イゾルデは皆を集め、これからの行動方針について簡潔にブリーフィングを行った。
「よし、全員揃ったようだな。諸君も知っての通り、今回の作戦は一刻も早くホロウへ向かいフェロクスの野望を阻止する事……そして柚葉くん、タクミくんの二人を救出する事だ」
フェロクスの元にいる柚葉はともかく、タクミに至っては生死すら分からない状況。
事態は一刻を争う状況と言えるだろう。
「鬼火隊長。現在の状況について、オルペウスと共に説明を」
『ハッ』
オルペウスと呼ばれる赤いツインテールの少女と、彼女のしっぽの先にある喋る銃器デバイス「鬼火」隊長が前へと出る。
『諸君。今回の作戦を遂行する上で、戦力面での問題はない。しかし一方で、障害となりうる二つの問題がある──それは我々が"防衛軍"である事と、現場への到達手段についてだ』
「み……皆さんご存知の通り、防衛軍とTOPSは非常に切迫した関係にあります……! 衛非地区の事案に介入したことが公になれば、ひとたび大きな混乱を起こる事は避けられません」
TOPSにバレない為には、何かしらの方法で身分を隠す必要がある。
そして『到達手段』についてだが……これが一番の問題だ。
ミアズマ・フィーンドから逃げていた時の事。逃走する際、近くの裂け目を通った直後にすぐに裂け目が閉じてしまった。
後からこの原因について調べてみたところ、どうやら
「つまり……ここからホロウの研究所へ向かうには、また新たにルートを測定しないといけない。……タイムリミットのことを考えれば、そんな時間はないんだけどね」
「別の方法でホロウに行く事は出来ないのかしら……?」
「あるにはある。衛非ロープウェイを使えば簡単に行けるけれど……」
「ああ。安全調査の影響で、ロープウェイの使用は依然厳しく制限されている。動かすとなれば、ポーセルメックスの幹部クラスの承認がいるだろう」
「ポーセルメックスの……」
イゾルデの言葉を聞き、リンはなにか思いついたかのような顔をした。
「皆、もしかしたら……その問題、解決できるかも。"ポーセルメックスの幹部クラス"の人……ひとり心当たりがあるよ!」
「! リン、貴女もしかして……ダミアン・ブラックウッド氏に助けを……」
「うん。安全調査の晩餐会の時にも会ったんだけど、ダミアンさんは共同CEOの二人の派閥争いにうんざりしてる感じだった」
ダミアンにとっては、今回の打倒フェロクスの作戦はルクロー派に取り入るまたとないチャンスなのではないかとリンは考えた。
また彼が協力さえしてくれれば、オボルス小隊が今作戦に参加する事も内密にしてくれる事だろう。
「あの人の事だし、きっと協力してくれるはず」
「なるほど……成功率の高い方法ならば、こちらとしても異論はない。鬼火、準備を始めるよう他の隊員に伝えろ」
『ハッ!』
作戦の準備のため、解散する一同。
リンは作戦が成功する事を祈りながら、ダミアンに連絡をするのだった。
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同時刻、ラマニアンホロウ内にて。
ホロウを脱出しようとした矢先に、ライオンオルフェノクと遭遇してしまったファイズ達。
当然素通りを許してくれるはずもなく、ライオンオルフェノクはファイズを見ると、先程遭遇した時とは比べ物にならない程のスピードで襲いかかってきた。
「ガァァアア!!」
「ぐっ……! くっ!!」
目にも止まらぬ槍さばきで、ライオンオルフェノクはファイズに連撃を叩き込む。
負傷も相まってファイズは思うように身体が動かず、反撃ができないでいた。
すると──
「っ!!」
「アンタの相手は柚葉達だよ、怪物さん!」
「…………!」
ライオンオルフェノクの狙いをファイズから自分へと変えるために、傘を使った射撃で横槍を入れる柚葉。
……しかし、ライオンオルフェノクは少し怯んだ程度で、ファイズへの攻撃の手を弛めることはしなかった。
(っ! なんで……!? こっちには見向きも……このままじゃタクミが……!!)
『ファイズだけは仕留める』──言葉を発さないこのオルフェノクから、そんな言葉が聞こえた気がした。
「くっ……いい加減に──しろっ!!」
「!!」
攻撃の隙間に、ファイズはライオンオルフェノクめがけ決死の横蹴りを放つ。
その一撃を受けたライオンオルフェノクは勢いよく後ろへと吹き飛ばされる……が、当然消滅とまではいかず。
しかし、引き剥がせたおかげで少し余裕ができた。
「タクミ!」
柚葉が膝を着いたファイズの元へ駆け寄り、倒れないように支える。
起き上がるライオンオルフェノクを見て、ここからどう打開するかファイズは考えを巡らせる。
二人で逃げても、ライオンオルフェノクは逃がしてはくれないだろう。
ただこのオルフェノクは、先程から柚葉には一度も攻撃をしていない。
敵とみなしていないのかは分からないが、もしかしたら柚葉だけなら逃がせるかもしれない。
「………………柚葉」
「言っとくけど、『俺を置いて逃げろ』はナシだからね! 柚葉にあんな事言っといて、自分は犠牲になるとか虫が良すぎるから!」
「わ、分かってるって」
案の定却下されてしまう。
ならばなんとしても二人でこのピンチを切り抜けなければならない。
「…………」
「グァァアア!!」
「!!」
再び加速し、槍を片手にファイズに襲いかかるライオンオルフェノク。
その時、柚葉がファイズの前に立ち、持っていた傘を開いて盾にする。
「…………っ!」
攻撃を防いだ衝撃で吹き飛ばされる事を覚悟し、柚葉はその一撃を待つ。
「…………?」
しかし、いつまで待ってもその衝撃が来ることはなかった。
恐る恐る傘から覗いて見ると……どこからか駆けつけたオートバジンが、バスターホイールを盾にしライオンオルフェノクの攻撃をガードしていた。
オートバジンは攻撃を防いだ後、約七トンのパンチで再びオルフェノクを吹き飛ばす。
「よーし……相変わらず来るのが早いな」
「す、すごい……何あのロボット……」
事を大きくしないよう、今までオートバジンは呼ばずにいたが……今はそうも言ってられない。
そしてこの隙に、ファイズはファイズブラスターを手に持ち、コードを入力する。
[5・5・5][Standing by…]
「一気にケリをつけるぞ……!!」
体力もほぼ僅かなこの状況で、あまりこの力は使いたくなかったが、仕方がない。
ファイズはコードを入力した後、ファイズフォンをトランスホルダーにセットする。
[Awakening]
直後、ファイズの体は赤く眩しく光り輝き……ブラスターフォームへと姿を変えた。
[1・4・3][Blade Mode]
再びコードを入力し、トランクボックス型のファイズブラスターを大剣フォトンブレイカーに変形させる。
「グゥゥア……!!」
ライオンオルフェノクはファイズを恨めしそうに見つめ、立ち上がる。
そして胸部に備わったライオンの口から、数発の巨大な火炎弾を発射した。
「フッ!! はあっ!!」
ファイズはその攻撃に対してフォトンブレイカーを振りかざし、軽々と全ての火炎弾を真っ二つにした。
そのまま火炎弾は壁に着弾し、爆発を起こす。
その爆発の煙に乗じ、ライオンオルフェノクは槍を持って奇襲をしかけた。
「…………!!」
真斗を上回るパワーを持つオルフェノクによる槍の一突き。
ファイズはそれを、敢えて受け止めた。
「グゥッ……!!」
そして逃げられないよう左手で槍の柄を握りしめ、右手に持ったフォトンブレイカーでライオンオルフェノクに斬撃をお見舞いした。
槍を手放し、吹き飛ばされるオルフェノク。ファイズは左手に持った槍を適当に投げ捨て、ファイズブラスターでENTERキーを入力。
[Exceed Charge]
フォトンブレイカーの刀身は、フォトンブラッドの光とともに長さを増していく。
そして──
「はぁぁぁあああっ!!」
「…………!!」
ファイズは自身の身長の何倍にも伸びた刃を横に振り抜き、ライオンオルフェノクを一刀両断。
あまりのパワーに、ライオンオルフェノクはうめき声すら出せないまま、『Φ』のマークとともに灰と化していった。
めちゃくちゃ今更だけどオボルス小隊のメンバーの名前(コードネーム)には敢えて「」をつけてません
文が読みにくくならないようにと言うのが主な理由ですが……もしかしたら要らぬ心配かも