ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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リゾートにて

 

 

 

 

 

「…………」

 

「……柚葉。んなソワソワしなくてもタクミならすぐ来るだろ、落ち着け」

 

「は!? い……いや、別にソワソワしてないけど? 適当な事言わないでよね」

 

 

タクミからノックノックで『もうすぐ着く』と連絡を受け、柚葉はアリス達とともに彼を待つ事にした。

 

 

「そう言えば真斗、貴方は水着は着ないのかしら?」

 

「あー……ここだけの話、水は大の苦手なんだよ。出来るなら海には近づきたくもねぇ」

 

「へぇー……なんか意外だね───あ、来たみたいだよ!」

 

 

他愛のない会話をしていた、ちょうどその時だった。

 

どうやらタクミが到着したらしい。どんな水着を着て来たのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

ところが柚葉は目にしたその光景に、一瞬思考が止まってしまった。

 

タクミの隣には、水着を着た紫色の髪の美少女が一緒に歩いていたからだ。

 

 

「ごめん、遅くなった」

 

「た、タクミ……? その子は……」

 

「え? ああ……この人は──」

 

 

「店長様ァ〜〜♡」

 

「!?」

 

 

ファンタジィリゾートに到着した時から、その紫髪の少女の目にはパエトーンしか映っていなかった。

 

ビビアンはアキラとリンの姿を見ると一目散に二人の元へ駆け寄った。

 

 

「び、ビビアン? 君もここに来たのかい?」

 

「店長様!! この日のために、ビビアンは頑張りました!! この水着、どうでしょうか……ああその前にっ、お二人ともいつ見てもなんとお麗しい……!!」

 

「か、可愛いよ? 可愛いから、鼻血垂らしたままこっちに近づいて来ないで!? 絵面やばいから!!」

 

 

 

 

 

「……あいつは俺の友達でな。兄ちゃんと姉ちゃんの……ファンなんだ」

 

「ファンってレベルじゃねぇぞありゃ……」

 

「最初に見た時に感じた凛とした雰囲気は幻だったのかしら……」

 

「まあ、悪いやつじゃないから」

 

「そ……そうなんだ」

 

 

アキラとリンがビビアンをなんとか牽制しようとしている光景を見て、柚葉は謎の安心感を覚えた。

 

 

「それにしてもお前の水着、シンプルだけどよく似合ってんじゃねぇか」

 

「感想は良いよ。適当……じゃないけど、慎重に選んだ訳でもないから」

 

「!」

 

 

ビビアンの衝撃で忘れていたが、柚葉は改めてタクミの水着姿に目をやる。

 

黒い、無地の海パンとラッシュガード。言い表せる特徴はそれだけだった。

 

 

「……おお、確かに似合ってるじゃん!」

 

「ええ。デザインも綺麗な線対称で申し分無いのだわ!」

 

「ブレないなアリスは……」

 

「ね、写真撮っていい?」

 

「え? ああ、良いけど……うわっ!?」

 

「はい、チーズ!」

 

 

柚葉はタクミの肩を抱き寄せ、スマホで写真を撮る。写真に写る、驚いたタクミの顔が良いアクセントになっていた。

 

 

「ふふん、ツーショット〜!」

 

「ちょ……ちょっと待て柚葉、もう一回撮ろう! 今のは何の準備も出来てなかったぞ」

 

「え〜? 良いじゃん別に〜。見てよこの顔、今まででも一、二を争うくらい良い顔してるよ?」

 

「ブレまくってんじゃねーか……恥ずいんだけど」

 

「ゆ、柚葉! 私達も一緒に良いかしら?」

 

「勿論良いよ! ほら、真斗も一緒に!」

 

「これオレのガタイで写るか……? つかそれよりも、アキラくんとリンちゃんも呼ばねぇと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、店長様! ちょっとだけで良いので! ほんのちょっとだけで良いので!!」

 

「ビビアン! お兄ちゃんが前にフリーハグキャンペーン実施中だって言ってたよ!」

 

「ま……待つんだリン! 僕に押し付けようとしないでくれ!! ちょっ、ビビアン待っ──」

 

 

 

 

「まだやってんのか……」

 

 

理性を失いかけているビビアンに対する二人の決死の牽制(押し付け合い)は、しばらく続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ある難題を乗り越え、ファンタジィリゾートは予想以上の大盛況を見せた。

 

水族館や、数々のアトラクション、そして新エリー都の歌姫による圧巻のライブ。

 

 

復興の為に力を尽くした柚葉達だが……リゾートに来た以上、遊ぶ事も忘れない。

 

サーフィンや、水鉄砲のシューティングゲーム、ビーチバレーなど、『リゾートと言えばコレ!』と言えるものは遊び尽くしたと言えるだろう。

 

 

 

 

そして夜。

 

リゾートのホテルに泊まっていたタクミは、こっそりと外へ出た。

 

 

ファンタジィリゾートの海水浴場は、昼間より範囲は狭いものの、夜の間でも泳ぐ事ができた。

 

実際来てみると、昼間ほどでは無いとは言えそこそこの数の人が浜辺に来ている。

 

タクミはその夜の海で、一度やってみたい事があった。

 

 

「…………」

 

 

浮き輪でプカプカと浮かびながら、星空を見る。遠くで光っているライトが、海の水面とタクミの体を照らしていた。

 

 

(夜の海……意外と悪くないな)

 

 

話し声が少し聞こえる程度で、他は何も聞こえない。このまま寝てしまいそうになるが……流石にそれは危険なので、なんとか堪える。

 

 

「…………?」

 

 

ふと、遠くから何かがこちらに向かって来ているのに気がつく。

 

暗くてよく見えない。タクミは目を凝らし、その影が何なのかを確かめる。

 

やがて海水浴場のライトに照らされ、その影の正体が明らかになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見て、タクミは息が詰まりそうになる。

 

 

「…………!!」

 

 

こちらに向かって来ていたのは、見間違いでなければ黒く大きい背びれのようなものだった。

 

水の中は暗いせいでほぼ見えないが……その正体について、思い当たる節はひとつしか無かった。

 

 

(嘘だろ……? ここ浅瀬だぞ……!? なんで()()が……!!)

 

 

動揺している間にも、サメはどんどんタクミの方へと近づいていく。

 

悲鳴こそあげないが、タクミは内心パニックになっていた。

 

当然だろう。丸腰のところにサメなど来たら誰だってパニックになる。

 

逃げようとしても、サメはスピードも落とさず無情にもタクミとの距離を縮めていく。

 

 

ザパァンッ!!

 

「!!」

 

 

間近まで来たサメは獲物を喰らう為に、勢いよく水面から飛び出した───

 

 

 

 

「…………」

 

「…………さぷらーいず!」

 

「……ゆ、柚葉……お前……」

 

「ふふ……あ〜、アリスの時もそうだけど二人ともほんっと良いリアクションするよね〜」

 

 

サメの正体。

 

それはサメの背びれの浮袋を持った柚葉だった。

 

 

「いや〜この浮袋、持ってきて正解だったね!」

 

「お前な……せっかくくつろいでたってのに」

 

「まあまあ。せっかくだし、柚葉と一緒に散歩でもしよーよ!」

 

 

海から上がり、ファンタジィリゾートの浜辺を歩く。

 

浜辺を歩きながら見る星空。海の上で浮かびながら見上げるものとは、また違う良さがあった。

 

 

「リゾートにいた数日間……短かったけど、楽しかったよね」

 

「ああ。こうして海に来たのは久しぶりだし、こうやって皆と思いっきり遊んだのも久しぶりだったな」

 

「そうだね……アリスに真斗、アキラくんにリンちゃん……そして貴方。ほんっと柚葉って、良い友達に巡り会えたよね〜」

 

 

眺める海の水面に、月の光が映る。

 

柚葉はしばらくその光景眺めた後……タクミの方を向いた。

 

 

「ねぇ、タクミ」

 

「ん?」

 

「柚葉の水着……可愛い?」

 

「? ああ……可愛いよ。なんか前にも同じ事聞いてなかったか?」

 

「ん〜? そうだっけ?……んふふ

 

 

初めて水着を見せた時も、同じ事を聞いていた。

 

タクミは何故もう一度聞いたのかも分からないまま、その時と同じ答えを返した。

 

 

「さっ、そろそろ帰ろ。もう遅いからね」

 

「そうだな」

 

「それで……部屋に集まって皆で怪談でもしよっか」

 

「そうだな……ん?」

 

「はいっ、了承も得たことだし、早く戻ろ〜!」

 

「ちょっ、ちょっと待て柚葉! 怪談じゃなくてトランプとかやろう! トランプとか!!」




次回からシーズン2-3章です!
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