数日後、Random Play店内。
「……」
「……」
「……猫又」
「……」
「……猫又ってば」
「ん?どうしたの?」
「いやその、そろそろ俺の顔を見つめるのをやめて頂きたくて」
工房内のソファで、猫又はタクミのすぐ隣に座り、タクミの顔──正確には頭に巻かれた包帯辺りをじっと見つめていた。
その視線のせいでタクミはソファから身動きが取れないでいた。
「こうして見張っとかないと、タクミはまたどっか行って怪我するでしょ?」
「し……しねぇよ、犬じゃねぇんだから……」
「……ホントに?」
「ホントだって」
「……」
「……に、兄ちゃん」
タクミは近くにいる兄に助けを求める。
「今回ばかりは僕も猫又と同意見だ。怪我が完全に治るまでは、家で安静にしていてもらうよ」
「……はい」
実質的な外出禁止令を出され、項垂れるタクミ。
甘んじて猫又の熱い(?)視線を受け入れる事にする。
しかししばらくするうちに耐えられなくなり、水でも飲んでこようとソファを立とうとする。
「み、水を飲ん──うぉぉっ!?」
「タクミ!?」
しかし何かに足が絡まって危うく盛大にずっこけそうになってしまった。
「どうしたの?まさか、何も無い所でコケちゃうほど不運が極まって……?」
「ち、ちげぇよ、何かが足に絡まってたんだって」
「うっそぉ、コードとかも無いのに?」
「いやいやマジだって──あれ?猫又、どうかしたか?」
「……い……いや、にゃんでもない……」
猫又はそう返事するが、何か様子がおかしい。
心なしか顔が少し……いやかなり赤くなっている気がする。
「……ホントに大丈夫か?熱とかあるんじゃ──」
「ほ、ホントに大丈夫だから……!」
「そ、そうか……」
先程と打って変わって、猫又はこちらに目線を合わせてくれない。
猫又と一緒に店に来ていたニコは話を戻すべくコホンと咳払いをする。
「……まあ、その、とにかく!猫又と赤牙組の間柄のおかげで、もう赤牙組がちょっかいを出してくる事はないわ──それと、あんた達に頼まれた調査に進展があるの」
赤牙組の組員から聞いた話によれば、彼らは金庫争奪の件に関わったとは言え、その出所について知る者は一人もいなかったという。
シルバーヘッドは、あくまで謎の依頼人から研究所で金庫を盗む依頼を受けただけとの事だった。
だが組員達はその奪った金庫がどこへ行くのか、どこで処理されるのかを全く聞いていなかったらしい。
「……ちょっと待ってくれ、ニコ。僕の聞き間違いか?『出所については誰も知らない』、『謎の依頼人』、『皆分からない』……」
「えっと、これが進展?赤牙組が金庫に関して何にも知らなかったって事が?」
「しょ、しょうがないでしょ!?そもそもあの金庫は手がかりが無さすぎて、調査が難航してるの!」
ニコ自身、これでは良くないとさらに調査を進めたが、特に何の成果も得られなかった。
「──それに、折角助かった住民たちのために、慰謝料を勝ち取ってあげたい気持ちもあるし……あの人たちを助けたのは、他でもないあたし達でしょ?」
「……ニコ、いつの間に道徳を盾にするようになったの?ご高説をどうも」
「そ……そういえば猫又!あんた、プロキシ達に何か渡したい物があったんでしょ?」
「──あ、そうだそうだ、皆の集合写真をプリントしてきたんだ〜!」
そう言って猫又は鞄から三枚の写真を取り出した。
「はいどーぞ!こっちがアキラの分で、こっちがリンちゃんの!それと、こっちがタクミのね!」
猫又は三人にある写真を渡した。
あの後、レストランで一緒に食事した時の写真だった。よく撮れている。
「あ、それともう一つ。最近邪兎屋に新しい従業員が入ったの。改めて紹介するわ──」
「猫宮又奈、猫又って呼んでもいいぞ!三人とも、これからよろしくだにゃ〜!」
邪兎屋の従業員第三号、猫又はそう自己紹介をした。
「……猫又、本当にタクミの足にしっぽが巻きついてたの?『巻き付けた』んじゃなくて?」
「ほ……ホントに無意識だったんだってば……!」
次回から何話か番外編を挟みます