ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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オボルス小隊

 

 

 

 

 

無事に合流予定地点へと到着したマッチロック分隊。

 

数分もしないうちに、アイアン分隊のシードとトリガーもこちらへ向かってやってきた。

 

……二人の近くには、巨大なロボットが一緒に歩いて来ている。

 

 

「……あ!」

 

 

キックボードに乗ったミント色の髪の小柄な少女、シード。

 

彼女はリンを見ると手を振り、彼女の近くへと来た。

 

 

「えっと、貴女がシード……かな?」

 

「そうだよ〜。直接会うのは初めましてだね〜」

 

 

シードは非常にフランクな態度でリンと話す。

 

リンは以前、ポーセルメックスの件で彼女と会ったことがある。

 

ロボットに乗っている状態ではあったが。

 

 

「僕、前から君のこと気になってたんだよね〜。ビッグ・シードも、君に会いたがってたし!」

 

「ビッグ・シードって言うのは、そこにいるロボットの事?」

 

「ンナ。ビッグ・シードは特別な知能構造体なんだ。今はスリープ中だから、お話する事は出来ないけど」

 

(ビッグ・シードか……)

 

 

会話を聞いていたファイズは、佇んだまま一言も喋らないビッグ・シードを見る。

 

オートバジンより一回りも二回りも大きな体格をしているビッグ・シード。

 

この巨大なロボットがどのような戦いをするのか、興味が無いわけではない。

 

 

「ビッグ・シードの事が気になるの?」

 

「うおっ!?」

 

 

気を取られていたばかりに、すぐ近くまでシードが来ていたことに気がつかなかった。

 

 

「ま……まあ、そうっすね。どんな戦い方をするのかってのは興味あります」

 

「ふふん、見たい? がっかりはさせないと思うな──でも僕の方も、君について色々聞きたい事があるんだよね〜。そのベルトとか、赤いロボットくんの事とか」

 

 

シードはバトルモードで待機しているオートバジンを見ながらそう言った。

 

 

「オートバジンに興味があるんすか?」

 

「へぇ〜オートバジンって言うの? ……って事は君は……『ミニ・オートバジン』?」

 

「違います」

 

「うそうそ、分かってるよ。ホントは『レモンアイズ・ケチャップ』だよね」

 

「なんだそのファンシーな名前!」

 

『小僧、シード相手には真面目に取り合わんほうがいいぞ』

 

 

この短い会話で、シードという少女が掴みどころのない性格だということが分かった。

 

 

『さて諸君、お喋りはここまでだ。我々はまだ戦場にいる。讃頌会の連絡拠点を発見こそしたが、あったのは取り残された物資のみ。本拠地に関する位置情報も、プロキシ君が欲しかった研究データも取り逃してしまった』

 

「物資を移送するなら、きっとアイツらは裂け目を使ってる。まだ把握してきれてない裂け目だってあるはず……大丈夫、私に任せて」

 

『ほう? 連中の居場所を突き止められると?』

 

「さ、さすが『パエトーン』殿であります!」

 

 

これからの行動目標が固まった、その時だった。

 

 

 

 

 

「……!!」

 

 

近くにあったオブスキュラから……複数の『サクリファイス』が出現した。

 

 

「オブスキュラから……サクリファイスが……!」

 

『総員準備! シード、敵の数をモニターしろ!』

 

「了解〜」

 

『小僧、お前はプロキシ君の近くにいろ。今度は我々の出番だ』

 

「!」

 

 

オボルス小隊の五人はサクリファイスの群れを敵対ターゲットに、戦闘を開始。

 

 

11号のナタによる炎の斬撃は敵を溶かし切り裂き、トリガーが放つ弾丸は風を突き抜け、その身体を貫く。

 

シードはキックボードを乗りこなしながら、ファンネルによるビームで敵を一掃。

 

そして先程も見た、鬼火の五十口径炸裂弾と高出力レーザーにより、サクリファイス達は為す術もなく灰となっていく。

 

 

オボルス小隊。"少数精鋭"の評価に違わず、圧倒的な戦闘力で敵を殲滅していく。

 

 

……と、ここで敵のうち一体がターゲットをリンとファイズに変える。

 

 

「……!」

 

 

ファイズはリンの前に立ち、こちらに向かってくるサクリファイスを迎撃しようと──

 

 

ドゴォォオン!!

 

 

「!!」

 

 

 

────するまでもなかった。

 

 

ビッグ・シードがその巨体に似合わないスピードでこちらへと向かい、その巨大な拳であっという間にぺしゃんこにしてしまったのだ。

 

 

「…………おお」

 

 

その迫力に、ファイズは思わず息を呑んだ。

 

時間は約十数秒程。あれほど居たサクリファイスは、オボルス小隊により見事に全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後の事。

 

サクリファイスを目覚めさせた張本人である讃頌会の導師が隠れていたため、シードが無理やり彼を連れ出し、捕虜として鬼火達の前に差し出した。

 

ビッグ・シードに抱えられながら、導師は狂気的な笑みを浮かべる。

 

 

「ふ……ふふ……貴様ら凡夫がどう足掻いても無駄だ。『最後の牲祭』は、まもなく始まる……」

 

「はぁ……」

 

 

思わずため息を吐くファイズ。讃頌会の人間とは幾度も対面してきたが、その狂信的な振る舞いはいつ見ても頭痛がする。

 

 

「信仰も持たぬ痴れ者に何が──」

 

『シード、黙らせろ』

 

「グゥッ!? …………ぐ……」

 

 

ビッグ・シードが少し力を入れた直後、何かが軋む音が響き、導師はそのままぐったりと気絶してしまった。

 

 

「……讃頌会の人間が考えてる事は未だに分かんないけど……ミアズマがアイツらにとって重要な武器だってのは確か。讃頌会の企みを阻止する方法もきっと、そこにある」

 

『讃頌会の狂信者どもは、新エリー都に害をなすクズどもの集まりだ。人の命を紙くず同然に扱う奴らだ。ならば奴らの方も、同じような扱いを受けても文句は言えまい』

 

「鬼火隊長、気持ちは分かるけど落ち着いて。確かに讃頌会は清々しい程の悪の組織だけど、騙されてる人もいるんだから……レーザーは勘弁してあげて?」

 

『チッ、悪党の肩を持つ気か? いいか、お前から道徳の授業を受ける気はないぞ。第一、お前がコイツを庇うのはお前自身にも後ろ暗いことが──』

 

「ストーップ!!」

 

『!!』

 

 

ここまで黙って二人の会話を聞いていたオルペウスが突然鬼火の言葉を遮る。

 

 

「鬼火隊長、ただいまの発言はイゾルデ大佐の定めた『対パエトーン用臨時言語規範(鬼火専用)』に抵触するものであります!」

 

『なんなんだそれは! 聞いた事がないぞ!』

 

「戦友に厳しい言葉を投げつけるなかれ、士気を下げるようなネガティブな言動は慎むべし──全て鬼火隊長が教えてくださった事であります!」

 

『く……』

 

「それに隊長がタクミ殿の事を"小僧"呼びする度、彼は悲しげな様子を見せていたんでありますよ!?」

 

「!? ちっ、ちげーし! 悲しげな様子じゃなかったし!!」

 

「申し訳ありませんが……傍からでも、その感情は感じ取れました」

 

「顔が隠れてても表情が分かるなんて、君ってプロキシくんとは別ベクトルで面白いよね〜」

 

「…………」

 

 

押し黙るファイズ。

 

確かに名前で呼んで欲しかったのは事実。事実なばかりに、何も言い返せなかった。

 

なぜ分かってしまうのだろう。その理由は本人だけ分からなかった。

 

 

『ふ、フン……私はそもそも、コイツらを戦友とは認めていない。だからノーカンだ。それよりも、さっきの事についてだ。プロキシ君、お前は先程あの怪物をサクリファイスと呼んでいたな』

 

「あ、うん。サクリファイスは讃頌会が作った生物兵器なの。それであのオブスキュラは、ラマニアンの至る所にある工場で生産されてる」

 

『……いや、ラマニアンだけではないな。ポーセルメックスの資料とイゾルデの情報を照らし合わせれば、衛非地区には暫定三百個のオブスキュラが配置されている計算となる』

 

「さ、三百……!? あの怪物がそれだけの数で攻めてきたら、オブシディアン大隊総出でも歯が立たないであります……!」

 

 

いち早く讃頌会の企みを止めねば、衛非地区の住民はサクリファイスの餌食となってしまう。

 

 

「それが本当ならヤバいんだけど、そうじゃない可能性もある。サクリファイスを作り出すにはとてつもない量のエーテルが必要になるからね。いくら讃頌会でも、そんな大量のエーテルは保持してないはず」

 

『ああ、そうだろうな。とは言え、静観している訳にはいかん。速やかに衛非地区にあるオブスキュラの巡回、検査の手配をしなければ』

 

 

ひとまずリン達はラマニアンホロウを離れ、衛非地区海覧通りにある駐屯地へと戻ることにした。

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