ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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逃走

 

 

 

 

 

隙を見て、迫り来る異形からかろうじて逃げ出した一行。

 

 

「皆、作戦のおさらいね! 部屋を出て、建物の避難用の裂け目に向かう! そんで直前に近くのエーテル爆薬を起爆しつつ、裂け目に入る! 以上!」

 

「押忍! 単純明快ッスね!」

 

 

全力で走り、建物の外を目指すが……当然あの異形が見逃すはずもなく。

 

 

「ギィアアアアアア!!」

 

 

聞いているとノイローゼになりそうな金切り声を上げ、異形はリン達を追いかける。

 

壁や障害物も剣で容易く切り裂き、止まることなく追いかけてくる。

 

ファイズは少しでも異形の動きを鈍らせるために、走りながらフォンブラスターで足止めを試みるが──

 

 

「グゥゥウウアア……!!」

 

「っ! あぶねぇ!!」

 

 

異形はフォンブラスターの光弾を弾き飛ばし、お返しと言わんばかりに反撃を繰り出す。

 

 

「! 皆、裂け目が見えたよ!」

 

 

建物を飛び出し、一直線に裂け目へと走る。

 

ここに来て不安定になったのか、裂け目は少しずつ小さくなっていく。

 

残り三十メートル、二十メートル、十メートル──と、『ゴール』まで迫ったその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダダダダタダダ!!

 

 

無数の光弾が、ファイズの身体目掛け浴びせられた。

 

 

「うわぁああああっ!!」

 

「っ!?」

 

「タクミ!!」

 

 

想定外の奇襲を受け、動きが止まるファイズ。リン達も思わず立ち止まる。

 

さらに追い打ちをかけるように、異形がファイズへと掴みかかった。

 

 

「グァァァアアア!!」

 

「ぐぅっ……!!」

 

 

上から覆い被さるように異形に力づくで押さえつけられるファイズ。

 

異形はそのまま剣を突き刺さそうとするが、それだけはさせまいとファイズは全力で抵抗し、辛うじて動きを止めた。

 

 

「タクミ! 待ってろ、今助けに行く!!」

 

「!!」

 

「っ、やめろ! 引き返すな、そのまま裂け目に行け……!!」

 

「! 何言ってやがる……!」

 

「そうよ、すぐ助けに行くから!」

 

「ダメだ! コイツ以外の誰かが近くにいる……! そいつから攻撃を受ける前に早く行け、裂け目も早くしないと閉じちまうぞ!!」

 

「…………!」

 

 

ファイズの言う通り、裂け目は今にも閉じかけている状態。

 

この距離では、今から走ってもファイズだけは間に合わないだろう。

 

 

「心配すんな、後で合流する……!」

 

「……っ、分かった……皆、行くよ!」

 

「……! タクミ……!」

 

 

柚葉は一行を連れ、裂け目へと入っていく。

 

直後、その裂け目は完全に閉ざされた。

 

 

「ギィアアアアアア!!!」

 

「っ、この野郎……!!」

 

 

異形は先程よりも力を強め、剣をその身体に突き刺さんとする。

 

白い髪に隠れた眼から放たれる殺意。

 

『確実に殺す』──そんな声が幻聴として聴こえるほどの殺意だった。

 

 

このままでは力負けし、ファイズの胴体は貫かれてしまう。

 

どうにかして引き剥がさないといけない……そんな時、ファイズの目にとある物が映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(エーテル…………爆薬…………)

 

 

 

ほぼ無意識だった。

 

すぐ近くに置かれていたエーテル爆薬を見たファイズは、ほぼ無意識に手に持っていたフォンブラスターを構え、爆薬に向けて光弾を発射。

 

 

弾が直撃した爆薬は瞬く間に光を放ち、ファイズ達を飲み込んでいく。

 

そして──

 

 

 

ドゴォォォオオオン!!

 

 

空気を揺るがす程の大爆発を起こし、当然の如くファイズと異形はその爆発により吹き飛ばされた。

 

為す術なく壁に叩きつけれられ、そのまま地面に倒れ伏せる。

 

ベルトも吹き飛び、変身が解除されてしまった。

 

 

「…………」

 

 

変身していたため、死には至らなかったものの、至近距離で爆発を受けたその身体は十分なダメージを負ってしまっていた。

 

意識が朦朧とする中、なんとか上体を起こしたタクミは、一緒に吹き飛んだ異形が近くで倒れている事に気がつく。

 

異形はピクリとも動かなくなっていたが、消滅まではしていなかった。

 

 

「ぐ…………」

 

 

立ち上がろうとした瞬間に目眩がし、再び地面に倒れてしまった。

 

意識が暗闇に落ちてしまうその刹那、タクミの目に映ったのは()()()()にこちらを見つめる見慣れた姿。

 

タクミはその姿を見て、忌々しげに呟く。

 

 

 

 

 

「…………サイガ……」

 

 

 

その一言を最後に、タクミの意識は途切れた。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…………」

 

 

頭部に鋭い痛みを感じ、リンは目を覚ました。

 

 

「リン……! 良かった、目を覚ましたのね……!」

 

「ンナナ……!(リン……!)」

 

「アリス……? それにイアスも……」

 

 

意識を取り戻し、まず視界に入ったのはアリスと柚葉、そしてイアスの姿だった。

 

次に視界に入ったのは、薄暗く、見慣れない謎の部屋の壁。

 

 

「こ、ここは……?」

 

「んー……方角的には、オブスキュラ工場の裏手にある谷の辺りかな」

 

「そうなの? フェロクスに遠回りさせられていたから、向きが分からなくなっていたけど……柚葉の方向感覚は凄いのだわ」

 

「方向感覚って訳じゃないけど……まあいいや」

 

「フェロクス……そうだ、裂け目を抜けた後にアイツに会ったんだ……!」

 

「思い出した? フェロクスの部下が貴女を殴って気絶させたあと、柚葉達をこの牢屋に閉じ込めたの」

 

 

エーテルの裂け目を抜けた後、リン達を待っていたのはポーセルメックスの共同CEOであるフェロクスとその部下たちによる包囲網だった。

 

為す術なく捕まった彼女達だが、リンが雲嶽山の関係者であるのと、アリスが調査監督チームの人間であったことから、捕まって即──ということにはならなかった。

 

 

「……ダメだ、H.D.Dにも繋がんない……外と連絡が取れなくなってる」

 

「はぁ……裂け目を出たら真っ先にタクミを助けに行こうって思ってたのに、まさか私達もピンチに陥っちゃうなんて……」

 

「…………」

 

「……大丈夫よ、リン。タクミなら、きっとそう簡単にやられたりしないはずだから」

 

「……ありがとう……ってあれ? 真斗くんは?」

 

「真斗は……尋問に連れていかれてしまったのだわ。拘束を振りほどいて見張りに頭突きをしたせいで、一番最初に尋問を受けることになってしまったの」

 

「私が寝てる間にそんな事が……」

 

 

完全に囚われの身となってしまったが、いくつか分かったこともある。

 

一つ目は、ホロウに爆薬を運び込むよう指示していたのはフェロクスだったという事。

 

二つ目は、ポーセルメックスがエーテル爆薬を使って消し飛ばそうとしていたものが、例の異形だったという事。

 

 

フェロクスの部下の話によれば、その異形──ミアズマ・フィーンドは突然、オブスキュラの工場に突如出没するようになったらしい。

 

フェロクスは部下を動員し討伐を試みたが、ミアズマを吸収し回復する特性のせいで全く歯が立たず、却って被害を拡大させてしまった。

 

 

ミアズマ・フィーンドによる犠牲者が出れば、捜査の過程でポーセルメックスと讃頌会が結託していたことが公になってしまう。

 

それを恐れたフェロクスは、フィーンドを工場ごとエーテル爆薬で消し飛ばし、証拠隠滅を図ろうとしたというわけだ。

 

ポーセルメックスと讃頌会が隠した真実は依然近くにある。まだ絶望する時ではないだろう。

 

 

「何はともあれ、ここを出なきゃ何も出来ないね……H.D.Dにはまだ接続できないままだし、自力で脱出の手を考えなきゃね」

 

 

今は見張りもいない。リンが目を覚ます前に、慌ててどこかへと行ってしまったらしい。

 

脱出するなら今のうちだ。

 

まずは牢屋からの脱出、それから情報を集め、真斗の救出へと向かうことにした。

 

 

 

「……あれ? そういえば柚葉、かまちーどこに行ったの? さっきから姿が見えないけど……」

 

「かまちーなら、どっかに行ったよ。ま、でも大丈夫」

 

「え何その軽い感じ……ほんとに大丈夫なの?」

 

「大丈夫だって! だってかまちーは──」

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