ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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『勝利』の夜

 

 

 

 

 

残党を無事に一掃した後、ホロウを出て駐屯地へと戻ってきた一行。

 

駐屯地には作戦の成功と勝利を祝う賑やかな空気が流れていた。

 

 

『ふん、呑気な奴らだ……勝利を手に入れたばかりだと言うのに、もう打ち上げの準備か?』

 

「確かに、油断はまだできないよね。オブスキュラの事だってあるし……防衛軍は次の計画は考えてるの?」

 

『計画? 本拠地は既に掃討済み、讃頌会の主要メンバーも既に殲滅されたと少将は考えている。先程も言った通り、勝利はもう手中にあるようなものだ』

 

 

『それに』と鬼火は続ける。

 

 

『讃頌会という一介の"違法団体"に、必要以上に時間と戦力を割くはできん』

 

「あっ、でもオブスキュラの事に関してはご安心ください! イゾルデ大佐が事の危険性を重く受け取ってくださったので、現在大佐は衛非地区の市民達の避難を手配している最中であります!」

 

『我々が現在やるべき事は、衛非地区に点在しているオブスキュラの調査が終わるまで、民間人の安全を守り続ける事ぐらいだろう』

 

「「…………」」

 

 

彼女達の言葉に、リンとタクミは顔を見合わせる。

 

防衛軍を信頼していないわけではない。ただ、讃頌会という組織は想像以上に狡猾な人間の集まりだ。

 

 

本作戦の成功を『勝利』と呼ぶには、少し早すぎるのではないかと一抹の不安があった。

 

 

 

「二人とも〜、今は休憩タイムなんだから、肩の力を抜いたら? ずっとそんなんだと、脳みそまでカチカチになっちゃうよ〜?」

 

「そうですよ! ほらほら、リラックスでありますよ!」

 

「うおっと……ちょ、押すなって」

 

 

オルペウスはタクミの後ろに回り、彼の肩を手で揉みほぐしながら、ぐいぐいっと押すような形でそのままテントまで連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

リン達がいるテントの外からは、防衛軍の勝利を祝う声が絶え間なく聞こえてきた。

 

 

「……こんな事言ったらアレかもしんないけど……まだお祝いするには早いんじゃない?」

 

「ロレンツ少将、歓声を浴びてすっかりご満悦でありますね……」

 

『……プロキシ君の心配は理解できる。讃頌会に深手を負わせたとは言え、ホロウの内外にはまだ残党が残っている。オブスキュラだって、まだ全ては処理できていない状況だ』

 

「それもあるし……何より、讃頌会の主要な幹部はまだ捕まってない。これまでも何度か出くわしたけど、毎回逃げられてる」

 

 

讃頌会の脅威は根元から絶たねば、問題は解決する事はない。

 

ラマニアンホロウのミアズマも、サラのような存在がいる限り沈静化することは叶わない。

 

 

「儀玄師匠がメヴォラクに深手を負わせたのは確かなんだけどね……」

 

『儀玄……またその名前か。ふん、腐っても雲嶽山の宗主という訳か』

 

「そういえば……イゾルデ大佐って今どこにいるんだ? ホロウから戻って以来ずっと姿を見てない気がするけど」

 

『ああ、イゾルデなら、体調が優れないと言って街の方で休んでいる。ここ数日は、会議にも顔を出していないそうだ』

 

「…………」

 

 

確かに、ブリーフィングの時もイゾルデは時々咳き込んでいたし、顔色も心なしか悪かった気がする。

 

……と、ここで再び遠くのテントから歓声が聞こえてくる。ロレンツ少将の笑い声も聞こえてきた。

 

 

『……まあ、そうだな。この空気も、死線をくぐってきた兵士には必要なものだろう。例え時期尚早だったとしてもな』

 

「あれ? 意外でありますね、鬼火姉さんがそんな風に言うなんて……」

 

『ふん、これはせめてもの情だ。軍人は所詮、"命令"に従う事しかできない生き物だからな。例え内心でどれだけ疑っていようともだ』

 

「命令に違反したら、軍法会議ものだからね〜。ビッグ・シードもきっと止めてくるだろうなぁ」

 

『……そうだ、命令と言えば……お前達二人に課せられた例の制限令、正式に作戦の完了が宣言されるまでは解くことができない。すまないが、理解してくれ』

 

「大丈夫だよ、鬼火隊長。新エリー都のために頑張ってる防衛軍の人たちを思えば、なんて事ないって」

 

『……ありがとう』

 

 

『勝利』を祝う防衛軍の兵士たちの賑やかな声は、しばらく止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祝勝会を終えた後、タクミは一人テントの中で身体を休めていた。

 

特にすることがないため、仕方がない。

 

リンは駐屯地にやってきたTOPSからの『お客様』に会いに行っており、この場にはいない。

 

 

 

何をするか迷っていたその時、テントに来客が訪れた。

 

 

「タクミ、いるかしら」

 

「11号?」

 

 

暇を持て余していたところに、11号がやって来た。

 

……彼女は手に、スナック菓子の袋を持っている。

 

 

「……『スカーレットライズ・テルミット』は?」

 

「スカーレットなんとかさんは今来客対応中で、しばらく帰ってこないと思うぞ」

 

「そう。彼女にも分けてあげたかったけど……また後にしましょう」

 

 

11号はタクミの前に座る。

 

 

「今日、貴方とプロキシは掃討作戦において、『戦友』の名に恥じない働きをしてくれた。これは……その、ささやかなお祝いよ」

 

 

そう言って彼女はスナック菓子の封を静かに開ける。

 

彼女が開けたのは、新エリー都でも有名な超激辛スナック菓子。

 

 

「黒鉢赤辛鳥白湯ラーメンよりかは物足りないかもしれないけど……きっと口に合うと思うわ」

 

「ありがとう、11号」

 

「気にしないで。貴方はこの味を共有できる、数少ない人間の一人だから」

 

 

 

スナック菓子を一つ手に取り、口に入れる。

 

……とても辛いが、美味しい。普段スナック菓子などは食べないが、たまにはこういうのも悪くない。

 

 

 

「……ところで、一つ聞きたいことがあるのだけど」

 

「? なに?」

 

「彼女の……プロキシとしての実力は、パエトーンの右腕である貴方から見て、どれ程のものなのかしら」

 

「……あー」

 

 

二度目の説明になるが、11号はアキラとリンをパエトーンだとは思っていない。

 

パエトーンに憧れるプロキシだと思っている。

 

多分『姉ちゃんはパエトーンだよ』と説明しても分かってはくれないはずなので、そうでない前提で話を進める事にする。

 

 

「……安心しろ。兄ちゃんと姉ちゃんの実力は確かなものだ」

 

「それは、あの"パエトーン"と比べても?」

 

「まあな。勝るとも劣らないレベルだ」

 

「……良かった」

 

 

タクミの言葉を聞いて、11号は心底安心したような表情を浮かべる。

 

 

「その評価は至極正しいものよ。あの二人とは何度も戦線を共にしてきたから、私には分かる」

 

 

それはタクミも同じ事なのだが、何も言わないでおく。11号は心から、アキラとリンを信頼しているようだった。

 

 

 

 

しばらく他愛のない会話をしていると、テントに新たな来客が訪れた。

 

 

「あ、二人ともここに居た!」

 

「? シードに、トリガーさん?」

 

「夜分に失礼します。プロキシさんは……いらっしゃらないようですね」

 

「姉ちゃんに何か?」

 

「いえ、そういうわけではないのですが……」

 

「トリガー、プロキシ君の為に『物資』は取っておいてあげようよ!」

 

「それもそうですね」

 

「?」

 

 

さっきから何の話をしているのだろうか。11号は既に理解している様子だった。

 

 

「タクミくん、今から『特別夜間作戦』に参加してみませんか?」

 

「……なるほど、『今夜』もやるのね?」

 

「ええ。お二人にもご同行願いたく」

 

「え、作戦……? ホロウに入るんですか?」

 

「ううん。まあ、着いてくればわかるよ〜」

 

 

そう言って二人は外へ出る。11号も彼女達に続いてテントを出る。

 

 

「……?」

 

 

タクミは何をするかも分からないまま、三人に着いて行く事にした。




照ちゃんとタクミが会うのはまだ先になるかもしれません
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