ルビを修正しました
イゾルデの協力のおかげで、オブスキュラの出処を特定することが出来た。
という事で船を借り、直接泅瓏囲からホロウへと向かうことにした。
ホロウに入ったあと、川の流れに沿って上流へと進んでいく。
しかししばらく歩いても、それらしい手がかりは見つからない。
「……なあ、これ道あってるよな?」
『さっきオブスキュラの欠片ももう一つ拾ったし、道はここで合っているはずだけど……』
「あ、見て! あそこに排水管があるよ!」
「良かった……やっぱりこの道で合っていたみたいなのだわ」
排水管を見つけ、その進路通りに進んでいけば大元にたどり着けるが……地面に埋まっている排水管もあり、そう簡単にはいけない。
Fairyの力でも限界があるようだ。
「ここは輝磁を生産している工業港からはかなりの距離があるし、かなり目立たなくなっているのだわ」
『情報によれば、ここあたりには何年か前に閉鎖された材料の研究所があったらしい。ミアズマが増える前は、エーテル濃度も安全なレベルに保たれていたみたいだ』
アキラ曰く、研究所には最先端の設備が揃っており、学者が視察に来ることもあったのだそうだ。
「まさかとは思うんすけど……違法に輝磁製品を作ってんのはその研究所なんじゃないッスか……? 研究所を閉鎖したと見せかけて、工場を作ってやがったとか……」
「うわ〜、いかにもポーセルメックスがやりそうな事だね……」
「ひとまず、上流を辿って進んでこう」
そうして進んでいくうちに、リン達は早速障害にぶち当たる。
「み、道が二手に別れているのだわ……」
「見た感じどっちも上りっぽいし、水の流れもさっきの排水管に向かってるね……どっちに進めばいいかな」
「待った……皆、これ見ろ」
真斗が何かを見つけたようで、近くの地面を指さす。
地面にはカートのタイヤ跡が残っていた。
「タイヤ跡……? しかもよく見たら、なんかミアズマの跡が──」
「リンちゃん!」
「!!」
リンの背後に、バニーレックが飛びかかってきた。柚葉の呼びかけで気づいたが、今にもその巨体が彼女へと襲いかかろうとしている。
「オラァッ!!」
「っ、真斗くん!」
しかし、寸前で真斗がそれを阻止。勢いよく大剣でバニーレックを弾き飛ばす。
「この野郎……後ろから不意打ちたぁ、いい度胸じゃねぇか」
「敵は一体だけか……でもあのカエルすばしっこいんだよな……」
調査に遅れが出るくらいなら、アクセルフォームで速攻ケリをつけるべきだろう。
そう考えてる途中で、すでに真斗が動き出していた。
「くっ……テメェ大人しくしやがれ!」
飛び回るバニーレックを力づくで抑える。バニーレックはバタバタと暴れ回るが、圧倒的筋力を誇る真斗は微動だにしない。
自身よりも大きいバニーレックを抑え込むという荒業を披露している。
「ちっ、抑えるだけが限界だな……おいタクミ! 今のうちだ、ドデケェ一発をぶちかましてやれ!」
「えっ……あ、ああ!」
[Ready]
ファイズショットを装備し、ファイズはバニーレックの元へ走り出す。
[Exceed Charge]
「はぁぁっ!!」
ファイズフォンのENTERキーを押してフォトンブラッドをチャージし、バニーレックに渾身のグランインパクトをお見舞いした。
抵抗もままならないままその一撃を食らったバニーレックはそのまま『Φ』のマークと共に消滅した。
「おお、一発か……すげぇ力だな、ファイズ」
「真斗の方がすげぇと思うぞ……なんで生身でアイツをガッチリ抑え込めるんだ」
「まあ、真斗は二十キロ走っても全然バテないからね〜」
「買いかぶり過ぎだっての……ってか、んな事よりさっきのタイヤ跡についてだ! リンちゃん、さっきミアズマがどうとか言ってなかったッスか?」
「あ……うん、ほらコレ……タイヤ跡に、近くのミアズマが付着してるんだよね」
肉眼でも簡単に確認できるほどには濃い跡だが、ミアズマの濃度からして、増殖はできない。
さらに時間が経つと跡は消えてしまうはずなので、この跡は最近できたものと言う事になる。
「水の流れを追っても手がかりは掴めそうにないし……とりあえず、このタイヤ跡が近くにないか調べてみる?」
「そうだね。でも目に見えない跡もあるだろうし……そうだ、追跡の法で探せばいいんだ!」
「追跡の術?」
「うん、ミアズマが付着してるなら、術法で跡がどこまで続いてるのかが分かるはず!」
リンは早速術法を使い、タイヤの跡がどこまで続いているのかを確かめる。
やがてたどり着いた先には──
「うわ、すごい沢山のタイヤ跡があるね……」
「こんなにいっぱいあるって事は、頻繁にここをカートを使って出入りしてるってことだね」
「うん。しかもカートを使ってるって事は、何かを運んでるってこと」
しかし『ホロウから運び出している』のか、『ホロウへ運び込んでいる』のかはまだ判断が難しそうだ。
「……」
「? アリス、どうしたの?」
「このタイヤ跡……随分深いようなのだわ。カートで運んでいるものは、相当重いものなのかもしれないわ」
「あ、それ柚葉も同じこと思ってた」
「ともかく、今は結論を出すのは無理そうだね」
ファイズは周りにそれらしい手がかりがないか、注意深く見回してみる。
すると、近くに何かが落ちている事に気がついた。
「……? なんだこれ」
落ちているのはカード。拾って確認すれば、それが認証カードの類であることが分かった。
「認証カード……もしかしたら何かに使えるかもだし、持ってっとこ」
「そうだな」
ひとまずタイヤの跡を辿って先へ進み、調査していくと、エレベーターがある部屋へと着いた。
「タイヤ跡を見るに、このエレベーターを使ってカートで荷物を運んでたみたいだね」
認証カードを使用しエレベーターを使おうとしたが……認証カードが古く、更にはパスワードが必要との事だった。
『どうやらここのセキュリティはかなり厳重にできているらしい。Fairyの力でも突破はできないみたいだ』
『訂正。できないのではなく当該装置のセキュリティシステムが旧態依然としたものであり、あくまで──』
「あっ、見て! 近くに大量のダンボール箱があるよ!」
柚葉が指さしたところを見ると、確かに大量の空き箱が積んである。
近くにタイヤ跡がある事から、この箱を使って荷物を運んでいたと見える。
さらに──
「見た感じ、長らく放置されたって訳でもないし……やっぱり荷物は、ホロウに『運び込まれてた』んだよ!」
「あら……でも、箱のラベルには『建築用断熱材』とあるのだわ。もし断熱材を運んでいるとしたら、こんなに深いタイヤ跡ができるのかしら?」
「となると……ラベルはフェイクで、実際に運んだものは違うって事か」
ホロウへ荷物を運んだ人物は、カモフラージュのために、あえて箱のラベルを偽造したのだろう。
さらに手がかりがないかを調べていると、大きくへこんだ扉を発見した。
「こいつは……大分派手にやってんな」
「エーテリアスの仕業かな……? ここらのミアズマ、結構濃いし……」
「この扉をへこませられる程のエーテリアスがいるのか……?」
「いて欲しくは無いけど……可能性は高いよね。この件の裏には、間違いなく何かがある」
この後も引き続き手がかりがないか調査を進めたが……とくにそれらしいものは見つからずじまい。
そろそろ日も暮れるので、一行は調査を中断し澄輝坪へと戻ることにした。