隠されていたダクトを通って牢屋を脱出したリン達。
部屋に潜むエーテリアスを倒しながら、ひたすら進んでいく。
さらにダクトの中を進んでいると……
『讃頌会の物狂い共め……! 貴様らは一体何が目的だ!!』
「!!」
頭上から、フェロクスと思しき男性の怒号が聞こえてきた。
音を立てないよう、耳を澄ます。
『我が社が讃頌会と結託したのは、お前達が持っている技術を欲していたからだ! それなのにお前達は衛非地区で好き勝手騒ぎを起こし、あまつさえ我々の不利益にしかなり得ない化け物まで工場に残していきやがって!』
『…………』
『答えろ! 何が狙いなんだ!』
「これ、会話の内容から察するに……相手は讃頌会の人間……?」
「みたいだね」
どうやら今フェロクスが尋問している相手は讃頌会の一員のようだ。
問答の途中で、時折殴ったり蹴ったりしているような音も聞こえてくる。
『く……くく……司教様の遠大な計画を、凡人ごときが理解できるものか』
(司教様……!? メヴォラクはもう師匠たちがやっつけたはずじゃ……!)
『だったらそのメヴォラクに会わせろ! お前達の計画を洗いざらい吐かせてやる! やつは今どこに居るんだ!?』
『フフ……クハハハハ……!!』
『……クソッ、何故どいつもこいつも口を割らない……! おい、コイツを連れて行け。何としてでも居場所を吐かせるんだ』
『は、はっ!』
『それで……正面の倉庫に閉じ込めていた若造の方はどうした? 尋問を始めて数十分は経ったんだ、そろそろ何かの情報は吐いただろう?』
『そ……それが……二回ほど気絶させたんですが、それでもまだ一言も喋らなくて……』
『なんだと……!?』
どうやら真斗はすぐ近くにいるようだ。
隙を見て救出したいが、フェロクス達がいる以上難しい。
どのタイミングで行くべきか決めかねていると──
『ふぇ、フェロクス様! 研究所付近にいる怪物がパワーアップしました!!』
『パワーアップだと……? どういう事だ!』
『怪物を制圧しようと来た時に、やつの身体に付いていたコブのようなものが弾けて、巨大化したんです……! ひとまずは実験棟一階の空き部屋に誘導し閉じ込めています!』
『ちっ……! 讃頌会め、一体何の研究を……!』
『こちらの戦力では到底太刀打ちできません……実験棟の電力の復旧も依然半ばで、怪物が壁をぶち破って脱出する可能性もあります!』
『もういい……! お前は私についてこい、ひとまず爆薬の件から片付けるぞ』
そう言ってフェロクスは部下を連れて足早に去っていった。
「…………行ったようなのだわ」
「よし、このまま真斗くんの所に急ぐよ!」
ダクトを脱出し、正面の倉庫へと侵入。
するとそこには尋問をしているポーセルメックスの社員数人と傷だらけの真斗の姿が。
リン達を見た社員たちは、武器を持って彼女達へと襲いかかった。
……というのが、十数秒前の彼らの姿。
アリスと柚葉の手によりあっさり返り討ちにされ、一人残らず気絶させられてしまった。
制圧したあと、リン達は真斗の拘束を解く。
「真斗くん、大丈夫!?」
「ゲホッ……オレは大丈夫っすよ、こんなんかすり傷っすから」
「どこがかすり傷なの! ああもうひっどい怪我……!!」
「マジで大丈夫だっての。んな事よりも、オレとしちゃあひっきりなしに水をぶっかけられた事の方が応えたぜ」
そう言う真斗は全身びしょ濡れの姿。
気絶させられては水をかけられて叩き起こされ、尋問を受けていたようだ。
「つか、オレの事よりもここを脱出する事を考えようぜ。タクミの事も助けなきゃなんねぇしな」
「確かにそれも大事だけど……真斗はもうちょっと自分の身体をいたわって」
「そうだよ、柚葉の言う通り!」
「わ、悪い……あー、それで脱出方法はどうすんだ?」
「こ、コホン……私にいい考えがあるのだわ。タイムフィールド家の人間として、あまりお行儀のいい方法とは言えないのだけど……」
アリスは倒れている社員の男性を見ながら、近くにあるバケツを手に持つ。
「お、アリス……もしかして?」
「ええ。敵のやり口を、そっくりそのままお返しするのだわ!」
そう言ってアリスは男性目掛け、バケツの水を盛大にぶちまけた。
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バシャアン!!
「ぐっ……ゲホッゲホッ……!!」
「起きろ! 楽になりたきゃさっさと吐け!!」
バケツの水を盛大にかけられ、思わず咳き込むタクミ。しかしそんな事お構い無しに、ポーセルメックスの社員達は彼に詰め寄る。
気絶したあと、どこかの部屋へと閉じ込められたタクミは、拘束されながら尋問を受けていた。
血だらけのタクミは意識を保つのも精一杯。気絶しそうになる度に水をかけられ、殴られ、蹴られを繰り返す。
「そんなに難しい事か……? お前が持ってたベルトの場所を言えって言ってるんだ!!」
「知らない……っすよ……ここになけりゃ無いんじゃないんすか……? ゲホッ……」
「しらばっくれるな! ベルトがひとりでに歩いたって言いたいのか!!」
「…………」
男の怒号とともに尋問は続く。
ポーセルメックスは讃頌会と結託している。そんな彼らがファイズのベルトを欲しがるのは特段不自然な話でもない。
しかしいくら口を割らせようとしても、彼らの行動は徒労に終わる事だろう。
何故ならタクミは、本当にベルトの居場所を知らないからだ。
エーテル爆薬を爆発させたと同時にベルトが吹き飛んだ事は覚えている。
しかしその直後に気絶したため、タクミ自身はベルトがどこに行ったのか何も知らない。
とは言え仮に知っていたとしても、言うつもりは全くない。
「ちっ……吐けば楽になるって何度も言ってるってのに────ん?」
男のズボンのポケットから何か音が聞こえる。
一旦尋問を中止し、男はタクミに聞こえないよう離れた場所で会話をする。
「はい──はい……承知いたしました!」
男は通信越しの会話を終えたあと、一緒にいた他の人間を呼び、そのままどこかへと行ってしまった。
「…………?」
何が起こっているのかは分からないが……十中八九先程戦った化け物が要因だろう。
一人取り残されたタクミは今のうちに拘束をほどこうとしたが、当然そんな体力は残されていなかった。
どうしたものかと悩んでいた時、扉の方からガサリと音がした。
直後、何者かが部屋へと入ってくる。
その姿を見て、タクミは目を見開いた。
「か、かまちー……なんでこんな所に……?」
「…………!!」
柚葉とともに行動を共にしていたはずのかまちーが、ひとりでこの部屋へと来ていた。
タクミが驚いたのはそれだけではない。
なんとかまちーはファイズドライバーを持って、ここに現れたのだ。
かまちーは心配そうな表情をしながら、こちらへと駆け寄る。
「…………!!」
「俺は大丈夫だ、かまちー。心配してくれてありがとな。それよりも……まさかお前がベルトを持ってたなんてな」
恐らくタクミが気絶したあと、ベルトが奪われないようこっそり回収してくれたのだろう。
嬉しい誤算だ。
「よしかまちー……そのベルト、俺の腰に巻けるか?」
拘束されている状態で、まともに手を動かせないタクミは、かまちーに変身させてもらおうと考えた。
かまちーはタクミの言う通りにベルトを彼の腰に装着し、ファイズフォンを開く。
「そのまま『5』のボタンを三回押して……よしそうだ、偉いな」
[5・5・5][Standing by…]
器用にコードを入力した後、かまちーはファイズフォンをバックルへと取り付けた。
「……変身」
[Complete]
そのままタクミの身体は赤い光に包まれ、ファイズへと変身した。
「ありがとなかまちー……これで──ふっ!!」
変身したファイズは力いっぱいに拘束を振りほどき、晴れて自由の身となった。
「んじゃ……さっさと姉ちゃん達の元に行くか」