ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ロレンツ

 

 

 

 

 

鬼火は本来ここにいるはずのない防衛軍の兵士達に尋ねる。

 

 

『お前達、一体どこの所属だ? イゾルデ大佐の作戦配置では、拠点を急襲する部隊は我らオボルス小隊のみだったはずだが。誰の指示でここへ来た?』

 

「……我々はロレンツ少将閣下直属の部隊だ」

 

『…………チッ』

 

 

やはりロレンツはイゾルデに何も言わずに部隊を勝手に動かしていた。

 

鬼火は苛立たしげに舌打ちをする。

 

 

「やっぱりロレンツ少将の指示だったんだね? イゾルデ大佐に内緒で部隊を出して、無駄に讃頌会を警戒させる事になったのは」

 

「少将閣下は君たちの部隊だけでは戦力不足だと判断し、我々を支援部隊として送り込んでくださったのだ。むしろ感謝すべきだろう」

 

「支援……? 先程讃頌会の一員と戦っていた時には、姿が見えなかったでありますよ……?」

 

「ああ、その点については感謝している。君達が正面で敵を引き付けてくれたおかげで、我々は隙を見て本陣まで攻め込む事ができたのだからな」

 

 

部隊の副官は『してやったり』とでも言いたげな顔で彼女たちを見る。

 

 

「おっとすまない。本来ならばその役目は君達だったはずだな。手柄を横取りしてしまったかな?」

 

『手柄? ハッ、近頃の新兵はそんなちゃちな事にこだわるのか?』

 

「……確かに自分は新兵だが、鉄砲ふぜいの老兵よりかは幾分もマシだと思うがな」

 

『…………』

 

「……!! く、口を慎みなさい! 隊長は新エリー都を守るために、文字通りその身を──!」

 

『いい、オルペウス。よすんだ』

 

 

思わずカッとなり反論に出たオルペウスを、鬼火が止める。

 

 

『コイツらが本当に讃頌会の脅威を排除したのならそれでいい。新エリー都を守る働きをしたのなら、"戦友"と呼ぶに値するだろう』

 

「まあ、戦友って言ってもいい奴ばっかりじゃないけどね〜。いっそこの人、物陰に連れ込んじゃう? 今なら讃頌会のせいにできるけど」

 

『よせと言ってるだろう、シード……それで兵士、質問に答えろ。お前達の部隊は、本当に讃頌会の拠点を()()に制圧したのか?』

 

「……っ」

 

 

鬼火の放つ雰囲気に気圧され、副官はしぶしぶと質問に答える。

 

 

「……戦闘の混乱に乗じて、逃走した導師がかなりいる。勿論逃がすつもりはなかったが、他の重要な任務もあったため、拠点制圧に集中せざるを得なかったんだ」

 

「他の、重要な任務……讃頌会の掃討以上に重要な事があるのでありますか?」

 

『はぁ……要するに、貴様らはただ薮をつつき、本来ならば顔を拝む必要もなかった蛇を出してしまったというわけか』

 

「…………」

 

『行くぞ。コイツらの尻拭いだ、讃頌会の連中は一人も逃がすな……!』

 

「はっ!」

 

 

出撃したのがオボルス小隊のみなら、このような事は起こらなかっただろう。

 

ロレンツの部隊のせいで、余計に讃頌会の警戒を強めてしまった。

 

鬼火達は彼らが討ち漏らした讃頌会の人間を捕らえるべく、再び戦闘準備に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

「ぐぁあっ!」

 

 

讃頌会の男を蹴り飛ばすファイズ。

 

逃げ出した敵を大方片付けたあと、リンは大急ぎで近くにある端末の元へ急ぎ、『ミアズマ兵士』に関する資料を解析した。

 

 

 

───我々の協力するポーセルメックスは、善人の類ではない。彼らは利益の為なら、何だって犠牲にする

 

 

───兵士達は街を守るために死んだわけではない。そして真実は

 

 

 

『……リン、どうだい?』

 

「ダメ、文章の続きのデータが欠損してる……もう、よりによって一番大事なところを……!!」

 

「『兵士達は街を守るために死んだわけではない』……どういう事だ?」

 

『フン、大方こちらを撹乱させようという魂胆なのだろう。奴ら、こちらの存在に気づいて、ギリギリの所でデータを抜き取ったのだ。先を急ぐぞ!』

 

 

一行は讃頌会の拠点の深部へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

讃頌会の残党を片付けながら、オボルスはついに讃頌会の本拠地へと到着した。

 

 

 

しかし……そこで出くわしたのは、思いもよらない人物だった。

 

 

「……!」

 

「ろ、ロレンツ少将!?」

 

「それに、ルクローさんまで……どういう事?」

 

 

場にいたのは、上官のロレンツと……ポーセルメックスの共同CEOであるルクローの二人だった。

 

 

『少将……なぜ貴方がこの場にいらっしゃるのですか?』

 

「ふむ……貴官達か。イゾルデ大佐が何かにつけて勧めてくる『オボルス』という部隊は。なるほど、これ程早くここに辿り着くとは、彼女の言う通り優秀な部隊のようだ」

 

『……今回の作戦全体を統括する立場として、貴方は本来ここにいるべきでは無いはず。それに、ルクロー氏と言いましたか。なぜ民間人である彼もここに?』

 

 

ルクローはリンの顔を見て、目を丸くする。

 

 

「貴女は……覚えていますよ。安全調査前日の晩餐会に出席されていましたね。まさかオブシディアン大隊の関係者であったとは……まだお若いのに、相当な実力者ですね」

 

「そういう訳でもないのだよ、ルクロー取締役。彼女はわざわざメイフラワー市長が我々を指導するため、派遣してくださった特使だ」

 

「なんと、市政側のお客様だったとは……大したもてなしもできず、申し訳ない」

 

『それで……少将とルクロー氏がここにおられる理由をお聞かせ願いたい。貴方がイゾルデ大佐の指揮系統を外れて、独自に行動している事についても』

 

「無論、そうすべき理由があるからだ。俺と、俺の部隊にな」

 

 

ようやく出たロレンツの返答に、鬼火は眉をしかめる。

 

 

「鬼火よ。軍事行動において、俺がそうする理由を聞く必要など何処にもないはずだ。違うかね?」

 

『……』

 

「それとも……口以外残っていないお前に、そうするのは少々難儀だったかな?」

 

「ハハハ……さて少将、そろそろ我々は戻ろうではありませんか。たたでさえ危険なホロウに長居する理由はない」

 

「それもそうだ……鬼火、今日のお前の立場を弁えない無礼な行いについては、特別に目を瞑ってやろう」

 

 

 

そう言い残し、ロレンツはルクローと共にその場を後にした。

 

ファイズは彼らのやり取りを黙って見ていたが……ロレンツがオボルスの面々に好かれていない理由が十分に分かった気がする。

 

ロレンツ達が去ってしばらくした後、ファイズは口を開く。

 

 

 

「…………あの人は──」

 

「なんでありますかァあの男はぁ!!」

 

 

「!?」

 

『!?』

 

 

オルペウスの鬱憤を晴らすかのような激昂にファイズは勿論、鬼火も驚愕する。

 

 

「黙って聞いていれば隊長の事を好き勝手言って……! これほど頭に来る立ち振る舞いをする上官も稀でありますよ!」

 

「お、おいオルペウス……落ち着けって」

 

「タクミ殿も見たでしょう!? あの感じの悪さ、特別軍務手続きの窓口にいる事務官といい勝負であります!」

 

「ちょっ、やめろ! 肩を揺らすな、肩を──」

 

『おいオルペウス。軽々しくそのような事を口にするな。我々にも立場というものがある』

 

「はっ……! も、申し訳ございません鬼火隊長……! 危うく、言ってはいけない言葉が口に出るところでありました……」

 

『もう大分出ていたけどな。とは言え、私とて小隊全員を軍法会議にかけるリスクさえなければ、高出力レーザーでアイツらを消し炭にしていたところだ』

 

「あはは……」

 

 

リンは苦笑しながら、周りを見渡す。

 

ここは讃頌会の重要な拠点であると同時に、実験施設でもあるようだ。

 

 

「……この施設は、ポーセルメックスのもう一人のCEO、フェロクスが讃頌会と繋がってた事の証。そんな場所に、あの二人がいたのは……」

 

『プロキシ君、それを考えるのは後だ。まだ任務は終わっていない、引き続き残党を追うぞ』

 

 

 

讃頌会の数少ない残党を殲滅すべく、一行は再び動き出した。

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