次の日の朝。
支度を済ませたリンとタクミは、イアスを連れて適当観の面々に見送られながら、ラマニアンホロウへと向かった。
ホロウに入り、指定された合流地点に着いた後、タクミはファイズドライバーを装着する。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
ファイズフォンをセットし、タクミは赤い光と共にファイズへと変身した。
「……にしても、なんでオボルス小隊との合流地点が『ホロウの中』なんだ?」
偵察任務へと赴いたオボルス小隊と合流し、任務が完了した後に共に駐屯地へと戻る事になっている。
今はオボルス小隊がここへ来るのを待っている状態だ。
「防衛軍側は、どうやら『市長付き特派員』の実力を見ておきたいみたい。オボルス小隊のみんなとの連携を深めるって目的もあると思うけどね」
「はーなるほど……」
「ガァァアアア!!」
気の抜けた返事をした直後、後方から聞き慣れた咆哮が耳に入ってくる。
振り向けば、上級エーテリアスのデュラハンが剣を構えこちらを睨んでいた。
「エーテリアス……! 一体だけみたいだな」
『タクミ、くれぐれも気をつけてくれ。ミアズマの勢いはいまだ衰えていない、エーテリアスも依然凶暴なままだ』
「分かってる」
ファイズは手首をスナップさせ、デュラハンへと立ち向かう。
「グアァッ!!」
デュラハンは先手は打たせまいと颯爽と距離を詰め、エーテルの剣をファイズ目掛け振り下ろす。
続けて襲いかかる連撃、ファイズはそれを受け止めながら、反撃の隙を伺う。
そして──
「ふっ!」
「ッ!!」
僅かに空いた攻撃の『隙間』。それを見逃さず、ファイズはデュラハンの横腹に勢いよく蹴りを入れて吹き飛ばした。
壁に叩きつけられたデュラハンは、そのまま引力に従い地面に落ちる。
[Ready]
ファイズは走り出し、デュラハンに追撃を入れるべくファイズショットを装備する。
よろめきながらも起き上がったデュラハンは怒りを感じたのか、殺意のままに左手の剣を横薙ぎに振るった。
一直線の攻撃をファイズは頭を下げて軽々と交わし、逃げられないようデュラハンに掴みかかる。
「ハッ! タァッ!!」
左手でデュラハンの剣を掴み、ファイズショットを装備した右拳でデュラハンへ怒涛のパンチを繰り出す。
時折膝蹴りを混ぜながら、着実にデュラハンの体力を削っていく。
最後にファイズは右肘を振り下ろし、左手出掴んでいたデュラハンの剣を真っ二つに折った。
間髪入れず、ファイズフォンのENTERキーを押す。
[Exceed Charge]
ファイズショットにフォトンブラッドエネルギーを集約させ、ファイズはデュラハン目掛けてトドメの『グランインパクト』をお見舞いした。
為す術もなく、『Φ』のマークを浮かべて消滅するデュラハン。
数分にも満たない戦いだった。
ファイズはそのままリン達の元へ戻る。
「……今更だけどさ、タクミの戦い方ってなんか……バイオレンスだよね」
「え? そうか?」
『ああ、確かに剣を肘で折ったのは流石にびっくりしたよ』
「え〜……?」
あれは反撃を受けないために剣を折るという合理的な判断なのだが……傍から見るとそう言う風に見えてしまうのだろうか。
…………と、その時。
「ガァァァアアア!!」
再び響き渡る咆哮。
周りには、いつの間にかエーテリアスの群れが集まってきていた。
「下級エーテリアスだけど……今度は数が多いね」
「よし……下がってろ、二人とも」
ファイズは再びファイズショットを構え、エーテリアスとの戦いに臨む。
すると。
「グァァアアアア!!」
「?」
突如後ろの方から極太レーザーが飛び出し、エーテリアスの一匹が断末魔と共に丸焦げになった。
レーザーが飛んできた方向を見ると──
『オルペウス! 焼き尽くすぞ!!』
「はいでありますっ!」
赤髪のツインテールの少女と、彼女の尾に付いている喋る赤いピストル。
オルペウスと鬼火隊長の姿がそこにあった。
鬼火はピストルの銃口から極太の火炎レーザーでエーテリアスを纏めて塵にしていく。
オルペウスの方も、ナイフ片手にエーテリアス相手に熟練の技術で次々と倒していった。
「どうやら……私の出る幕はなさそうね」
「11号!」
いつの間にかいた11号と一緒に、戦いを見守る。
おおよそ十秒程だろうか。数十体ほどいたエーテリアスは、跡形もなく全滅した。
掃討を終えた鬼火は、リン達の方を見る。
『フン……かの悪名高き"パエトーン"と、行動を共にすることになるとはな』
「!」
「た……隊長!」
いきなり棘のある言い方をした鬼火を、オルペウスが慌てて咎める。
「ど、どうも……特任ホロウ技術顧問兼市長付き軍事行動特派員の──って、もう知ってるか」
「はい……イゾルデ大佐から、大方の情報はお聞きしました。11号さんやトリガーさんから、お二人の活躍は耳にしているであります!」
『おいオルペウス。善性の人間とは言え、一人はプロキシ、もう一人はホロウレイダーのならず者だぞ。あまり心を許しすぎるな』
「……鬼火隊長、彼女は信頼できる人物よ。前にも話したでしょう。以前の共同作戦でも、その実力を遺憾無く発揮していたわ」
『フン、どうだかな……』
鬼火は首を曲げ、ファイズの方を見る。
『……小僧、ファイズと言ったな。先程の戦いは全て見ていた』
「見てたんですか?」
「は、はい……最初は加勢しようと考えたのですが、鬼火隊長の提案でまずは実力を見極める事になって……」
『エーテリアスを防戦一方まで追い込む程度の実力がある事は認めてやる。だがな……だからと言ってお前達の事を信頼した訳では無い。ましてや、軍事経験のない子供など……』
「…………」
ファイズを睨む鬼火。ファイズはそれに対し反論も弁明もしないが、視線を外すこともしなかった。
「た、隊長……!」
『背景も目的も不明瞭な人間を簡単に信頼しろと言うのがそもそもの間違いだ。忠告しておいてやるが、もし任務の邪魔をしたり、軍の規則を踏みにじるような事があれば……』
「大丈夫だよ。その"規則"が正しければ、私達が敵同士になるなんてことは無いから」
『…………そうだと良いがな』
「まあ、そんなに信頼できないなら……プロキシとして、みんなの役に立つことを今から証明するよ。
『! ああ、そうだとも。口先でなく行動で示す、という事か』
「そ、それではこれより……自分から今回の作戦目標並びに、パエトーン殿に担っていただきたい役割について、簡潔にご説明させて頂くであります!」
現在判明しているホロウデータを元に、最適な行動ルートを導き出し、オボルス小隊をガイドする。
それが今回のパエトーンの役割。
小隊のメンバーは彼女がホロウデータの収集やミアズマの測定をするうえでの安全を確保するために、護衛をする事になる。
『お前達の"武勇伝"をハナから疑っている訳じゃない。だからこそここで証明するチャンスを与えたというわけだ。くれぐれも無駄にするなよ』
「分かってるよ。パエトーンの実力、見せてあげる!」
『小僧、お前は我々とともに引き続きプロキシ君の護衛だ。軍の兵士にも引けを取らないという事を証明してみせろ』
「任してください」
「タク……じゃなかった、ファイズ殿。その……隊長の"小僧"呼びが嫌なら、いつでも言って頂いていいんでありますよ?」
「大丈夫っす。確かに俺はガキですから」
少しギスギスしていたブリーフィングも終わり、いよいよ作戦が開始された。