン、私に売ってはくれないか?」

 

「え? 良いけど……それでどうするの?」

 

「まあ、見ておくといい」

 

 

イゾルデはダンテからディニーガンを受け取る。

 

 

「イゾルデさん、ディニーガンで何をするつもりなの?」

 

「実は欠片の出処について、計算で割り出す方法があるんだ。そうだな──タクミくん、このディニーガンを岸に向けて一発撃ってくれ」

 

「え? ディニーガンを?」

 

「ああ。腕を高くあげ、岸に対して垂直に……だ」

 

 

イゾルデはたまたま一番近くにいたタクミにディニーガンを手渡す。

 

何をするつもりか全く分からなかったが、とりあえず指示通りに岸に向けてディニーガンを一発発射。

 

 

撃ち出されたディニーは引力に従って海へと落ちる。イゾルデはそれを見て、時間を計り始めた。

 

 

「あのディニーは、しばらくしたら岸辺へと流れ着く。だが潮汐と風の影響である程度位置はズレるだろう。ただ、今日のラマニアンホロウの活性レポートによれば、三日前の午前中の時とさほど変わらないみたいだね」

 

 

彼女曰く、今の季節は風速も安定しているため、時間差による影響もほとんどないらしい。

 

なんとなくやりたい事が分かった。ディニーを使って、オブスキュラの欠片の出処を探りたいのだろう。

 

 

「……でも、なんでディニーなんですか?」

 

「実はそのオブスキュラの欠片とディニー硬貨一枚の密度は、ほぼ同じなんだ。流れ着いた硬貨の騎岸の時間が分かれば、位置と海水の流れる速さから逆算し、正確な出口の場所を割り出せるはずだ」

 

「なんか……よく分かんないけど、今凄い偶然がいくつも起きたってのは分かったよ……」

 

 

オブスキュラとほぼ同じ密度のディニー。

 

そしてそれを撃てる銃がたまたまこの場にある。

 

そしてそれを利用し特定するための計算方法を知っているイゾルデがこの場にいる。

 

 

偶然が重なり、かなりトントン拍子に事が進んだ。

 

本来なら、欠片がどこから来たのかを突き止めるために、かなり苦労を強いられていたはずだ。

 

 

「もしかして、柚葉姉ちゃんがいるからじゃない!? 柚葉姉ちゃん、いつも凄い運が良いんだよね。アイスを買う度に"あたり"が出る日が一ヶ月も続いた事だってあったんだよ?」

 

「マジか……すげーな」

 

「確かに……凄い豪運なんだね、柚葉」

 

「アイスの"あたり"って都市伝説かと思ってた」

 

「そっち?」

 

 

どうやら運に関しては、タクミと柚葉は両極端の位置にいるらしい。

 

生まれてこの方、"あたり"にはお目にかかれた事がない。

 

 

「もしかしたら、欠片が流れてきたのは……柚葉姉ちゃんに必要だったからだったりして」

 

「…………!」

 

「? 何、どうしたの真斗」

 

「あーその……なんつーかな。話聞いてっと、柚葉の苗字の事を思い出してな」

 

「浮波さんの……苗字?」

 

「あーほら、パパがね……私に苗字を付けようとしたの。パパとは違う、別の苗字をね」

 

 

柚葉を引き取った宝栄は、自身の苗字である『リー』という名前では似合わないと考え、彼女を引き取った日の事をヒントに『浮波』という苗字を与えたらしい。

 

 

「その『浮波』って苗字が、柚葉のお父さんと出会ったきっかけって事?」

 

「うん、そう。柚葉はね……このオブスキュラの欠片みたいに、海からどんぶら流れてきたの。その後、泅瓏囲の海岸でパパに拾われたんだよ」

 

「流れてきた、か……船の事故とかでか?」

 

「ううん、違うよ。実はラマニアンホロウには竜宮城があってね? 柚葉、そこのお姫様だったんだ〜」

 

「えっ!?」

 

 

思いがけない単語を聞き、思わず驚愕の声を上げてしまう。

 

 

「竜宮城では、毎日幸せに暮らしてたんだけど……ある日、竜宮城に迷い込んだ人から、外の世界について色々聞いたの。それでどんな世界なのかが気になって、その人に着いてったんだけど……」

 

 

今まで外へ行ったことの無かった『お姫様』は、当然帰り方など知らず……外の世界へ行ったあと、"孤児"になってしまったのだそうだ。

 

 

「なんかアレだな……浦島太郎みたいだな」

 

「ええ。舞台が海の中ではなく、ラマニアンホロウとなっているけれど……」

 

「まあ、みたいっつーか……まんまだからな」

 

「もう、茶々入れないでよ真斗! とにかくさっき聞いた通り、とってもラッキーな柚葉ちゃんはその後、パパに拾ってもらったって訳!」

 

「へぇ……なんか色々と不思議な話だな」

 

「不思議……か。ねぇタクミ、ちょっとジャンケンしない?」

 

「? 良いけど、なんで急に?」

 

「さっき聞いたけど、タクミってなんか凄い運が悪いらしいじゃん。ちょっと確かめてみようと思って」

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「最初はグー! ジャンケン」」

 

 

「「ポン!!」」

 

「「ポン!!」」

 

「「ポン!!」」

 

「「ポン!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「────すげぇ、これで十連敗じゃねぇか……」

 

「タクミ、本当に運が悪いのね……」

 

「新エリー都全体でも指折りなんじゃないかな、タクミの不運っぷりは」

 

 

柚葉の幸運効果も相まって、タクミは見事に二十連敗を喫した。

 

いつか貧乏神というあだ名を付けられてもおかしくない。もしかしたらもう付けられてるかもしれない。

 

 

「ホントに凄いね……怪奇現象の一種なんじゃないこれ……?」

 

「もっかいやってもいいぜ。何度やっても結果は同じだ」

 

「それ負けてる側が言うセリフじゃないから」

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