アキラと合流し、つい先程ホロウへと突入した儀玄は、通信機越しにリン達に告げる。
『人命救助と爆薬……ここは二手に別れるぞ。オボルスの兵隊、お前さん達は研究所の守りを任せる。その間に私がミアズマフィーンドとやらを片付ける。これでどうだ?』
『ふん……まあいいだろう。シードと11号は私と来い! トリガーはプロキシ君達と同行し、引き続きフェロクスを追え!』
「了解しました」
「ちなみに……爆薬の設置場所は分かりますか?」
「あ、ああ勿論! 案内する!」
「それじゃあ皆、よろしくね!」
「お任せ下さい!」
こうして一行は二手に分かれて、リン達は柚葉達の救助へと向かった。
数分後、濃く残る痕跡を辿って行く途中。
ちょうど入ろうとしていた建物の中から、何かを破壊するような音がこちらに聞こえてきた。
「……! 今の音は……」
「ちょうど正面の建物から聞こえてきたね……ミアズマの濃さから見ても、中にミアズマ・フィーンドがいる事は間違いないよ」
「急ぎましょう、二人とも!」
最早一秒とて無駄にはできない。三人は全速力で建物の中へと入っていった。
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「グァアアアアアア!!」
「もう〜! しつこいよ!」
「くそ……全然振り切れねぇ……!!」
オートバジンに乗り、命懸けの鬼ごっこを始めて数分が経つ。
実験棟を飛び出し、ラマニアンホロウ内を爆走バイクする二人。
ミアズマの影響か、かなりの数のエーテリアスが襲いかかってきたが構わず轢き飛ばし、ミアズマフィーンドに捕まらないようアクセル全開で走る。
…………しかし、ミアズマ・フィーンドは辺りのミアズマを吸収したせいか次第に速さを増していき、今にも追いつかれそう状態だった。
別の建物へと逃げ込むが、それでもミアズマフィーンドは止まらない。
あらゆるものを破壊するその怪物は剣を振りかざし──
ガキンッ!!
「っ!!」
斬撃でオートバジンの後輪部分を攻撃。
その衝撃で二人はバイクから放り出され、地面を転がっていった。
「グゥゥウウ……!!」
「…………!!」
白い髪から見える、殺意に満ちた恐ろしい眼が柚葉達を見据える。
二人を追い詰めたミアズマ・フィーンドは、まるで処刑人のような佇まいでゆっくりとその剣を掲げ……ファイズ目掛けて振り下ろした。
────しかし、その刃が届く事はなかった。
「ッ……!!」
金色の閃光がミアズマフィーンドを剣ごと呑みこみ、そのまま壁へと吹き飛ばしたのだ。
その攻撃に、ファイズは見覚えがあった。
「──どうやら、間一髪だったようだな」
『タクミ、大丈夫かい!?』
「師匠……!! それに兄ちゃんも!」
二人の前に現れたのは儀玄とイアス姿のアキラ。
さらにほぼ同時に、アリス達もこの場に到着した。
「柚葉!」
「! アリス……!」
「二人とも、無事で良かった……! 怪我はない?」
「リンちゃん……私は大丈夫だよ、ありがとう」
アリスは柚葉の元へ駆け寄り、肩を貸してゆっくりと立ち上がらせる。
ファイズの方もトリガーに支えられながら、なんとか立ち上がった。
「焦らなくても大丈夫です、タクミくん。ゆっくりと立ち上がって」
「っ、師匠もトリガーさんも……なんでここに……?」
「積もる話は後だ。まずは、目の前のコイツをどうにかしないとな」
「!」
儀玄が指差す先。つい先程吹き飛ばされたミアズマフィーンドが、ゆっくりと立ち上がりながら儀玄を睨んでいた。
「コイツがミアズマ・フィーンドとやらか……」
「儀玄先生! 私達も加勢するのだわ!」
「アリスと言ったな……良いだろう。戦力は多いに越したことはない」
「…………」
「それと、そこの大怪我してる奴は動くんじゃないぞ。大人しく休め」
「えっ」
重傷を負っているとは言っていないのに、見透かされてしまっている。
「なぜ分かるんだと言う顔をしているな……師匠の目は誤魔化せんぞ。早く病院に行く事だ」
「グァアアアアアア!!」
「っ……アキラ、タクミを頼んだぞ」
『任せてくれ、師匠。トリガー、手伝ってくれるかい?』
「お任せください。タクミくん、歩けますか? よろしければ担ぎますが」
「大丈夫です、歩けはするんで……」
ミアズマ・フィーンドとの戦闘を繰り広げる儀玄達を横目に、ファイズはトリガーに支えられながら建物の外へと出る。
「…………?」
『? トリガー、どうかしたかい?』
「いえ、部屋の隅の方に……何者かが縮こまっているようです」
「え……? あ、アイツは……」
少し寄り道をし、その縮こまっている何者かの元へと向かう。
「ひ、ひぃぃ……! やめろ、撃つな……!!」
『…………トリガー、どうしようか?』
「そうですね……念の為、彼もホロウの外へ連れて行きましょう」
トリガーは心底怯えきった表情をする男性……フェロクスを拘束し、連行しながらその場を後にした。
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儀玄はミアズマ・フィーンドに対し、圧倒的な力で着実にダメージを与えていく。
「ガァァアア!!」
目にも止まらぬ早さで襲いかかる斬撃を華麗にかわし、素早く距離を詰め──
「ふっ!!」
「! グゥゥ……!!」
札を取り出し、術法を叩き込む。その攻撃に対しミアズマフィーンドは明らかな焦りを見せ、攻撃を中断して距離をとる。
「これで例の回復するという特性は封じた。あとは畳み掛けるのみだ」
「さすが先生なのだわ……!」
「っ、やばい……! また来るよ!」
ミアズマフィーンドは剣を手に再び襲いかかるが……先程のような素早さはない。
確実に弱っている今が絶好のチャンスだ。
ミアズマフィーンドが振りかざす剣を弾き飛ばし、総攻撃を叩き込む。
「グォォォオオオ……!!」
(ミアズマ・フィーンド……讃頌会が作り出した、私の抱いた執念の
次第に動きを鈍らせていくミアズマ・フィーンド。それでも、攻撃の手は緩めない。
「今……楽にしてやろう」
儀玄はそんなミアズマ・フィーンドへ、トドメの一撃を叩き込んだ。
「グァァアアアアアア……!!」
断末魔を上げるミアズマ・フィーンド。
術法の影響で辺りに散らばったミアズマが次第に浄化され、消滅していく。
そしてミアズマ・フィーンドも消滅していくなか、儀玄は目にする。
「…………!!」
消えながらこちらを見る
そんな安らかな目つきで、ミアズマ・フィーンドは静かに消滅していった。
「……せめて、安らかに眠るといい」
その言葉は、怪物に向けてか、自身の過去に向けてか。彼女は静かにそう言った。
「お、終わった……これで──」
「柚葉!!」
「っ、え? あ……アリス?」
戦いが終わるや否や、つかつかと柚葉の元へと向かっていくアリス。
「これ、返すわ!」
その言葉とともに、彼女は柚葉にセイラープーのヘアピンを渡した。
「か、返すって……それは元々アリスの──」
「良いから!
「っ……!!」
「はぐらかしたら……っ、承知しないっ!!」
そう柚葉に言ったアリスは……今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「アリス……」
「だから、二度と……二度とあんな事を……!」
「……うん、ありがとう。約束するよ……二人で、生きてこ」
「……っ、うわぁああん!!」
「あ〜もう……泣かないの」
耐えきれず大泣きするアリスを、抱きしめながら宥める柚葉。
そんな二人を、窓の隙間から暖かい朝日が照らしていた。
次回!
大姉弟子のお説教タイム!!