ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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同志

 

 

 

 

 

鬼火と共にイゾルデから真実を聞かされたオルペウスは狼狽える。

 

 

「イゾルデ大佐……まさか、ロレンツ少将が……? どうしましょう、隊長……!」

 

『チッ……ロレンツを見つけ、問い質すしかないな……!』

 

「待って鬼火隊長! まだ十分に証拠が揃ったわけじゃないんでしょ? イゾルデ大佐の言った事だって、本当に正しいかは分かんないよ!」

 

『証拠だと……? この期に及んで、証拠がもたらす"正義"などを信用しているのか!? そんなものが存在するなら、十一年前に戦友が無駄死にすることはなかった!!』

 

 

鬼火隊長は完全に冷静さを失っている。

 

今にもオルペウスを無理やり引っ張って行きそうな程に、ロレンツへの怒りを大きくさせていた。

 

 

「鬼火隊長の気持ちも分かるよ。けど、イゾルデ大佐が任務中のこのタイミングでわざわざ真相を話して、隊長を焚き付けた事には何か理由がある気がするんだ」

 

『そんなもの単純だろう。イゾルデは私が復讐に加担する事を望んでいる……アイツの言う事は正しい。私達は、同じ道を歩むただ一人の同志なのだ』

 

 

「…………ただ、一人の?」

 

 

「……? オルペウス?」

 

 

オルペウスが小さな声で何かを呟いた。

 

ファイズが聞き返そうとした時、トリガーが鬼火に反論をする。

 

 

「……隊長。その発言には些か同意しかねます。私がオボルスに入隊する事を決意したのは、我々が同じ境遇や思いを抱えていたからです……あの時隊長が私にかけて下さった言葉を、一時も忘れた事はありません」

 

「私もトリガーに同意するわ。……私達は、今までお互いの事を、貴女の言う"同じ道を歩む同志"だと思っていた……今だってそう。けど、隊長……貴女にとっては違うの?」

 

「僕は別に隊長が望むなら、隊長の嫌いな奴を懲らしめてもいいと思ってるけど〜……ビッグ・シードなら、多分止めてくるんじゃないかなぁ」

 

『…………』

 

 

 

鬼火隊長は彼女達の言葉を聞き、しばらく俯く。

 

 

 

『……お前たちには、理解できないだろう。私が、どんな思いで──』

 

「いい加減にしてくださいっ!!」

 

 

『!?』

 

「!?」

 

 

突然響いた怒号に、鬼火は狼狽える。

 

一番近くにいたファイズもビビった。

 

鬼火の言葉を遮ったのは……他でもない、オルペウスだった。

 

 

「同じ道を歩む同志? 貴女がどんな道を歩もうと、実際にこの足で歩いているのは自分であります! それを言うなら、私達こそがただ一人の"同士"になってしまうであります!!」

 

『…………!』

 

「オボルス小隊が今有るのは、鬼火隊長が皆さんの辛さや苦しみを理解し、救い、束ねたからであります! そして今日まで! プロキシ殿達と一緒に、我々はここまで歩いてきました!!」

 

「お、オルペウス!」

 

「今の貴女を"理解できない"なんて、当たり前でありますよ!! 歩むべき同志を突っぱねて、一人で抱えて戦おうとするなど──」

 

「オルペウスってば……!」

 

「───……あっ」

 

 

ファイズの声で、オルペウスは冷静さを取り戻す。

 

鬼火は、ぽかんとした顔でオルペウスを見つめていた。

 

 

 

「あ……も、申し訳ありません隊長! つい、自分を抑えきれず……」

 

『い、いや……いい。気にするな』

 

「……個人の問題は、道徳だの常識だので解決出来るものじゃないけど……少なくとも今優先するべき事は、分かってるでしょ?」

 

『も、勿論だ……引き続き前進し、逃げ遅れた市民を救助する。戦闘準備だ』

 

 

 

残っているオブスキュラとサクリファイスを片付けるため、一行は引き続き先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンの術法を使って、オブスキュラの中にあるミアズマを除去していく。

 

サクリファイスも次々と倒し、ロレンツが向かった先へと急ぐ。

 

 

 

その道中……傍らに誰かが倒れているのを発見した。

 

既に息絶えたその顔には、見覚えがあった。

 

 

 

「この人……ポーセルメックスのルクローだ……!」

 

「……イゾルデ大佐の言ってた事は出まかせじゃなかったか」

 

「そ、それじゃあ少将も……」

 

『急ぐぞ……! 作戦失敗した挙句、報告書であれこれ弁明するのはごめんだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに進んだ先で、一行はサクリファイスの襲撃から逃げ遅れた子供を発見。

 

群がっていたサクリファイスを倒し、救助する。

 

タクミとリンにとって、この少年の顔もまた見覚えがあった。

 

 

「ダンテ、 無事か!」

 

「えっ、その声……タクミ兄ちゃん? 何そのカッコ、すごいカッコいいじゃん!!」

 

「こ、これは……その、防衛軍から貸与されたパワードスーツだ。それよりお前、怪我とかしてないか? 一人でここに来たのか?」

 

「ううん、メローやユエとかくれんぼして遊んでたんだ。僕は通りから離れた雑貨店に隠れてたんだけど……」

 

 

 

遊んでいる途中、オブスキュラから出てきたサクリファイスに出くわし、一人でここに逃げてきたのだそうだ。

 

メローと月は無事に泅瓏囲まで逃げきれたが、ダンテだけは隠れるしかなかったらしい。

 

 

 

「とりあえず、怪我はないみたいだな……良かった。防衛軍の人達が助けに来たから、もう安全だ」

 

「タクミ殿、この子とお知り合いでありますか?」

 

「この子は泅瓏囲に住んでるダンテだ。そんでダンテの叔父さんは、防衛軍の兵士だったんだ。みんなと同じな」

 

『そう、か。戦友達の……親族だったか』

 

「……その、鉄砲の……お姉ちゃんは、叔父さんと"戦友"だったの?」

 

『……ああ。坊やの叔父上と私は……戦友だった』

 

「そうだったんだ……叔父さんもね、さっき怪物と戦ってたお姉ちゃん達みたいに、すごい兵士だったんだ! ……でも、帰ってこなかった」

 

『…………』

 

 

鬼火は押し黙る。

 

大切な人を失った目の前に少年にかける言葉を探しているのか、それとも少年からの非難をただ待っているのか。

 

自分でも分からなかった。

 

 

「でも、お姉ちゃん達は……ちゃんとお家に帰ってね! 帰りを待ってる人が、いるはずだから!」

 

『…………!』

 

 

ダンテの口から出てきた言葉は……鬼火の想定外のものだった。

 

 

『……ダンテ君』

 

「?」

 

『もし、叔父上の仇を取ることができるなら……お前はどうする? 喜んでそうするか?』

 

「えっ……かたき? 叔父さんが死んだのは、みんなを守るためだったんでしょ?」

 

『……例えばの話だ。叔父上を死なせた悪、怪物が存在するとして……そしてソイツを倒せるとして……お前にとってそれは、慰めになるのか?』

 

「…………」

 

 

ダンテは鬼火の問いに少し戸惑っていたが……すぐに答えを出した。

 

 

「そりゃ、怪物だったらやっつけてやりたいけど……やっつけても、叔父さんは戻って来ないでしょ? 叔父さんはきっと、怖い怪物と戦ってでも皆を守りたかったんだと思うんだ」

 

『……守る、ため』

 

「うん。だから僕、叔父さんみたいに皆を守りたい! 母さんを悲しませない男になりたいんだ!」

 

『…………』

 

「えっと……だからお姉ちゃん達も、家族の人達を、泣かせちゃダメだよ?」

 

『……そう、だな。ダンテ君も早く家に帰るんだ……お前の母親が、家で心配しているだろうからな』

 

「大丈夫でありますよ、ダンテ君! 貴方も、貴方のお母さんも、雲嶽山と防衛軍のお兄ちゃんお姉ちゃんが守ってくれますから!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、駆けつけた援軍の兵士がダンテを泅瓏囲まで送っていった。

 

 

 

「ふふ……ダンテ君、とってもいい子ですね。純粋で可愛らしい所がタクミ殿そっくりであります」

 

「おい待てェ」

 

『そうだな……そんな子の家族を、ロレンツのゲス野郎は何人死地へ送ってきたんだろうな』

 

「鬼火隊長……」

 

『目標は奴だ。引き続き進むぞ』

 

 

山道のオブスキュラとサクリファイスの数も、片手で数える程になってきた。

 

鬼火は一行を引き連れ、目標地点へと向かった。

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